聴取音声データ 2

「Eの突然変異体は、そのあと2体がまもなくして。原因はエサの特定・・・栄養の吸収パターンの判明が出来なかったのと、”MELAS”の発症、それに生存環境が不明でした。なんとか点滴などで凌いではいましたが・・・AとC以外は、すでに予測不明でなにが起こるかは事後対策しかできないのです」


「・・・・・・」


「イレギュラー・・・私たちはE体のことをそう総称しているのですが、イレギュラー体の1体が突然しました。検体接種のときに世話役の職員を何名か殺し、管理室から逃げだしたんです」


「正式報告では発電事故とありましたが、E体が原因だったのね?」


「はい。ほかの実験体の部屋の扉なども次々と破壊して、隔離病棟からも脱出。研究所内は一時、混乱しました」


「ほかにはどの実験体がそのとき逃げ出したの?」


・・・あ、C-1実験体と、Bのキメラ、DとEイレギュラー2体です」


「??C実験体は確か、C-1、C-2と、いたはずよね。もう1体はそのとき、べつの場所にいたの?」


「もう1体の・・・C-2は基本的には大人しい子で、監視カメラで見たときは端っこのほうでうずくまって怯えていました」


「怯えて、いた・・・?」


「わたしが駆けつけた時も、管理スタッフや教育チームの残骸のなか、うずくまっていました。警備員がテーザー銃を打ち込むまでずっと・・・・・・」


「そのときの犠牲者は11名、負傷者は6名と報告があります。他になにか、気が付くポイントはありますか?」


「・・・その時は、とにかく事態の収束と身の安全しか頭になくて」


「まぁ、そうでしょうね」


「でも、数日後の話ですが大野教授と博士が、ほか数名のヒトと口論をしていました」


「どんな話か、わかる?」


「少しだけ、部分的な言葉しか聞こえませんでしたが、数名のかたは口々に『始末しろ』と大野さんを説得している様子でした。ほかには『』『食われる』と」


「事件後に判明した”未定出報告書”の検死結果に、ありとあるわね」


「どの個体が捕食したのかはこの時点では分かりませんでした。解剖して胃の内部を取り出すわけにはいかないですから」


「あとでは、分かったの?」


「確証があるわけではないのですが・・・まず、ご存じだと思いますが噛み口からのDNA分析だと被害者のDNAとの区別に無駄な工数がかかりますし、解析できたとしても断定できるだけの一致性が高いわけでもないとの判断で、特定はしないという決断にいたりました」


「なぜが低いと考えたの?・・・あ、ごめんね、私は分析班としておおよその予想できているんだけど、記録として言ってほしいの。現場経験の上層部もいるからね」


「・・・まず被害者の血液、DNAが散乱している状況から実験体の、唾液などのDNAを探しだすこと自体、大量の塩粒のなかから小さじ1杯分の、さらにそこから砂糖1粒を見つけ出すのに等しいほど時間と手間がかかる行為です。それに実験体は遺伝子レベルでほぼ兄弟姉妹、もしくは一卵性やみたいなものですから、唾液などからなんとかDNA採取ができたとしても、断定ができるほどの個体識別は難しいです。どれも可能性を示すだけですね」


「なるほど、な物証が出ないってわけね。予想でもいいわ、捕食者の候補を教えてちょうだい」


「そのあとの事象と、状況証拠から『』したのはイレギュラーの2体です」


「なぜそう思うの?」


「消去法です。あと、監視カメラにてそれぞれの行動経路と被害者と思われる遺体の検死解剖結果、あと目撃証言です」


「・・・たしかに捕食されていない被害者も何体かいるわね」


「実験体の回収時の状況や、Bキメラの特性にて個人的な推測と判断の域はでませんが、キメラは鋭いでの目的、Dアルマスはそのによる撲殺、引きちぎりといった手法を用いていると見なしています」


「C-1ブルーノは殺害していないのね」


「殺害・・・はい、そうですね」


「??なにかあるの?」


「いえ、気のせいです」


「気になるところはなんでも言って。今後の検証のためだから」


「・・・カメラの記録をたどると、まず研究所の内部をなんだかように見受けられました。何かを探している風にも見えますし、探検しているようにも・・・あと、出会いがしらの職員にはには威嚇し、攻撃的で怪我を負わせる場面もあるのですが、一部の職員には逃げるといいますか・・・気にも留めていないような・・・・・・」


「なにか、攻撃対象とそれ以外の違いはあるのかしら・・・・・・」


「分かりません・・・とくに攻撃を受けたヒトたちも、無視するヒトたちにも、ブルーノとの関係性、接触すらしたこともないヒトたちばかりでしたし」


「・・・そう・・・わかりました、ありがとう。その後・・・あ、ギャラップ博士との口論のあとね。大野教授はどう対応、というか判断をしたの?」


「もちろん管理体制やシステムの見直しは当然おこないました。たとえば、実験体の部屋の出入口は電子システム錠での管理はそのままですが、中の檻の錠は電子システムはやめてへ変えました。この時はロックパネルを破壊されて脱走事件が起きてしまいましたから。・・・そして、口論していた方々の意見は全く聞き入れず、そのヒトたちの姿もそれ以降は見なくなりましたね」


「・・・恐らく、この6名ね」

※移転届と写真を見せる


「多分・・・この3人は私の知らない人ですが、こっちの3人、ゴールドン・ギャラップ博士と、この2名が言い争っていたヒト達です」


「・・・で、この5体の実験体は、研究員、スタッフを傷害、捕食および殺害し人間の、恐らくヒトとの力関係=さも覚えたってわけね」


「はい。ギャラップ博士が言いたいこともそういうことだと思います。その後にこの・・・脱走したなかでCのブルーノ以外はいままで以上に反抗的になり、手が付けられない状態でした。検体接種や餌やりのときも大変・・・と言いますか既存のスタッフも事件以降、すっかり怯えてしまって・・・エサの供給ラインと検液採取システムを設置したほどです」


「なぜブルーノだけは大人しかったのか、分かる?」


「恐らく、ブルーノとトラビスの2体はヒトゲノム遺伝子が比較的に多いからか、頭のいい子たちなんです。なので、ブルーノは抵抗しても無駄だということまで理解していたのかもしれません」


「なるほどねぇ・・・・・・」


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