2-10 縁談
「主人の
「悪いと思ってるなら、あんたが質問に答えろ。なぜ、美月を養女に迎えた?」
「東京に
頭を上げた
「主人が、美月のことを大切に思う理由は、
「最悪の嘘だな。本当に美月を愛しているなら、昨夜の会合で、美月を
「ええ、そうね。仰る通りよ。でもね、私たちは、人の親である以前に、海棠家の人間です。
「……。あんたと浅葱さん。海棠家の血を引く人間は、どっちだ?」
凛汰は、別の角度から探りを入れた。美月を海棠家に迎えた理由について、楚羅もまた話す気がないのなら、押し
「先代の〝
眉を寄せた凛汰は、隣の美月に目を向けた。美月は、戸惑い顔で
「凛汰には、少し話したよね。〝憑坐さま〟は、血筋ではなく、家に
「ああ。海棠家には、養女が多いって話も聞いた。浅葱さんと楚羅さんも、外部の人間だったってことか?」
「私は
「……『海棠家の娘』との縁談?」
凛汰は、声を低くして訊き返した。楚羅は、
「貴方のご想像通り、私は主人の
――
「海棠姫依は、あんたの前の代の〝憑坐さま〟の巫女だな。歳は?」
「二十五歳です。当時の浅葱さんよりも、一つ年上だったそうよ」
答えた楚羅は、
「
楚羅は、壁にもたれた
「海棠姫依は、なぜ死んだ? それに、三人娘の長女だと言ったな。二人の妹は、どうなった? そのうちの一人は、行方不明になったって
海棠
「……当時の海棠家には、姫依さまのご両親もお住まいでした。海棠神社の
「海棠家の次期当主……
「ええ。〝憑坐さま〟に選ばれた娘が、浅葱さんを婿に取るのです。そして、十九年前の〝姫依祭〟で、〝憑坐さま〟の巫女に選ばれたのは、長女の
「自分の結婚相手を〝憑坐さま〟が決めることに、浅葱さんは納得していたのか?」
「そう聞いております。主人は、私の
「どうだかな。そんな縁談が
「三人の娘たち、それぞれの気持ちは? 浅葱さんのことを、どう思ってたんだ?」
「さあ、私には分かりません。あのときの巫女たちの気持ちなんて、
楚羅の
「三人の娘の中には、浅葱さんに
楚羅が、ゆらりと振り向いた。美月が、悲鳴を押し殺したような声を上げた。
〝まれびと〟が死んだ部屋の入り口で、凛汰を見つめ返す和装の女は――
「神にお
廊下の入り口に集まっていた村人たちが、楚羅から
「美月。
「気が触れたふりをして、俺たちを
凛汰が美月の前に出ると、俯いた楚羅がまた笑い出した。窓から室内に入る日差しが、
「ええ、亡くなりました。亡くなったのよ。十九年前の〝姫依祭〟後に、姫依さまが
凛汰の背後で、美月が息を
「浅葱さんは、当時の海棠家の生き残りです。妻になったばかりの女と、義理の両親を、いっぺんに
「先代の〝憑坐さま〟の巫女である、あんたよりも?」
凛汰の問いかけに、楚羅は答えなかった。ただ、不意を打たれた様子で
「〝憑坐さま〟に十八年も仕えられたのだから、無理もない……」
「でも、美月ちゃんに代わりが
――相変わらず、
「楚羅さんが言ってたように、
「その
「ひどいなぁ、
へらへらと笑った梗介が、三隅の遺体を見下ろしたときだった。村の誰もが
「そうかな。……梗介くん。私は、無益だなんて、思わないよ」
微かに震えた声の主を、凛汰は見つめる。三隅の隣に移動していた美月は、表情が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます