2-2 閉ざされた村
「私……〝
森に沿って
原因を
「おはよう、美月……」
頭を上げた
「楚羅さん……」
美月が、つらそうに
「
「あ……」
目を
凛汰も横から
「美月、少し離れてろ。俺の視界から消えない範囲で」
「う、うん……」
罪悪感に
「凛汰くん。美月のことを、頼みました」
「美月を
声量を落とした凛汰は、不機嫌を隠さずに言い返した。
「自分の家の養女が、初対面の野郎と
「……この家よりは、どこだって、あの子にとって心安らげる場所だと思うから」
力なく微笑んだ楚羅は、
楚羅の
「待たせたな。何を見てたんだ?」
「
「刺さってたとしても、俺らじゃ運転できないだろ。……ああ、そうか。
「私は、信用するよ。三隅さん、優しい人だもん」
「優しい、ねえ……まあ、昨夜は世話になったけどな」
凛汰は、自動車の隣を見下ろした。
被害に気づいたのは、海棠家を
「逃げるぞ、美月。車と三隅さんは諦めろ。今から徒歩で山を越える」
「えっ?」
美月は、かなり驚いたようだ。おろおろと声を
「そのためにも、まずは逃げられるか試すべきだ。この村は殺人鬼の
「でも、私は〝
美月が、ハッと黙り込んだ。凛汰は「気づいたか?」と言いながら、村の風景を見回した。うっすらと残った朝霧が、
「仕切り直しの〝姫依祭〟が終わるまでは、しきたりで〝まれびと〟の俺は殺されない。言い換えれば、〝姫依祭〟が終わったら、相手がたとえ〝まれびと〟だろうが、連中が俺を生かす理由はない。……美月が〝憑坐さま〟の巫女を
「なるほどねぇ、僕もその通りだと思うけど、見捨てないでほしいなぁ?」
「きゃあ!」
美月が悲鳴を上げると、背後から愉快げな笑い声が聞こえた。ぎょっとした凛汰が振り向くと、
「二人とも、やっぱり山を越えるつもりだったんだねぇ。危ないよ? この辺り、
「そんなハッタリが効くと思ってるんですか?」
「君は〝まれびと〟の待遇に
「熊よりも、祟りよりも、人間のほうがよっぽど怖いと思います」
「
三隅は、意外にも同意した。おもむろに歩き出して、歌うような口調で言う。
「
――死体。凛汰は、声に
「死体
「さあねぇ、殺人事件を疑いたくなる気持ちは分かるけど、真相は
美月の顔色が、
「そりゃあ、こんなにも
事実を指摘されただけだが、条件反射でムッとした。
「ついて来なよ。なぜ逃げないほうが身のためなのか、教えてあげるからさ」
*
三隅に従う形で向かった先は、村の出口付近だった。昨日の昼下がりに、
「さて。ここを道なりに進んで山に向かえば、車道に沿って那岬町に行けるわけだけど……二人とも、後ろを振り返ってごらん?」
山を見ていた凛汰と美月は、指示通りに村を振り返る。三隅が何を見せたいのか、先に気づいたのは美月だった。「ひっ」と息を
村に点在する
「……どういうことですか」
「今〝まれびと〟を殺すことは、村人側の死人を増やす行為で、自分たちの首を
「馬鹿じゃなきゃ、あんな
「まさか」
「彼らの思考を
「
「もう一つ考えられる理由としては、今の櫛湊村に、新たな〝まれびと〟が外から入ってこないように、あそこで警戒してるんじゃない? まあ、櫛湊村の人たちは、隣町の那岬町の人間を〝まれびと〟とは
「もし、外部の介入があったら?」
「死人に口なしって言葉、凛汰くんは知ってる?」
「……やっぱり、熊よりも、祟りよりも、人間のほうが怖いじゃないですか」
――那岬町の人間は、〝まれびと〟とは見做さない。初めて耳にした情報を、凛汰は脳に叩き込む。美月は、先ほどよりも青い顔で「私たち、逃げられないんだ……」と呟いていたが、
「私、あの空き家の人に、やめてくださいって話してきます」
「は? 何を言ってるんだ? そんなことをしたって、やめるわけが……」
「〝憑坐さま〟の巫女の言葉なら、今だけは
美月は、
「凛汰くん。君さぁ」
三隅の
「年齢、
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