第2章 ヨモツヘグイ
2-1 証拠隠滅
カーテンの
窓際の床から起き上がった際に、身体に掛けていた毛布がずり落ちる。ジャケットを着たままの
そばに
「美月。起きろ」
声を掛けると、美月は身じろぎしてから、両目を見開いて跳ね起きた。
「おはよう……」
「……ああ、おはよう」
調子を狂わされた凛汰は、「顔を洗ってこいよ。朝飯を済ませて出掛けるぞ」と言って立ち上がり、台所に向かった。美月は、苦しげな声で「うん……お布団、使わせてくれてありがとう」と
――
――父は、
「家を出るときは、荷物を一応持っていくぞ」
*
早朝の参道は、うっすらと
そして、櫛湊村の神域であり、嘉嶋礼司の遺体を見つけた現場である
「そんな……」
「やられたな」
〝
「おはよう。三人目の〝まれびと〟と、村を捨てた裏切り者」
「帆乃花。どうして昨夜の〝姫依祭〟に顔を出さなかったんだ?」
「
「仕事?」
「片付けと見張り」
帆乃花は、
「この場所は〝姫依祭〟でまた使うから、
「殺人現場を勝手に
「海に
「海に捧げられたものは、全て〝
「へえ。〝憑坐さま〟の正体は、やっぱり海に
「……それ、誰に訊いたの?」
「さあ、誰だろうな」
「あんたってさ、あたしたちが嘉嶋先生の死体を
「こっちには美月がいるとはいえ、俺自身に地の利がないド田舎で、人殺し集団が
「……なんで
「お前らは、この状況を作った〝まれびと〟殺しの犯人が、
「憎いけど? ジジババ共だって、犯人に興味を持ってるわよ。でも、それ以上に、
帆乃花は、
「私は……死にたくない。生きるために、村を出たい。そのためにも……嘉嶋先生を殺した犯人が誰なのか、凛汰と一緒に突き止めたいの」
「何それ、自分勝手じゃん」
「私が生きたいと願うことを、自分勝手だなんて、誰にも言ってほしくない」
「……海棠先輩が、そういう言い方をするなんて思わなかった。最悪の気分なんですけど。あたし、もう帰る」
「待てよ、帆乃花。死体の始末は済んでるのに、なんでお前だけ居残った?」
凛汰が追及すると、帆乃花は嫌らしい笑い方をした。――
「あんたたちに会いたかったから。嘉嶋先生がゴミみたいに
美月の頬が、
「うるさい! どうでもいいでしょ!」
立ち上がった帆乃花は、風で
「騒がしい奴だな。……美月、大丈夫か?」
「……え? ごめん、ぼうっとしてたみたい……」
美月が、我に返った様子で辺りを見回した。それから、早足で御山を下りる帆乃花の背中をじっと見つめて、不思議そうに首を傾げていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます