2-3 詐称
「何を言ってるんですか。俺は十五歳ですよ」
凛汰は
「君の荷物の中身、勝手に見させてもらったよ。
唇を結んだ凛汰は、思考を
「気になることは、まだあるよ。凛汰くんってさ、
「ヨモツヘグイ……」
告げられた
「家族を殺害された怒りに
「それは、十五歳の三隅さんが未熟だったって話ですよね。俺は優秀なんです」
「言うねぇ。ますます怪しくなったよ。君が本当に十五歳だとして、何が君の内面を成熟させたのかな。一刻も早く大人にならざるを得ないほどの、
「見た目で
反論の
「君の茶がかった髪、いかにも地毛ですぅって言いたげな色だけど、染めてるね。
三隅は、凛汰の髪からは手を離したが、両頬からは手を離さなかった。口が利けない凛汰の顔を、しげしげと
「君は
「セクハラで訴えますよ」
頬を押さえつけていた三隅の手を、凛汰は両手で
「じゃあ、学生証を見せてよ。持ってるんでしょ?」
「持ってません。中学校は卒業したから持つ意味がないし、高校はまだ入学してませんから」
「便利な言い訳だねぇ」
「そもそも、俺が年齢を
「あるよ? 例えば、
三隅は、
「美月ちゃんと、仲良くなるためだ。当たりでしょ?」
村を包んでいた
「美月ちゃんは、真面目で礼儀正しい女の子だよねぇ。それに、養女として村に引き取られたという
「……。何が言いたいんですか」
「君さ、
「まるで、俺の行動を見てきたように語るんですね」
「それくらい分かって当然だよ? 僕だって記者として、
三隅は、罪を
「君は、那岬町の人たちから、こんな助言を聞かされたんじゃない? ――『櫛湊村の人たちが
「何のために?」
「誰が敵で、誰が味方か、判断できなかったからじゃないかな。君さぁ、嘉嶋先生が櫛湊村に
凛汰は、返事をしなかった。三隅は、ニヤニヤと笑い続けている。
「警戒心をかなり高めた態勢で、櫛湊村という
「マトモな人間が、イカレた因習村で食い物にされかけてたのが、見ていて腹立たしかったのは事実ですよ。それ以外は、全て三隅さんの
「そこしか認めないんだ? まあ、君との会話は、僕にとって収穫だったよ。君は、僕と同じ穴の
「俺が信用に足る人間か、試してたんですか」
「僕はただ、真実を追求したいだけだよ? 凛汰くんのことは、別に悪人だとは思ってないし。でも、君は目立ち過ぎたよねぇ。君を無害な学生だと
三隅は、ようやく凛汰から離れた。眉根を寄せた凛汰が「覚悟が必要な理由は?」と切り返すと、
「君ほど
凛汰は、うんざりしながら「はい」と答えた。〝まれびと〟を大切にしようという村人たちの気持ちを、薄れさせた原因なら――今まさに、凛汰の目の前に立っている。
「一人目の〝まれびと〟と二人目の〝まれびと〟が、村人たちにとって
「ご明察だけど、もっと言葉を選んでくれてもいいんじゃない? あと、同じ穴の
「……くたばってからも、人に迷惑をかけてんじゃねえよ、クソ親父」
「本当に、悪いと思っているんだよ」
そう答えたときだけ、三隅の陰湿な笑みから
「身の危険を感じたときは、教員寮に
「あの先生を、寮から追い出すんですか」
「反対かな?」
「いえ。賛成です」
「君って、いい性格をしてるよねぇ」
三隅は、
「海棠
三隅が、足を止めた。いよいよ消えかけた霧の中で、凛汰をゆっくりと振り返る。笑みを顔から
「特に、海棠楚羅。
「……ふうん。どうして君は、海棠
「さっき三隅さんが言ったように、櫛湊村に来た俺は、真っ先に海棠神社を訪ねました。そのときに、俺の対応をした人間は、美月、楚羅さん、浅葱さんです。楚羅さんの発案で、美月を道案内につけてもらった俺は、村のどこかにいる親父を
これしきの違和感には、もっと早く気づくべきだった。してやられた怒りを覚えながら、凛汰は
「
「……貴重で素敵な情報を、なぜ僕に教えてくれるのかな。もし海棠夫妻がクロで、さらに僕が二人と
「あんたみたいなお
「……参ったなぁ。喋りすぎちゃったか。ちょうどいい加減が難しいねぇ」
「じゃあ、僕からも君に一つ、いいことを教えてあげよう。この村の飲み水や食べ物は、安全だよ。嘉嶋先生と僕も、村で振る舞われた食事を今まで
「……昨日までは?」
「〝まれびと〟が死んだ〝姫依祭〟は、
「……。三隅さんは、やっぱりただの記者じゃないですよね。何を、どこまで、知っているんですか」
凛汰が、目つきを
「はい。今だけは……でも」
美月は、歯切れ悪く答えてから、先ほどの三隅のように、村の方角を振り向いた。視線を追った凛汰も、
霧が晴れたことで、ハナカイドウの花を
「向こうで、何かあったみたい……」
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