1-10 儀式に臨む者

 木船きぶねを燃やす炎が消えるまでに、どれほどの時間が掛かるだろう。へし折れた帆柱ほばしら甲板かんぱんに叩きつけられて、神輿みこし火達磨ひだるまになった瞬間に、誰もが消火をあきらめて、一人の〝まれびと〟を呑み込んだ業火ごうかを見つめていた。肩で息をした凛汰も、空っぽのバケツを放り捨てて、隣にいた浅葱あさぎに、低く言った。

「警察と消防に連絡してください。ここからなら、海棠かいどうさんの家の電話が一番近いですよね? 俺のスマホは、圏外けんがいなんで」

「ああ……まずは、山を下りよう」

 装束しょうぞくすすだらけにした浅葱は、油彩画『楽園の系譜けいふ』でえがかれた表情と、全く同じ顔色の悪さで、鳥居のそばに寝かせていた美月を背負う。へたりこんでいた楚羅そらも、嗚咽おえつしながら立ち上がった。その段になって、凛汰は村人の半数以上がいないことに気がついた。先ほどまで一緒にいた三隅真比人みすみまひとも、忽然こつぜんと姿を消している。しかるべき機関に通報するために、先に下山げざんしたのだと思いたいが、直観は希望的観測を否定していた。

 火の見張りとして数名の村人を神域に残して、神職一家と共に御山おやまを下りる間、誰も口を利かなかった。重い沈黙を、楚羅のすすり泣きが埋める時間が、永劫えいごうのように感じられた。やがて海棠神社まで戻ったとき、隣接する海棠家の窓から明かりがれていて、嫌な予感が加速した。

施錠せじょうしてなかったんですか」

「ええ。祭りの夜だけは、人の出入りが多いものですから……」

 楚羅が、涙声で答えた。泣きらした所為か、あるいは化粧が崩れた所為か、出会ったときと顔の造形が違って見える。凛汰が凝視ぎょうししたからか、誰よりも先に玄関扉に向かった楚羅は、美月を背負った浅葱を先に通すと、自身も引き戸の向こうに消えていった。一緒に下山した村人たちも、海棠家に入っていく。大量の履物はきもので埋め尽くされた三和土たたきに、凛汰も足を踏み入れた。

 引き戸の近くで靴を脱ぎ、上がりかまちに大股で足を掛けたとき、視線を感じた。突き当りの台所から、中年の女がこちらを見ている。凛汰は、問いを投げかけた。

「警察と消防には、連絡しましたか」

 中年の女は、暖簾のれんの陰に引っ込んだ。凛汰は、ずかずかと廊下の中ほどまで進み、キャビネットに載った固定電話の前に立つ。持ち上げた受話器を耳に当てて、110番通報をする途中で――ダイヤルをやめた。受話器からは、何の音もしなかった。キャビネットの裏側を覗き込むと、切断された電話線が、首吊くびつりのひものように垂れている。

 無言で周囲を見渡すと、縁側に続く左側の廊下に、日中にも出会った老翁ろうおうがいて、目が合った。――この村に来てから、凛汰は常に見られている。

「警察と消防には、連絡しましたか」

「……」

「これをやったのは、お前らか?」

 切れた電話線をあごで示すと、老翁は居間に向かった。凛汰が「おい」とすごんでも、老翁は振り向きもせずに「旅のお方も、こちらへ。くれぐれも、お静かに」と慇懃無礼いんぎんぶれいうそぶいて、開けたままのふすまの向こうへ去っていく。

 逡巡しゅんじゅんしていると、楚羅の泣き声がまた聞こえた。何事かと居間に入ると、海老茶えびちゃ色のテーブルのそばで、座布団に座った美月を、楚羅が強く抱きしめていた。まるで、これから今生こんじょうの別れが待ち受けていると言わんばかりの抱擁ほうようだった。

「ああ、美月、目を覚ましたのね……」

「楚羅さん……私……」

 ほどけた黒髪を背に垂らした美月は、ぼんやりと辺りを見回していたが、楚羅の後ろに立った凛汰に気づいたことで、意識が覚醒かくせいしたのだろう。ぎゅっとまぶたを閉ざした目尻めじりに、涙の玉が次々と浮かぶ。

「夢じゃなかったんだ……嫌あぁっ、嘉嶋かしま先生っ、どうしてっ……」

「ねえ、美月。貴女は、木船で倒れたときのことを覚えてる?」

「途中までなら……凛汰と暗幕を燃やして、嘉嶋先生に気づいて……そこからは、もう覚えていません。倒れたって実感もなくて……全部、夢だと思ったのに……」

「そう……それなら、やはり貴女が、現在の〝憑坐よりましさま〟の巫女よ」

「え?」

「〝憑坐さま〟は、巫女の身体をしろにして、託宣たくせんをくださる存在だもの。貴女が〝かみがかり〟を成せたことが、巫女を継承けいしょうしたあかし。最初は記憶が途切れる感覚があっても、慣れてくれば記憶をとどめておけるようになるわ」

 楚羅は、さも当然のように、声に喜色きしょくさえ乗せて語った。美月の顔が、青ざめていく。小刻みに震える養女を「〝姫依祭ひよりさい〟の貴女あなたは、立派でした」と、泣きながらたたえる楚羅の背中に、凛汰は声を投げつけた。

「美月から離れろ」

「……ええ、分かりました」

 楚羅は、素直に従った。ゆらりと幽鬼ゆうきのように振り向く顔は、ひどくやつれ果てている。先代の〝憑坐さま〟の巫女は、危うげな足取りで大広間に入っていった。凛汰は、怯えている美月の隣にしゃがみ込むと、すぐさま小声で追及した。

「知ってたのか? 巫女を継げば、こうなることを」

「知らない……聞いてない……〝憑坐さま〟のお声を聞いて、俗世ぞくせに伝えるお役目をになってもらうって言われたけど、それは占いの結果を皆さんに教えて、村が栄えるようにみちびくお仕事だって……凛汰、私は……倒れる直前に、何をしてたの?」

「……泣いてた。親父が死んだことを、悲しんでた」

 美月は、潤んだ目をしばたいた。瞳の色は、琥珀こはく色だ。あのとき、凛汰が見た淡紅色たんこうしょくきらめきは、火の粉が反射しただけかもしれない。父をいたんで落涙らくるいするのは、いかにも美月らしい反応で、楚羅が言うような〝存在〟に身体を乗っ取られたとは思えなかった。美月も、凛汰と同じ考えに至ったのか、少し安らいだ顔で「ごめんね」と言った。

「一番泣きたいのは、凛汰なのに。もう泣かないから……」

「代わりに泣いてくれるほうが、有難ありがたいのかもな。俺は」

「凛汰……?」

希代きだいの画家・嘉嶋礼司かしまれいじを、この世から失わせた代償は、高くつくぜ。犯人は、絶対に豚箱ぶたばこ送りにしてやる」

 そのとき、頭上から影が差した。顔を上げると、沈痛ちんつうな面持ちの浅葱がいて「大事な話し合いがある。隣の部屋へ移動してくれ」と告げて、大広間を腕で示してくる。宴会場だったはずの部屋に、祭りの労をねぎらう食事はなく、二列に並んだ座布団に、村人たちが座り始めていた。人数は、二十人ほどだろうか。神域に残した村人を除いて、櫛湊村の全員が集結するのだと想像できた。

 居間に戻ってきた楚羅も、ひかえめな声で「美月、行きましょう」と言った。俯いた美月は、しばしの後に立ち上がり、海棠かいどう夫妻についていく。凛汰も、後を追った。

 神職一家の三人は、大広間の最奥さいおうから、楚羅、美月、浅葱の順に座った。浅葱の隣には蛇ノ目梗介じゃのめきょうすけがいて、「美月ねえ、気分はどう?」と声を掛けている。海棠家を補佐ほさする蛇ノ目家らしい席順だ。梗介の隣は、誰も座っていない。続々と大広間に入ってくる老人たちは、帆乃花ほのかの席と思しき座布団と、神職一家の正面に位置する三つの座布団をける形で、言葉少なに座っていく。――〝まれびと〟の席なのだと、誰に説明されずとも理解した。三つの座布団のうち一つには、すでに三隅真比人みすみまひとが座っていて、手帳とペンを両手に握って、隣の大柴誠護おおしばせいごにしなだれかかっている。記者にからまれた大柴は、途方に暮れた顔で辺りを見回すものの、誰一人として救いの手を差し伸べない。三隅の隣の座布団を目指して、凛汰は大広間を進んでいく。嘉嶋礼司が残した家族の歩みを、村人たちが見つめていた。密やかな話し声を、耳が拾った。

「〝憑坐さま〟は、今回は何人連れていかれるおつもりなのか……」

「その前に、選ばなければ……嗚呼ああ、十九年前の悲劇の再来さいらいじゃ……」

「一人なら二人、二人なら四人、三人なら六人……」

「浅葱さんも、さぞ胸を痛めておいででしょう……」

姫依ひよりさま……あやまちを繰り返した我々を、どうかお許しください……」

「凛汰くん、お疲れー。大変なことになったねぇ」

 最後に聞こえた声だけは、場違いなほど能天気で大きかった。ひらひらと手を振る三隅を、隣の大柴が「そんな言い方は、よくありませんよ」とたしなめている。それから、律儀りちぎに立ち上がり、ものに触れるような態度で、凛汰に言った。

「君のお父さんのこと、本当に残念だったね。僕も、ショックで混乱しているよ」

「そんなふうには見えませんが、どうも」

 凛汰は、呆気あっけに取られる大柴の前を素通りして、三隅の右隣に腰を下ろした。凛汰の右隣の空席が、父の死という現実を、繰り返し執拗しつように突きつけてくる。対面に正座した楚羅が「皆さま、お集まりくださり、有難う存じます」と音頭おんどを取った。

今宵こよいの〝姫依祭〟で、嘉嶋礼司さんが〝憑坐さま〟にささげられました」

 捧げられた――言葉選びが、かんさわった。凛汰の真正面に座る美月も、きゅっと唇を噛んでいる。楚羅は、感情が欠落けつらくしたような声で語った。

「〝姫依祭〟で〝まれびと〟が一人亡くなれば、櫛湊村の者を二人差し出し、〝まれびと〟が二人亡くなれば、櫛湊村の者を四人差し出す。〝まれびと〟が三人亡くなれば、櫛湊村の者を六人差し出す……村に福をもたらす〝まれびと〟として、私たちが歓待かんたいしていた嘉嶋礼司先生の死は、〝憑坐さま〟のお怒りに触れる凶事きょうじです。私たちは〝憑坐さま〟の御霊みたま慰撫いぶするために、しきたりに従って、村人の中から『儀式にのぞむ者』を二人選び、もう一度〝姫依祭〟をり行わなくてはなりません」

 凛汰の隣から、ククッとわらい声が上がった。不敬ふけい不躾ぶしつけな声の主に、場の視線が集中する。三隅真比人は、受けて立つように挙手でこたえた。

「では、〝まれびと〟の僕と凛汰くんの二名は、その『儀式に臨む者』とやらの候補から、外していただけるという理解でよろしいかな?」

 村人たちが色めき立つ気配が、さざ波となって伝わってくる。一人の老翁が「なんだと」と抗議したが、浅葱が「静粛せいしゅくに」といさめると、くやしそうに押し黙った。三隅は、楽しげに主張を続けた。

「先ほどの〝姫依祭〟は、危険なお祭りでしたからねぇ。僕と凛汰くんを『儀式に臨む者』とやらに選んで、もし〝まれびと〟の身に何かあれば、本末転倒だってことは、皆さんだって分かってるくせにぃ。あ、それとも、そんなに嫌なの? その『儀式に臨む者』とやらに、自分が選ばれるのが」

「記者さん、そんなことないよ?」

 そう答えたのは、梗介きょうすけだ。帆乃花ほのかと同じ顔で、三隅にニッコリと笑っている。

「〝憑坐さま〟をうやまう気持ちが強いからこそ、自分よりも相応ふさわしい人がいるなら、その人にお願いしたいって思ってるんだよ。誰だって、責任を背負うのは怖いでしょ?」

「ふうん? じゃあ、君がやれば? 蛇ノ目梗介くん。ああ、ここにいない帆乃花ちゃんと一緒にやればいいじゃん。ほら、これでぴったり二人揃うよ?」

 三隅が、パチンと指を鳴らした。先ほどの老翁も、憎々にくにくしげな表情を一転させて「そうだ、蛇ノ目家のむすめにやらせたらいい。あいつは〝姫依祭〟にも顔を出さない、罰当ばちあたりな穀潰ごくつぶしだ」と同調すると、複数の村人たちも、次々と賛同し始めた。

「帆乃花は駄目だよ」

 梗介の声音が、急激に冷えた。顔に貼りついた笑みの名残も、瞬く間に消え失せる。

「蛇ノ目家の当主として、反対するよ。帆乃花を選ぶなら、もう一人の村人は、お前たちの中からあみだくじで決めてやるから」

「蛇ノ目のせがれっ! どういう権限で、そんな口を利いてるんだ!」

「蛇ノ目家の権限だよ? 村のみんなは、父さんの世話になってきたんだよね? 生前の父さんは、村のために身をにして働いてきたのに、村のジジババ共は、自分たちが生きるだけで精一杯じゃん。それでいいよ、当然だよ? だから、僕も文句は言わなかった。でも、こっちはわりを食ってきたんだからさ。今こそ働けよ、穀潰し共」

 浅葱が、目元にけんを寄せて「梗介」と呼んだ。梗介は、無表情で黙してから、元の笑みを回復させた。「冗談だよ? ……冗談にさせてくれるよね?」という無垢むくでしたたかな恫喝どうかつが、しんと大広間に響き渡る。吐息といきをついた楚羅が、宣言した。

「〝まれびと〟の三隅真比人みすみまひとさんと嘉嶋凛汰くんの二名を、『儀式に臨む者』の候補から除外することは、私たちにとって当然のことです。〝まれびと〟を愛し、いつくしむことこそが〝憑坐さま〟の願いであることを、皆さまもゆめゆめ忘れてはなりません」

 三隅が、凛汰に目配めくばせした。謎の役割を免除めんじょされた凛汰は、助かったという安堵あんどよりも、強い不気味さを感じていた。すると、一人の老婆が「大柴先生、あんた行ってきなさいよ」と言ったから、水を向けられた大柴おおしばが、三隅の隣でギクリと動いた。

「僕が……? 困ったな、勘弁かんべんしてくださいよ。嫌だと言っているわけではないんです。ええ、本当に。でも、村の中学校に赴任ふにんしてから、まだ二年です。〝憑坐さま〟への信仰心が、僕よりも強い人のほうが、お役目に適していると思うんです」

「ふうん。信仰心の強い村人ねぇ……」

 三隅が、ニヤニヤと笑いながら腕組みをした。大広間を飛び交う視線が、村人たちの間で錯綜さくそうし、巫女装束の少女の元で収束する。

「わ……私……?」

 美月が、戸惑いの声を上げた。村人の一人が「美月ちゃんなら、安心だ」と言って、他の村人も「そうよ、美月ちゃんなら!」と同調する。先ほどまでと打って変わって、声には不自然な張りがあり、皆が笑顔を振り撒いていた。

「でも、私はまだ村に来てから一年もたってなくて、大柴先生よりも短くて……」

 心細そうな美月の声に、村人たちが矢継やつばやに「期間よりも、信仰心の強さだよ」「海棠家の養女なら、資質ししつは申し分ない」と声をかぶせていく。「〝姫依祭〟に参加したことで、〝憑坐さま〟の巫女になる資格だって手に入れた」と声が続いたところで、楚羅がまた嗚咽おえつを漏らして、両手で顔を覆い、くぐもった声で言った。

「資格を得ただけではありません。美月は〝憑坐さま〟の巫女を継承しました」

 ――水を打ったような静けさが、大広間を包み込む。直後に、耳をふさぎたくなるほどの拍手喝采はくしゅかっさいが巻き起こり、古い家屋が揺れた気がした。「おめでとうございます、美月さま!」と誰かが叫び、顔を強張らせた美月が、首を横に振った。

「おめでたくなんか……ありません。凛汰のお父さんが、亡くなったのに……! 誰かに、殺されたかもしれないのに! 楚羅さん、浅葱さん、こんなことをしてる場合じゃありません。早く、警察に連絡しなきゃ……」

「お待ちなさい、美月。貴女は、ここにいなくてはなりません」

「楚羅さん、どうして? ……浅葱さん、浅葱さん!」

 立ち上がりかけた美月を、楚羅の手が押し留めた。浅葱は、悲痛な顔で俯くだけで、養女の訴えに耳を貸さない。村人たちも同様だが、今にも祝杯しゅくはいを挙げそうだった雰囲気は、なぜか気まずそうなものに変化していった。「どうする?」「今の美月ちゃんを選べば、天罰てんばつがくだりかねん」「代わりなら、また見つければいい」「楚羅さんは、利口りこうなお方じゃ。最善を選ぶ覚悟を、もうお決めになっている」「でも」「うるさい、お前が供犠くぎになりたいのか」――ひそひそ声の中から、美月が一つの単語を選んで復唱した。

「くぎ?」

 村人たちの間に、明らかな緊張が走った。だが、美月のきょとんとした顔を見るや否や、いびつな笑みで「何でもないよ」と言ってから、頭を一斉に下げて懇願こんがんした。

「頼む、美月ちゃん。巫女としてのつとめを果たしておくれ!」

「巫女としての、務め……?」

「〝憑坐さま〟のお怒りを鎮めるために、美月ちゃんが必要なんだ。後生ごしょうだから、受け入れると言っておくれ。もう一人は、村人から選ぶから」

「巫女である美月ちゃんの言葉は、すなわち〝憑坐さま〟のお言葉だ。美月ちゃんが承諾しょうだくの言葉をくれたなら、〝憑坐さま〟のおおせのままに、わしたちは全力で〝姫依祭〟を執り行い、慰撫いぶの神事を全うすることをちかおうじゃないか!」

「〝憑坐さま〟の仰せのままに」

「〝憑坐さま〟の仰せのままに!」

「〝憑坐さま〟の仰せのままに……!」

 平伏へいふくした村人たちは、読経どきょうのように唱和しょうわする。幾重いくえにも重なる声が、個々の性質を粘土ねんどのようにね合わせて、一体の怪物をり上げていくようだった。決断をせまられた美月の呼吸が、浅くなる。瞳が葛藤かっとうで揺らぎ、不安で潤み、諦めと紙一重の覚悟が生まれ、哀切あいせつの顔を作っていく。唇を結んだ美月が、運命を受け入れるような顔で、口を開きかけたとき――凛汰は、先に言わせてもらうことにした。

「本当に、それでいいのか?」

 おぞましい唱和が止まり、矢のような視線の束が、凛汰めがけて殺到さっとうした。外野を無視した凛汰は、目が覚めたような顔をしている美月と見つめ合い、生前の嘉嶋礼司の口癖くちぐせを、おごそかに唱えた。

「お前は、本当に、それでいいのか?」

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