第23話 死闘

 私達は学園から北東の山を登っていた。メンバーは私達三人と特戦隊を含む二十一人であった。


 山頂に近づくと遺跡の様な柱が立ち、更に奥に進むと巨大な石像が見えてくる。


「これが、封印された一級魔族……」


 それは昼過ぎの事である。太陽が欠け始めた。日食が始まったのだ。


 石像に亀裂が走り、太陽が円になって消える時、石像の中から一級魔族が現れる。


「イマジネーションを構えろ」


 この討伐部隊はカエスルさんが主将だ。皆はイマジネーションを発動して、私も一歩遅れて魔装のイマジネーションを使う。


 そして、聖剣を抜く。


 すると、一級魔族が砂をばらまく。そこから二級魔族が大量に湧く。


「雑魚は任せろ、カエスルは一級魔族を頼む」


 特戦隊のメンバーが叫ぶ。


「問題ない、こちらの切り札はエルフローラだ」


 私達は一級魔族に近づく。その威圧感は絶大で自然と全身のふるえがする。


 これが都市をも滅ぼす、一級魔族……。


「お前、名前はあるか?」

「我名は『ルシファー』異世界の堕天使からつけられた名だ。もう、記憶に無い昔に、我も天使だったのかもしれない」


 カエスルさんの問いに一級魔族は『ルシファー』と名のる。天使とは神に一番近い存在だ。このルシファーはそれだけ強い存在なのだ。


 そして、ルシファーは右手を上げると黒い霧が集まる。


「来るぞ、気を付けろ!」


 黒い霧の塊から黒いビームが放たれる。


 私達の足元にヒットすると、地面は爆発する。


「角度が甘い、これが二百年のブランクか……」


 ルシファーは足元とコウモリの様な羽は石化したままである。つまり、ルシファーは動けない様子であった。


 このハンデ戦で私達は圧倒的な劣勢を感じた。


 再び、黒い霧が右手に集まると黒いビームが発射され足元で爆発する。アイリスさんが爆発に巻き込まれた。


「アイリス、下がれ、ヨーヨーの結界で防げる敵でない」


 カエスルさんの指示に苦渋の顔をして逃げ出す。あのアイリスさんが素直に逃げるなんて考えられないが、それほど強大な敵であった。


 とにかく、攻撃だ。


 私は高速で移動して聖剣で切り付ける。


『必殺、逆十字切り』


「うぐぐ……」


 よし、手ごたえがあった。


「その剣、大勇者、カセルの剣か……?」

「そうだ、伝説の聖剣だ」

「ああああああ!!!!忌々しい、カセルめ。また、その剣で我を苦しめるのか!!!」


 ルシファーの表情が変わり恐ろしい姿になる。これが死闘なのかと私は実感するのであった。


 その後はお互いに消耗戦となる。


 黒いビームをまともに受けたら即死の中での戦闘であった。しかし、聖剣は大勇者カセルがルシファーに対じする為に作ったのだ。その効力は絶大であった。


 私は心を凛として聖剣に力を込める。魔法少女の様な魔装が輝き戦闘力が上がった気分だ。


 そして、高速移動をして、再び聖剣で切り付ける。


『必殺、逆十字切り』


「ぐぐぐ……」


 よし、確実に効いている。そう、勝機が見えたのだ。


「おのれ!このままでは我が滅ぶ……」


 ルシファーの体は再び石化を始めていた。


「とどめだ!」


 私は聖剣をルシファーに突き刺す。


 ルシファーが完全に石化する一瞬の事であった。ひたいの宝石から私に向かって黒いビームが放たれる。


「お前も死ね!!!」


 しまった、完全に油断したこの距離では回避は不可能。


 私は黒いビームの直撃を受けて吹っ飛ばされる。あああ、このまま死ぬのかと思って意識が消えゆく。


「エルフローラ!エルフローラ!」


 カエスルさんが私の名前を呼ぶ声が聞こえる。


 私……生きている。起き上がり胸を見るとデイナさんがくれた退魔の鋼の板が焦げていた。デイナさん、やっぱり、デイナさんには勝てないや。


ふと、周りを見るとルシファーは石化していた。アイリスさんに特戦隊のメンバーも無事だ。


 それは勇者エルフローラの伝説の軌跡であった。


「さあ、皆さん、学園に戻りましょう」


 私の言葉に皆は笑顔であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る