第22話 決戦前夜
その時である。
『ブーン、ブーン』
緊急会議の警報が鳴る。この警報は一級魔族の情報を得た時に鳴るモノで、この前のケルベロスの件で私達三人は特務部隊の格上げされて、会議に出席する必要があるのだ。急いで、校舎の最上階にある大会議室に向かう。途中でアイリスさんと出会う。
「一級魔族ですか?」
アイリスさんの問いにカエスルさんが頷く。
そう、一級魔族は都市を一つ滅ぼすほどの力があると言われている。
私達が大会議室に入ると学園の幹部達が顔を揃えていた。案内されるままに席に着くと。諜報部の隊員が説明し始める。
「北東の山に封印された、一級魔族が二百年の一度の金環日食により解き放たれるのです」
ざわつく幹部達を理事長が収める。
「今、王都は他国との戦争で疲弊している。この学園が一級魔族を止めるしかあるまい」
理事長は一息つくと更に話始める。
「聖剣に選ばれしエルフローラ君、貴方が最前線で戦ってもらう。問題ないね」
その言葉に私は心が凛として、強大な敵を討つ事を誓うのであった。
決戦前夜の事であった。私は寮の部屋で眠れないでいた。
「エルフローラさん、私は留守番だけど、応援しているね」
「その言葉だけでも十分です」
眠れない私に、デイナさんが声をかけてくる。すると、少し小さな鋼の板に紋章の刻印をされた物を渡される。
「退魔の祈りを込めました。首からさげてお持ち下さい」
デイナさんは少し小さな鋼の板を布袋に入れて私に手渡す。
「ありがとう、これでデイナさんも参戦した事になるわ」
えへへへへ……。
デイナさんは少し照れた様子でいる。アイリスさんは相変わらず。『グオー』とイビキをかいている。
このずぶとさは見習いたいものだ。
「少し夜風に当たってくる」
私はデイナさんにそう言うと寮の部屋を出るのであった。
夜の学園は静かであった。うん?甘い香りがする。この香はカエスルさんの買った香水の匂いだ。
私は香水の匂いに導かれて校舎裏に向かう。そこに居たのは剣術の稽古をしているカエスルさんであった。
「カエスルさん、こんな夜中に稽古ですか?明日は決戦ですよ」
私が声をかけるとカエスルさんは木刀の動きを止める。
「エルフローラか、確かに明日は決戦だ。でも、死への恐怖は稽古が一番効くのだ」
死への恐怖か……私は基本ポジティブなので難しく考えた事は無い。
でも、カエスルさんは十四歳で兵役にて戦争の最前線で戦い。その後も傭兵として死線の中で生きてきたのだ。
私には分からない世界だ。
カエスルさんは石に腰かけて、汗を拭く。疲れた様子のカエスルさんに私は声をかける事にした。
「寝不足はいい仕事の敵です。これから一緒に帰りましょう」
「戦闘の初心者らしい言葉だ。本当のプロは睡眠時間など気にしない」
「では、これから寝て朝早く起きましょう」
「……エルフローラには勝てないな。よし、わかった、これから寝よう」
カエスルさんは自室に戻る事にした。
私も早く帰って寝なければ。自室に戻るとデイナさんは寝ていた。起こさない様にベッドに入ると自然と眠れた。
そして、朝焼けが真紅に染まると校舎裏に向かった。少し待つとカエスルさんが現れる。私は『天』を使い気持ちを高める事にした。
「真紅の瞳が朝焼けの様に綺麗だ」
『天』を使ったので、私の瞳が輝いているらしい。
「エルフローラ、君が最強だ。一緒に戦えて光栄だ」
それは、カエスルさんから死への恐怖が消えたのだ。私達はグータッチをして決戦に挑む事にした。
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