第20話 心の輝き

 数日後。


 この学園は家族で住んでいる職員がいる。当然の事だが子供もいる。


 私は中庭に通りかかると。


 デイナさんが今日も空を眺めていた。車椅子姿が珍しいのか子供が数人デイナさんに近づく。


「お姉ちゃんは何で何時も空を眺めているの?」


 私はその姿を見て止めに入るか悩んでいた。そう、デイナさんはもう勇者に成れないのだ。


「そうね、空が綺麗だからよ」

「曇りの日も、雨の日も、綺麗なの?」

「えぇ、空っぽの心は空を見るしかないの」

「嘘つき、お姉ちゃんには光が見えるわ」

「光?」

「よく解からないけど、その心は輝いているの」


 その会話に私は近づき、デイナさんに声をかける。


「デイナさん、『天』は使える?」

「はい……」

「なら、イマジネーションも使えるはずね」

「……」


 デイナさんは黙り込んで寮に帰ってしまう。


「お姉ちゃん……」

「ありがとう、親友のことを心配してくれて」


 私は子供達にお礼を言う。


 デイナさんはイマジネーションが使えるのだ。きっと、復活するはずだ。


 その夜、私は眠れないでいた。ふと、部屋の中を見まわすとデイナさんが起きていた。


「デイナさんも眠れないの?」

「はい……」

「夜の散歩でもする?」

「えぇ、行きましょう」


 私が車椅子を押すと外には月明りが照らされていた。夜の学園は静まり返っていた。


「ねえ、私のイマジネーションが疼くの、私に何ができるかな?」

「デイナさんは素敵な方です。きっと、道は自然と開けます」


 そんな話をしていると、医務室に灯りが付いている。


「デイナさん、医務室に行ってみましょう」


 医務室の中に入ると当直の看護師さんが居た。


「あら、最強のイマジネーションを持つエルフローラさんですね」


 やはり、私は有名人であった。


「私……もう一度、エルフローラさんを追いかけみようかな」


 デイナさん?


「私のイマジネーションは氷、これを変化させて『癒しの水』の修行したいです」

「それは、医療班に入りたいとの事ですか?」


 看護師さんが尋ねる。すると、デイナさんは静かに頷く。


 そう、デイナさんは最強の『癒しの水』を探す事にしたのだ。


 次の日から医務室に毎日通い医療班の見習いを始めた。私は夢のある生活の幸せなさを改めて感じるのであった。

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