第17話 決闘

 理事長室からの帰り道、カエスルさんと一緒の任務と聞いて上機嫌でいると。


 アイリスさんが突然、止まる。


「何で私じゃダメなの?」

「?」


 振り返るとアイリスさんが下を見ている。


「私は誰よりも強くなる為にこの学園を選んだ。王族の遊び相手であった、娼婦の母の最後の言葉は『上を向いて歩きなさい』であった。でも、現実は違う。一般人でもなく王族でもない。運命は残酷であった。住む場所とお金には苦労はしなかった。でも、独りであった」

「何故、私にそんな話をするの?」


 嫌な予感しかしない。アイリスさんからは負のオーラ―が漂っていた。


「エルフローラ、決闘を申し込むわ。貴女がこの学園の生徒で一番強いなら、その一番に勝って、私が一番になる」


……。


 アイリスさんは一般人でもなく王族でもない。境遇なのであろう。だから、一番になる事で認められてきたのだ。


 この学園でも一番にこだわって、私の背中を見て修行してきたのだ。


 私は校舎裏で決闘を受ける事にした。


 そして校舎裏に着いた。聖剣とイマジネーションは無しの木刀での決闘だ。


「いいのか?剣術なら明らかに私の方が有利だが」

「関係ない、剣術は私の方が修行時間は長い」


 アイリスさんは誰よりも強い事で生きてきたのだ。それで周りを力で納得させていたのだ。デイナさんがあんな事になって。


 増々、私の力が目立ったのであろう。それで決闘だ。


『ファイト』


 かけ声と共に木刀がぶつかる。


 ギギギー。


 それからの死闘は言葉に言い表せないモノであった。


 ……強い……。


 私は負けるのが怖くなり『逆十字切り』を放つ。アイリスさんは木刀でガードするが。その木刀は『逆十字切り』によって空高くまで吹っ飛ぶ。


 結果、アイリスさんの指はボロボロになる。


「ようやく、本気を出したか……」

「もう、終わりにしよう」

「まだだ!」


 アイリスさんは木刀を素早く拾い。私に攻撃を仕掛けてくる。しかし、木刀に力は込められていない。


 また、木刀は簡単に吹っ飛びアイリスさんは倒れ込む。


「何故、勝てない!!!デイナがあんな事になっても何も出来なかった。弱い勇者など誰も相手にしてくれない。私は力が欲しい!!!」


 やはり、アイリスさんもデイナさんが勇者になれなくなってしまった事を後悔していた。


 ここは優しい言葉は要らない。


「なら、戦い続けろ!戦って、戦って、私に追いつけ」

「……」


 黙り込むアイリスさんに瞳に炎が戻った。


「今日は一緒に帰ろう……」


 小さく頷くとアイリスさんは立ち上がる。


 そう、これ以上は二人に言葉は要らなかった。

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