第16話 失っても
その言葉を最後にデイナさんは学科の授業に出る事も無く。中庭で空ばかり見ていた。
私が両脚を切ったのだ、謝るべきであろうが、アイリスさんが私を止める。
「あれは魔族との戦闘で生じた結果よ、エルフローラが居なかったら私は殺されていた」
解かっている。解かっているけど……。
翌朝、私はカエスルさんと訓練をしていた校舎裏に足を運んでいた。そこに居たのは後輩メアリーさんであった。カエスルさんが先生として教えているのだ。
私は泣きながらその場を後にする。
寮に戻るとアイリスさんは学科の授業に出て、デイナさんはまた中庭だ。
一人になると、私はベッドの上で泣いた。親友に生きるだけの苦しみを与えて、抱きつきたいカエスルさんは後輩に特訓だ。
昼下がりになると私は目覚める。泣き疲れて眠っていたのだ。朝から何も食べていないのにお腹は空かなかった。
『死にたい』
『死にたい』
『死にたい』
私は呪いの言葉を吐くとまた眠りに着く。そんな生活が一週間ほど続くと医務室に呼び出される。
簡単なカウンセリングを受けてまともな食事を取る。更に二週間ほど医務室に通うと、ようやく学科の授業に出られた。
私に平凡な日常が戻ったのだ。
それから一ヶ月が過ぎた。アイリスさんと共に理事長に呼び出された。
「デイナ君の事は実に残念であった。しかし、君らは貴重な戦力だ。そこで魔族がケルベロスの召喚しようとしている」
これは新たなる戦いの指令か……。
もう、失いたくない。でも、この国家勇者騎士高等学校に居る以上、任務は仕方がないか……。
「この学園の任務は三人一組で活動する。そこでだ、カエスル君と一緒に戦ってもらう」
え?カエスルさんと一緒に戦う!?そう、カエスルさんとは最近会っていない。朝練は無くなり、実技が免除されているので会う機会がないのだ。
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