第3話 一番重い罪

 カエスルさんと裏通りから少し歩き、大通りに出ると宿が見えてくる。二人で歩くと胸がドキドキして幸せな気分になれた。この時間が永遠に続く事を自然と願っていた。


 そして、私が今日泊まる宿屋の大きさに驚いていると。


「思い出したよ、エルフローラは、確か、ナジナ族と言ったね。あそこは山の中だから王都は都会に見えるのかな?」

「はい、なにもかもが新鮮です」


 うん?宿の前でウロウロしている。女子を見つける。私は迷い無く声をかける事にした。


「あなたも国家勇者騎士高等学校に入学の生徒?」

「えぇ、私の名前はデイナ、新入生よ」


 凄く優しそうな感じの女子だ、ここで出会ったのだ、私達は友達になれそうだ。


「私はエルフローラ、お友達になりましょう」

「は、はい」


 デイナさんは少し驚いた様子だ。いきなり、友達は早過ぎたかな。


「二人とも宿に入るといい、明日は王都の郊外にある学校まで歩きだ」

「エルフローラさん、このお方は?」

「国家勇者騎士高等学校の先生よ」

「よ、よろしく……」


 デイナさんは少し緊張した様であったが直ぐに落ち着きを取り戻して、三人で宿の中に入ると中央ロビーに十人程の男女が居る。見た感じは国家勇者騎士高等学校の新入生の様だ。


 そこに裕福そうな夫婦が通りかかる。


「見て、逆十字のカエスルよ」

「あぁ、危険人物だ」


 何故こんなにもカエスルさんが有名人かと言うと、逆十字は神様から祝福を得られない証拠であるからだ。それは死刑の無いこの国で一番重い罪を犯した者に逆十字の刻印が押される。先ほど、カエスルさんが戦場の最前線にいたと言っていた。この国の懲役刑は兵役である。


 それで皆、カエスルさんを恐れるのだ。


 でも、私にとっては一族を魔族から救ってくれた勇者だ。今、目の前にいる。カエスルさんは最愛の人になった。


 きらめく想いは、どんなに恐ろしい罪を犯していても、私の心は変わらなかった。

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