勇者コージとアリシアと最後の夜

童貞を捨てたあの日から

数日経つけどほぼ毎日

同じような日を過ごしている。


夜に体力を使い切って昼まで寝る

昼食で起こされる

眠りが半端だったので昼食食べたら寝る

夕食で起こされる

夕食食べ終わった後アリシア登場

子作り

夜に体力使い切って昼まで寝る



これしかしてないけど

大丈夫なのか?


しかしアリシアも子供が欲しいって

言ってたし、任務だとも言ってた。


つまりこれでいいんだ。

うん、そうに違いない。


そう思いながら夕食を

モグモグしていると栄養が巡ってきたのか

何だか頭が冴えてくる。



子供が出来るまでこの生活が続くとして

子供が出来たらどうすんだろ?

その子供はどうなる?



アリシアは王女だから

子供が出来たら子供は王子か王女で

俺が王様になるのか?

でもアリシアは兵士が欲しいって

言ってたから……



んー……?


優秀な子供は増やしたいのは

わかるけどアリシア以外の女性に

俺の子産んでもらうのは駄目なのかな?


そうしたら優秀な兵士を

増やせるんじゃないかな?


正直アリシアが妊娠した後は

しばらくヤレ無い期間が続く事になるし。


まだアリシア思うと下半身が熱くなるけど、

流石に今のペースでヤってたら

飽きて勃たなくなるかも知れないし。



ってかそうだよ!

勃たなくなったらマズイじゃん!

″俺″という優秀な遺伝子

残せなくなるじゃん!!


日本に居た時1人で頑張っても

3回くらいが限界だったのに

1日10回以上とか絶対何かの薬

使っているだろうけど、

子供増やして兵士増やすなら

アリシア以外の女性にも

優秀な遺伝子を残してもらおう!!


そうだ!

それが良い!


グスタフも妻が数人居るって言うし、

配膳の人もガナンって言うオッサンから

カワイイ娘に変えてもらおう!


そうしよう!!


間もなくアリシアが来るはずだから

その時は相談しよう!



……その前にトイレに行っておこう。



最近はご飯食べ終わった後は

トイレが近い気がする。

最初下剤とか入っているのかと疑ったが、

毒素を排出しやすくなる料理だからと

アリシアに説明受けた。



改めて思い出すと下剤飲んだら

激痛みたいな腹痛の後に

滝のような便が出るけど、

今は至って普通の便が出る。

そもそも下剤飲まされる

理由も無いだろうし。


単純に食物繊維が多いとかなのかな?



いつもの様にトイレから戻ると

いつもようにベッドメイクが終っていて

何かの御香が焚かれている。

これも役職の恩恵かな?



御香にリラックス効果あるのか

少しすると頭がボーッとしてきて

眠くなってくるけどね……









しばらくしてコンコンとドアノックの音。

「……アリシアです。」


いつもよりも暗い声だった。



「……どうぞ。」

若干頭がボーッとしているので

こちらもぶっきらぼうな返事に

なってしまった。


「コージ様。

今日は良い知らせと悪い知らせが

ございます。」


入ってくるなりそう言うアリシアは

真剣な顔つきで何か荷物を乗せた

カートを引きながら入ってきた。

いつもの黒を基調とした少し透けている

セクシーな格好では無く

赤と白を基調とした少しゆったりした感じの

カワイイ格好だった。


「良い知らせと悪い知らせ?」

頭が回らないのでオウム返しになる。


「えぇ。そして大事な知らせです。

まず良い知らせですが、

コージ様の子を身籠りました。」



「……はぁ!?」


「連日の努力の結果ですね♡」


アリシアは満面の笑みで報告するが

今一実感がわかない。


「本当に妊娠したの!?

本当に俺の子!?」


何だか頭がグルグルしていて

おかしな質問をしてしまう。


「コージ様の子ですよ。

貴方以外にお相手はいませんから。

それに他の男性と不貞を働くような

はしたない女ではありませんから。」

キッパリとした口調で宣言する。



「え…でも……早くない?」

こっちに妊娠検査薬とかあるのかな?

たかだか数日で妊娠発覚とかおかしくない?



そんな狼狽振りを見て

「コージ様。

魔術による自己強化は出来ますか?」



「え……あぁ……」

絞り出すように答える。



「その応用です。

体内の魔力を循環させる際に

あらゆる所に意識を向ければ

コージ様との愛の結晶は

すぐに感知出来るのです。」

アリシアは嬉しそうにしている。



「そう……なの……か」

ヤる事ヤったら子供が出来る。

頭ではわかっていても理解が追いつかない。

ここ数日の事があまりに急過ぎて

父親になる自覚が持てなかった。

「え……と…今後……どうなる?」

俺はどうなる?

子供はどう育てる?

そんな意味を含んで聞いた。



「それが悪い知らせになります。

間もなく世界樹奪還の大規模作戦が

始まります。」

暗い顔で答えたアリシアは

少し声が震えていた。


「大規模作戦?」


「えぇ。防衛のための兵士を残して

兵士総動員しての大規模作戦です。

コージ様は零参部隊の隊長として

参加が義務付けられてます。」


「え……?は…?」


「私は子供を身籠っていますので

反乱や魔族の襲撃に備えて

ベネディクトの西にございます

イーストピーク領にしばらく避難します。」



「イーストピーク……?」

地理を教わった時にそんな名前が

あったような無かったような?



「そうです。

しばらくそちらで避難して、

子供が産まれましたら王族としての

責務を全うします。

コージ様が無事大規模作戦から

帰還しましたら次期王としての

準備が必要になりますわね。」



「次期王…!?

やっぱり次期王の立場か〜

あ〜…でも国の事とか政治とか

全然わからないけど大丈夫かな〜?」



「そのあたりは

追々勉強していきましょう?

その際は私も力になりますので。」

と言いながら両手を包むように

手をぎゅっと握られた。


上目遣いでそんな事されたら…

手に目線が行くが…

ついでに胸の谷間も見てしまう。


そんなこちらの視線に気がついたのか

アリシアが握っていた手を離し、

胸の谷間に埋もれかけてた

ペンダントを外して手に握らせた。


「こ…これは?」

手を開くと綺麗な赤い石を

シルバーのような素材で装飾された

豪華なペンダントがあった。



「これは王族に代々伝わる

守りのペンダントです。

言い伝えられていて、

私も母から譲り受けたものです。」


「え…そんな大事なものを?」


「えぇ…コージ様には是非とも

無事に帰ってきていただき、

この子の為にも立派な王に

なってもらいたいのです。

それに作戦が終わりましたら

コージ様は王族入りですので

何にも問題はありませんわ。」



「そっ…か…そうだよな。うん。」

確かに。

作戦が終わったら次期王だし。

王家に伝わるペンダントの権利あるよね。

「アリシアだと思って肌見放さず

持っているよ。」


「持っていないで無くさないように

ちゃんと着けて下さいね?」

アリシアがスッと後に回り

ペンダントを着けてくれた。



「それにコージ様をお守りするのは

そのペンダントだけではありません。

こちらの聖剣も今日からお持ちください。」

そう言うとカートに乗っていた荷物から

剣を1本取り出す。


…異世界勇者が日本刀に思い入れがあって

作らせただけあって、まんま日本刀だった。


とりあえず見様見真似で腰にあてて

漫画みたいに抜刀してみる。


「すごいです。さすがコージ様。

見事に使いこなせてますわね。」

アリシアが小さく拍手しつつ褒めてくれた。


「これを…今日から持ってていいのか…」

ギラリと鈍く光る刀身はその重さも相まって

鉄でも何でも切れそうな錯覚に陥る。


「作戦まではあまり時間が無いので

少しでも長く触れてもらって

慣れてもらいたいみたいですよ。」


「確かに。

これを振り回すのは慣れが必要だな。

まぁ…すぐに慣れると思うけど。」


「さすがコージ様。

今回の作戦は成功間違い無しですね!

でももう一つお渡しするものが

ございまして……」

そう言いながらカートに乗っていた荷物を

ゴソゴソして何かを取り出した。


「こちらです。

オルカスのくつわです。」

目の前には猿ぐつわみたいな物が。

口に当たるところは何かの金属で出来てて

文字が掘られている。

そして全体を隠せるように大きな三角巾が

付いている。


「え……?これって……?」


「こちらはこうして

ここを咥えるようにしていただくと、

会話が困難になりますが呼吸が安定し、

長時間の戦闘も楽になる道具です。

呼吸が楽になるだけでなく

自己強化の魔術の効果も高まります。

着けたあとはこうしてこの布で口元を

隠す事が出来ます。

この布も攻撃をある程度防いでくれる

優れ物なんですよ?」

そう言いながら慣れた手つきで

装着させられる。



…………なるほど、

確かに猿ぐつわみたいだけど要所要所に

空気穴があるのか呼吸は楽だ。

着けた後の布で口元覆うと

まるでテロリストみたいな見た目になるが、

まぁ戦闘中は見た目は気にしなくても

良いだろう。結果大事。

口が動かしにくくなるから喋れないが、

戦闘中におしゃべりとかの舐めプは

やられるフラグだから。

むしろ無言で作戦遂行とかカッコイイよね。



「これら全てがコージ様のために

なりますように。」

祈るようにアリシアは言った。


「心配しなくても…

俺は無事に戻って来るよ。

アリシアと子供のために。」



「コージ様…

今晩からしばらく会えませんので

最後に思い出を下さい。」

そう言うとアリシアはスルスルと

服を脱ぎだす。



「作戦が終わったらすぐに会えるさ。」

そう言いながらこっちも脱ぐ。









5回目くらいからか急に眠気に襲われる。

暗くなる視界と遠のく意識の中

かすかにアリシアの声が聞こえた。

「おやすみなさいませ。

コージ様。


その言葉の真意をコージはまだ知らない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る