勇者コージは訓練を始める
不意に
「コンコン」
とノックの音で目が覚める。
その後
「ガチャ」
とドアノブが回る音と共に
ガラガラと何かを運ぶ音がしたので
音のする方に目を向ける
ったく勝手に入ってくるなよババア
と不意に口に出しそうになったが
目に映るのは見た事の無い
40近い赤い髪のメイド服のオバサンだった。
「誰だ?」
と口に出すより先に
「お食事をお持ちしました。
今日からこの部屋を担当しますメイサと
申します。」
と名乗り深々と頭を下げた。
その後黙々と夕飯の時のように食事を
準備するしていく。
一通り準備が終わってこちらを向くと
「何かございましたら配膳時に
お伝えくださるか、メモをお願いします。」
そう言い残し頭を下げた後、
早々に部屋から出ていく。
次の部屋の配膳があるのだろう。
用意されたご飯を見ると
お米
焼魚
スープ
サラダ
と夕飯の時の内容と同じ物だった。
「ちっ!俺は朝はパン派なんだよ!」
昨日の夕飯の事もあるので
イリスに伝えておけば良かったと
後悔しつつ朝食を取る。
「不味い。」
一夜明ければ変わるかと思ったが
相変わらず食事はあまり美味しくない。
しかし昨日の説明だと
この後は訓練所で朝から訓練があるので
スープと水で流し込む。
「水も不味い。
相変わらず飲みにくいな。」
日本人が普段口にする水は軟水だが、
多くの国では硬水が一般的である。
雪解け水等が山の中を通過する際に
ミネラルを存分に含んで出てくる硬水は
日本人には飲みにくく、
さらに吸収しにくいため下痢になりやすい。
彼は日本の一般的な学生として
過ごしてきたために硬水を飲む機会は
少なかったのだ。
この事は後に彼を悩ませる原因になるのだが、
彼にしてみればそれ以外に下痢になる要因が
多々存在するため、
水にたどり着くのには時間がかかった。
食事を流し込むように食べると
部屋に用意された服に着替えて
足取り重く訓練所に向かう。
すでに訓練している他の兵も居たが、
グスタフは腕を組んで待っていた。
「おぅ!来たか!良く眠れたか!?」
朝から彼のデカイ声は頭に響く。
苦虫を潰したような顔しながら
「あんまり」
と一言返すと
「しっかり食べてしっかり寝ないと
強くなれんぞー」
とウザいくらいに明るく大きな声で
返された。
「飯は不味いしベッドは固い。
最悪の環境だよ」
とぼやいたのをグスタフは聞き逃さなかった。
「環境を変えたければ努力しか無い。
お前には才能がある。
努力して等級を上げるのだ!」
と火が出てるんじゃないかと思うほど
爛々とした目で見ながら
こっちの肩に手を置く。
「結局は努力次第か・・・」
武器を使った戦闘でも
魔術を使った戦闘でも
基本的に最後に生き残れるのは
体力がある人間だとグスタフに言われて
訓練場の終わりなきマラソンが始まった。
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