勇者コージは武器の適性を知る

訓練所のコースを1周するだけで

息切れするくらいの運動不足の

俺なのにいきなり


『戦闘力検査するから武器を持て』

と言われても

どうしていいかわからなかった。



「どうした?

得意な武器は無いのか?

それとも戦闘が必要ない

世界から来たのか?」


ぎこちない笑顔の

グスタフに言われて

ハッとする。


改めて地球の中でも

内戦や抗争はあちこちで起きている。


命のやりとりが日常で

日本の学校で授業受けるように

銃の扱い方を教わる国もある。


いかに日本が平和だったか。



ショックを受けていると

グスタフは続ける。



「それとも武器を使わない

無手とか言う技術を持っているのか?

異世界勇者には何人か使い手がいたが

もしその技術があるなら

教えてほしいものだ。」



これは馬鹿にしている感じでは無く

純粋に好奇心や向上心で

聞いてきているのがわかった。


グスタフ自身

武器が使い物にならなくなった時に

命をつなぐ可能性がある技術を

習得しておきたいのだろう。


そしてそれを部下にも

習得させたいのだろう。



昔の侍は剣術以外にも

徒手格闘術が必須だったと聞く。


刀を持ち歩けない場所が

多々あるし、

戦場で刀が使い物にならなくなる

可能性が高いからだ。



しかし一般家庭の

学生としては徒手格闘術も

自主的にどこかの道場に通わない限りは

授業で柔道の受け身を

教わるくらいで後は

漫画やゲームで知るくらいだった。



『家の近くの道場でも

通っていれば違ったのかな』


そう思ったが

まさか異世界に召喚されるとは

誰が予想できただろうか。



「…戦闘の技術は持ってません」


変に見栄張るよりは

正直に話した方が良さそうだ。



それを聞いてグスタフは

一瞬真顔になるが


にっこり笑って



「ならその木剣を振ってみてくれ」


「え?」


「俺なら戦闘経験が無くても

木剣を振った感じで素質があるか

見ることが出来る。


ダメなヤツは努力してもダメだが

素質あるやつは努力すると伸びるんだよ。

異世界勇者は経験無くても

素質あるやつが多かったぜ。


それこそまったくの素人だと思ったが

努力したらメキメキ頭角を現し、

俺よりも強くなった勇者もいたぜ。」



そう言われ親指を立てる

グスタフを横目に


用意された木製の武器の中から

握りやすそうな木剣を選び

テキトーに数回振ってみた。


「ふむ…お前は…」


グスタフが途端に険しい顔になる。

そして何かを考える動作をして

重い口を開いた。





「伸びる可能性があるな。」

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