痛い系な釈放

 3人の男は、2人の女を尾行した。


 人通りが多いから、尾行には苦労しなかった。


 エディタとジアーナがホテルに入った。


 その様子を、3人の男がちゃんと見ていた。


 そのときであった。


 3人のうちの一人の耳に、エアメールの風が届いた。


 耳の中でポムの声が聞こえた。


 ポムが、病院の風伝コーナーから送ったメールに違いない。 


 耳鳴りがするような尖った大音量だった。


「おいザッツ! 

 理由はよくわからないがアンドレーがもうすぐ釈放される!

 どうやら俺らで直々に鉄槌を下す必要がありそうだ。

 奴が出てくる前に、エディタを探せ!

 なにがあっても探しだすんだ!」


 ザッツはメールを受けた男の名だ。 


 メールが終わると、ザッツの耳がキーンとなった。


「おい、ポムからメールがあったぞ」


 ザッツがみんなに知らせた。


「なんだって?」

 

「フフン。アンドレーが釈放されるらしい」


「マジかよッ」


「それでさぁ、俺らで直々に鉄槌を下すことになったって」


「ほう……」


「エディタを探せだって」 


 3人は、目を合わせてニヤニヤニヤニヤ笑った。


 ザッツが言う。


「探すまでもなかったなぁ」


 他の2人が言う。


「どうする? 今すぐ押しかけるか?」


「2人とも拐うか?」


 男たちがそんな会話をしている頃。


 ホテルの廊下でエディタたちとエミーリアたちがかち合った。


「ジアーナ! どこに行ってたの!」


 オリーヴィアが不機嫌に言った。


「心配したのよ」

 

 エミーリアが続けた。


 ジアーナがペロリと舌を出した。


「ごめんごめん。

 美味しいパンでも食べて元気だしてもらおうと思って」


 エディタはちょっと申し訳なさそうにしていた。


 悪びれないジアーナをオリーヴィアが叱った。


「もしあの男たちに居場所を知られたらどうするの。

 今度は何されるかわからないのよ」


「もうアンドレー様が戻ってくるから大丈夫よ。

 さ、入ろ。ちゃんとみんなの分も買ってあるから!」


 エミーリアが言った。


「待って、わたしたちもう行かなきゃ。

 そろそろアンドレー様が保安局から出てくる頃だわ」


 エディタが、アンドレーから受けたキスを思い出した。


(あぁ、アンドレーさんが戻ってくるのね)


 ちょっと甘い気持ちになった。


 頬が、ポッと赤くなった。


 エミーリアとオリーヴィアが、保安局に向かって出発した。


 エディタとジアーナはホテルの部屋で待つことにした。


 十分ほどして、エミーリアたちが保安局に到着した。


 保安局には、犯罪者を収監する監獄もあるので、高い塀に囲まれている。

 

 耐魔加工された分厚い鉄でできた壁なので、不測のスキル攻撃を受けても安心だ。


 2人が門の前に立って待っていると、エントランスからアンドレーがでてくるのが見えた。


「アンドレー様!」


 2人の声が重なった。


 アンドレーが門をくぐったのと、2人が抱きついたのはほぼ同時。


 アンドレーの両腕が、それぞれの女の腰にくい込んだ。


 アンドレーは両の頬に同時にキスを受けた。


「オリーヴィア、キャサリンに、あ・い・し・て・る、とメールしておいてくれ。

 もちろん一文字づつ5回にわけて」 

 

 2人の女が顔を赤らめて、


「やだぁ、アンドレー様ったら、ロマンチック!」


「当然じゃ。

 お前たちにも心配かけた。すまぬ」 


 アンドレーは、夕日に照らされる中、2人の女にディープキスをした。


「さて、我の新婦を迎えにいくとするか」


 みんなニコニコして、エディタの待つホテルへ向かって歩きだした。

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