痛い系なストーカー
喧嘩に発展しなくてホッとした3人娘ではあったが、アンドレーがBLだったかもしれないと思うと、そちらの方が心配になってきた。
エミーリアが、勇気を振り絞ってたずねた。
「アンドレー様。アンドレー様は、女性が好きなのですよね?」
「我、女以外、興味なし」
アンドレーがあまりにもさらりと言ったから、女たちはすぐに安心できた。
「変な質問をして申し訳ありませんでした」
エミーリアが謝ると、
「おぬしらは、さっきの我の仕草の意味をはかりかねているのじゃろう」
「ええ。図星でございます」
アンドレーがカラカラと笑った。
そのあと、エミーリアを抱き寄せ、うなじの匂いを嗅いだ。
「おぬしは匂いの少ない女じゃのぅ。
いいオンナじゃ」
エミーリアの顔がポッと赤くなった。
「それとさっきの仕草と、どう関係があるんです?」
「匂いは人間を語る。
相手の生活が見えてくる。
さっきの好青年の体には、危険な匂いが染み付いておった」
アンドレーは、くるりと振り返った。
視線の先には、さっきの少女がいる。
少女は、剣術士の青年と話をしていた。
二人は意気投合したらしく、どこかに向かって一緒に歩き始めた。
どこにいくんだろう?
アンドレーは、気取られぬように距離をあけながら、尾行を始めた。
アンドレーは、百の女のハーレムを持っている。
それでもなお、気に入った新しい女を易々とあきらめない。
不退転、金剛心のストーカー。
さて、少女と剣士の二人が、カフェに入ろうとした。
それを見たアンドレーが、急に慌てた感じで、
「ここで待っていてくれ」
と、3人娘に告げて、
「タイム・ストップ!」
町の時間がとまり、アンドレー以外の全員の動きが止まった。
彼は、少女と剣士の二人連れよりも先回りしてカフェに入った。
ちなみに、犯罪防止のため、町で使用できるスキルは厳しく制限されている。
彼が今使ったスキルは、スリや無銭飲食などの犯罪目的で使用される危険があるので禁止だ。
つまり、アンドレーは少女をストーキングするために、スキル規制法を犯したのだ。
剣と魔法の世界に転生してから、彼は一度たりとも冒険者らしい理由でスキルを使ったことがない。
彼のスキルはいずれの場合も、彼の性欲を満たすために使用された。
アンドレーは、先回りすると、目立たない隅っこの席をとった。
ちょっとしてから、二人が入ってきた。
アンドレーからは、少し離れた場所に席をとった。
ここでも、アンドレーは違法行為をやった。
店内で、禁止のスキルを使った。
エアメールだ。
冒険者が、助けを呼びたいときに持っていれば重宝するスキル。
人命救助に役立つスキルだ。
彼は、それを盗聴器として使った。
席に座った少女の口から出た言葉が、風にのってアンドレーの耳に吹いてくる。
離れた場所にいる彼女の声が、まるで耳元でしゃべっているかのように聞こえた。
果たして彼女は、好青年の彼とどんな会話を始めたのだろうか。
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