「逢いにきたよ。」


確かに君の声で、君の姿で、僕の一歩先で振り返りながら笑う君の笑顔が見えた。



灯里あかり。」


「もう、そんなに寂しがってたら戻って来ずにはいられないじゃん。いい?タイムリミットは夜が明けるまで。それまでにその泣き顔、なんとかしてよね。」



一夜だけの僕たちの最後の時間が始まった。


こんな道中じゃあれだし公園に行こう、と言う灯里に着いていく。



無言で歩く僕たち。


だんだんと死んだはずの灯里が隣にいることの異様さを実感してくる。



普通だったらありえない今の状況に、怖い、と言う感情を人間の倫理として生み出そうとしていた。


でも僕は灯里と再会したときからそんなものは存在しなくなったようだ。


怖いという感情は一切湧かず、寧ろ落ち着いていられた。それは灯里が死んでから初めての安らぎだった。


どうやら灯里を失った寂しさは灯里でしか埋められないらしい。


「ねぇ、ごっこ遊びしようよ。小さい頃よく二人でしてたよね。」


いつの間にか着いた誰もいない公園で灯里は僕にそう声をかける。


"ごっこ遊び"はまだ灯里も僕も幼かった頃しょっちゅうしていた。

何もできない子供だった僕たちには二人で沢山の思い出を作るのにはそれが一番手っ取り早かったのだ。


「私ね、一緒に美味しいご飯を食べたかった。買い物に行きたかった。最近流行ったあの映画も二人で見たかった。」



全ての言葉に後悔が滲む。


それを掻き消すように、僕はいつもより明るい声でこう言った。



「じゃあさ、まずは美味しいご飯、一緒に食べよう。」

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