すっかり夜も更けた頃、僕は外に出かけた。

今日は一年に一度、アースアワーの日。

世界が順番に電気を消していく日。


夜の八時半から九時半までの間全員が電気を消す今日はそのまま眠りにつく人も多く、九時半を回ってもなお、ほとんどの家が電気をつけていなかった。


街灯も消えたままになっており、頼りになる光なんて今夜はない。



危ないから外に出ちゃダメだよ、なんて両親の言葉を無視して外に出る。



僕は昼間のように空を見上げる。


青かった空は黒に色を変えていた。


そのまま夜に飲み込まれてしまいそうだ。




そんな空には普段では考えられないほど星が綺麗に降っていた。




こんなに綺麗な星空が広がっているんだ。

今なら星に手が届くかもしれない。


そう思って吸い込まれるように背を伸ばしてみる。



そうすると星に一歩近づいてより輝いているように見えた。


踵を地面につけた僕は再び遠くなった星を眺めて現実を知る。

無理をして見た世界は無理をしていたと気づいてしまうと少しだけ淀んで見えた。


君が死んでから僕は一歩ずつ後ろに下がっている。どれだけ下がっても君はいないのに。



星に君の面影を重ねてしまう。




いつも、輝いていた君を。





でもやっぱり違う。君はいつも僕の"一歩"先なんだ。


あんなに遠いところにいるはずがない。


僕は空に手を伸ばす。

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