3ヶ月前、君は死んだ。

交通事故だった。


夏が終わり、少しだけ涼しくなってきて、それでも走ったら汗が滲むような日。


久しぶりに走ったからか僕の体は熱くなっていた。だから君の手が余計に冷たく感じたこと、今でもはっきりと覚えている。



電気が付いているはずの病室なのに、まるで夜のような、真っ暗な世界だった。


君の家族も友達も、誰もが下を向いて涙を流している。


僕は現実を受け止められずに、涙も出なかった。


今、あの時の君に触れてもきっと君の手を冷たいと思うことはないだろう。


やっと君と手が冷たいね、と分かち合えるほどには寒くなってきた最近。その手は君に触れることなく、更に冷たい石の塊に触れることになる。


追いつきたいと思っても君には追いつけない。





昔からそうだった。


幼稚園のかけっこで二等を取った君。

三等だった僕は来年こそは、と意気込む。

次の年に僕は確かに二等を取ったけど、君の首には金色の折り紙でできたメダルが下げられていた。


何をするにも君が一歩先を進んでいた。








そんな二人の関係はいつのまにか幼馴染から恋人、と言う名前に変わっていた。


君に対しての憧れの感情は恋心に似ていたものだったらしい。



僕の一歩先を進んでは振り返って笑う君。


僕が初めて君の一歩先に行けたのは年齢という月日だった。


僕が慌てて振り返っても、そこには君どころか誰もいない。



置いていくつもりはなかった。


置いていく側になるだなんて思いたくもなかった。


ただ追いついて、隣を歩きたい。

それだけだったのに。



君が死んでからの人生は酷く恐ろしいものだった。


信じたくなかった。

目の前にも、後ろにも、君がいないことが。



そして僕はいつしか願うようになっていた。


一歩先だった君にもう一度会いたい、と。

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