第38話 こだわり
うぅ…酷い目に遭ったぜ…親父にもぶたれた事なかったのに…のじゃロリエルフの情け容赦ない折檻が終わって暫し、俺は正気に戻ったマルシェラの膝をマット代わりに俯せになっていた。お尻が痛い。お猿さん並みに真っ赤になっているかもしれない。何故俺がこんな目に遭わなければならないのか。
「ごしゅさま。いたいのいたいのとんでけーです」
朱璃ちゃんがしゃがんで俺のお尻を撫でながらおまじないをしているが、痛みが飛んでいかない上にセクハラである。仮にこれが逆の立場であればどうだろうか。思う存分尻尾をもふもふ出来るんだよなあ!
「エリン様。あんなにお尻をぶつのは酷いと思います」
頭をさわさわとなでながらマルシェラがのじゃロリエルフを非難する。仮にこれが逆の立場ならどうだろうか。けも耳を思う存分もふもふ出来るんだよなあ!やっぱ獣人よ。獣人しか勝たん!!俺は二人に好き放題されるがままにもふられていた。偉い人も言っていたからな。もふっていいのは、もふられる覚悟がある奴だけだと。つまりこれは俺が二人をもふる為の先行投資。こんな事をされるのが犯罪にならないのも幼少時だからこそ。希少なこの機会、思う存分俺をもふるがいい。まあ二人はこれから先、思う存分俺にもふられ続けるんだけどな!
「ふん。そやつの自業自得じゃ。全く、紛らわしい言い方をしおって。子どもなら子どもらしくもっと素直に言わんか」
素直に思った事を言った結果が尻叩きなんだが?そもそも最初に俺のお出かけに付き合ってくださいとお願いして断られた場合、相手に主導権を握られてしまう。なにせ俺には相手に渡せる対価がないのだから。だからこそ相手の選択肢をイエスかはいの強制二択にする為に外堀から埋めていく、これも交渉術の一つなのだ。必殺駄々っ子戦法は俺の趣味ではない以上、やり方がこれしかなかったのだ。まあこんな事を子どもがしてきたら俺はそいつを殴るけどな。結果的に良い方向に転がったので、尻叩きは甘んじて受け入れようではないか。
「胸の大きさは母性の大きさって言うからね。僕も分かり辛い言い回しをした覚えが無きにしも非ずだし、この尻叩きは甘んじて受け入れますよ」
「お主…まだ叩かれ足りないようじゃな?今度はそのズボンを引っぺがして叩いてやろうかの?」
「だめ。ごしゅさまのおしりはわたしがまもる」
ペシンペシンと俺のお尻を叩きながら意気軒昂な朱璃ちゃん。既に従者としての気概が十分あるとは恐るべしけもロリ幼女。しかしそのやる気のせいで俺のお尻が守られてないんだが。
「ほう?お主に儂が止められるのかの?それとも代わりにお尻を叩かれるかの?」
ニヤリと悪い笑顔を浮かべるのじゃロリエルフ。う~む、遊んでるなぁこいつ。なまじ上王なんてなったばかりに友達がいなくて寂しかったんだろうな。ましてや自分より胸も背も小さい奴なんて子どもくらいだろうし。のじゃ口調も素じゃないっぽいしなぁ。つまり精神年齢が…あっ。
「ふうぅぅぅっ」
可愛らしく威嚇のような事をした後、朱璃ちゃんは俺のお尻を叩くのをやめると立ち上がり、俺を庇う様に仁王立ちした。俺の方を向いて。普通は逆ではなかろうか。一体この子は何をするつもりなのか…朱璃ちゃんの動向を静観する俺とマルシェラとのじゃロリエルフ。朱璃ちゃんは前かがみになると、なんとスカートのウエスト部分を掴みズルッと勢いよく下げたではないか!
ちなみに朱璃ちゃんの着ている服はメイド服であり、なぜメイド服なのかと問われれば、元々メイド服は作業着だからである。別に割烹着でもジャージでも良いわけだがそんなものが異世界にあるわけがない。だから結果としてメイド服を着るしかないわけであり、これは決して俺の趣味という訳ではない。
ちなみにマルシェラはロングスカートで朱璃ちゃんはメイド喫茶のメイドさんが着てるような膝丈くらいのスカートである。子どもは活発だから裾が長いと走り回れないからね。
ちなみに尻尾に関してだが、尻尾はスカートの中に隠すか出すかの2択だが、猫や鼠みたいな細長い尻尾ならスカートの中に隠したり腰に巻けば問題ないが、狐や犬みたいなもふもふ尻尾はスカートの中に隠すと尻尾の部分がこんもりして非常に見栄えが悪い為、尻尾を出す事が推奨される。そして尻尾穴は人によって位置が様々な為、オーダーメイドでもない限り自分で穴を開けるのが普通である。尻尾の根本が窮屈にならない程度にU字に穴を開けて、U字の上部分をスカートを履いて尻尾を収めた後にボタンとかで留めるわけだな。男性ズボンの社会の窓みたいなもんだと思えば分かりやすいだろうか。閑話休題。
朱璃ちゃんの暴挙に俺は咄嗟に目を瞑った。…この子凄いな。俺を尻叩きから守る為にここまでするとは。将来姐御とか呼ばれそうな切符の良さである。これには流石にのじゃロリエルフもビックリだろう。どんな顔してるか見れないけども。
「僕のお尻を見たいあまりに幼女にお尻を晒させるとは…鬼畜の所業ですね。救いようがありません。どの口が幼児趣味は変態などと言うのか…その歳で独り身なのも当然ですね」
「そんなわけなかろうが!ほれ、お主もさっさとスカートを履け!女子がそのようなはしたない真似をするでない!」
「ごしゅさまのおしりをたたくなら、わたしのおしりをたたくといい」
「ああもうわかったのじゃ。どっちも叩かんから安心せい。まったく、冗談が通じないのも困ったもんじゃぞ」
子どもに冗談が通じるわけねえだろ。試しにお菓子買ってあげようかと喜ばせといた後にやっぱり止めたと言ってみろ。即ギャン泣きだぞ。子どもじゃなくてもそんなことされたら怒ると思うけど。というか俺は一体何をやっているのか。尻叩きの是非を問いたいわけではないのだ。
「エリン様が尻叩きを諦めたという事で、とりあえず本題に入りましょうか」
「別に叩きたいわけじゃないからの?お主がふざけた事を言うからじゃろうが」
ここでふざけた事を言うとまた話が進まないからな。大人な俺はスルーするぜ。
「エリン様はアレスの師匠になってくれるという事で良いんですよね?」
「そうじゃの。本人と会わずに決めるのもちと性急な気もするが、まあ問題ないじゃろ。何よりお主と一緒に育つのを放置したら、どんなおかしな成長をするのか不安じゃからな」
のじゃロリエルフめ、俺が腐ったリンゴみたいな言い方しやがって。
「そうですか。それでは一つ、アレスの師匠枠採用試験といきましょうか」
「何を言うとるんじゃ。そもそもお主が儂にお願いした事じゃろうが」
「そうですけど。それは僕が勝手に言い出したことですし、最終的には父上の了承を取らない事には始まりませんよね。そこは上王の権力使えば頷くしかないでしょうけど。とはいえやはり、どの程度の実力があるか直に確認したいじゃありませんか。教え方に問題ないかの確認も必要ですし。魔力をギュッとしてパッとしたら魔法なんて一発じゃろうがなんて言われても、分かる人なんてまずいませんよね?」
「そうじゃな。ギュッとしてパッとしたら魔法なんて一発じゃがその通りじゃ」
手をギュッと握ってパッと開くと同時に現れた水球を手の平に浮かべつつ、どや顔を浮かべるのじゃロリエルフ。うぜえ…だが凄い!無詠唱ってやつか!?俺も早く使いたいぜ!!
「というわけで、エリン様が子どもに問題なく教えられるだけの資質があるのか、アレスを教え導くだけの実力があるのかを確認したいわけですよ」
「ふむ、別にそれは構わんが、どうやって確認するんじゃ?お主らの前でシグナスをぶちのめしでもすれば良いんかの?」
そんな事したらアレスとの関係性がマイナススタートなんだが。
「アレスの育成に失敗は許されません。ですが丁度ここに都合の良い子どもが一人いるでしょう。誰からも期待されない、神に見放された子どもが」
「…子どもがそのような事を言うでない。お主にも取柄の一つや二つはあるはずじゃ。例えばそのよく回る口とかの」
「ご心配なく。他人からどう思われようが、僕は今の僕をそれなりに気に入っていますので。とはいえこの身を少しは憐れに思って下さるなら、ちょっと僕に協力して頂けると非常に助かるんですが、エリン上王陛下」
「お主にそう言われると馬鹿にされとる気がするのう。まあよい、さっきも言った通り、お主の面倒もついでに見てやるつもりじゃからな。とはいえ、協力するにしても内容次第じゃぞ」
「協力といっても、難しい事じゃありません。エリン様にとっては至極簡単な事ですよ。僕を外にお散歩に連れて行って欲しいんです」
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