第34話 良い勝負
「誰が…誰が好き好んでこんな姿をしていると思ってるの!?私だってね…私だって、叶う事ならボンキュッボンのナイスバディになりたかったわよ!!でもね、見なさいよ、この体を!!ボンキュッボンどころかツルポコペタンよ!!誰が世界樹の枝みたいな体型ですねよ!!言った当人は褒めてるつもりかもしれないけど、言われた方はたまったもんじゃないわよ!!」
世界樹の枝ww誰だよそんな上手い事言った奴はww
「何が可笑しいの!?」
「あ、いえ、すいません。何も可笑しくないです」
「私だって、成長したらお母さんみたいにおっぱい大きくなったりすると思ってたわよ!!期待してたわよ!!でもね、何年経っても大きくならない。おっぱいどころか身長も伸びない。周りの子たちは成長するのに、私はいつまで経っても幼児体形のまま…あなたに分かる!?この絶望が!!小さい頃はきっとお母さんみたいになるだろうってちやほやされてたのに、人気者だったのに!!時間が経つにつれて生暖かい目で見られ始めて、同年代の子達はおろか、下の子達にも頭を撫でられて抱っこされてほっこりされる、違う意味で人気者よ!!ちくしょうっ!!」
まあ確かに愛玩的な可愛さでは図抜けてるな。見目だけは凄まじく良いわけだし。
「異性に女として見られない。同性には違う意味でちやほやされる…そんな地獄が嫌で国を飛び出してきたのに!この仕打ちはあんまりよ!!私が一体何をしたって言うの!?ふ…フフ…本当は分かってたのよ。国を飛び出して、私を知らない所に行った所でなにも変わらないって事は。例え誰かが私を好きになっても、外見で釣り合いが取れるのは年端もいかない子どもで、成長するにつれてそれは恋愛感情から愛玩する庇護欲へと変わっていくの…そうでないなら、そこに居るのは小さな女の子に性欲を抱いている変態だけよ。そもそも、こんな見た目でも私は立派な大人だもの。気になる異性が出来たとしても、見た目が釣り合う子ども相手に恋愛感情なんて持てるわけないし、まともな大人には端から見向きもされない…私の選択肢は子どもか変態しかないの。フフフ、最初から私の行動は破綻してたってわけ!アハハハ!面白いでしょう!?滑稽でしょう!?惨めでしょう!?無様でしょう!?遠慮なんてしてないで笑いなさいよ!!」
「あはははは!本当無様で面白いですね!!」
「何で笑うのよ!!そこは慰めるところでしょう!!!」
う…うぜぇ…笑えって言ったから笑っただけじゃねえか。何で理不尽に切れてんだよ。そもそもお前の恋愛事情に興味なんてねえよ。まともに話聞いて欲しいなら、最低限もふもふ尻尾を生やしてから出直してきてくれよ。
「でもね、そんな悲惨な現実に打ちのめされていた時に出会ったのが、レイだったの」
はぁ、そうっすか。
「そんな悲惨な現実に打ちのめされていた時に出会ったのが、レイだったの」
構ってちゃんかよ…面倒くせえな。ループしてんじゃねえよ。他人の惚気話なんて聞いてても面白くないんだよ。それにお前の話のオチ見えてんじゃねえか。
「運命の出会いだったんですね」
「そうなの!運命の出会いだったの!レイと出会ったのはね、今のエタニアルの王都がある場所だったわ。見た事のない服を着てて、子供でも知ってるような事を知らない不思議な人だったの」
…へぇ。
「ちなみにそのレイって人は、フルネームはなんて言うんですか?」
「レイ・アスターよ。あ、でもそれはこっちに合わせた名前で、最初はアスタレイって名乗ってたわね。どうやって書くかも教えて貰ったけど、勇者文字は複雑だし誰も読めないから、すぐ使うのを止めたわね」
おいおいマジか…あすたれい。明日田黎とかか?ほぼほぼ日本人確定じゃねえか。それに勇者文字…複雑とか言ってたし、もしかして漢字か?まあ漢字なんて読み方知らなきゃ解読なんてまず不可能だろうしな。
「レイはね、こんな私でも一人のレディとして扱ってくれたわ。私も常識に疎いレイに色々教えたりして、二人は順調に仲を深めていったの。私もきっとこの人なら…レイならって思ったの。ついに私も幸せになる時が来たんだわって!!」
…辛い。終わった悲劇を嬉々として語っているこのロリエルフを見ているのが辛い。それでも語りたいのは一人の女性として見て貰えたからという希少な幸せ体験だからか?でもお前振られたんだろ…でなきゃこんな拗らせてないよな?俺はお前と初対面なんだぞ。いや、だからか?自分の不幸に酔ってるのか?同情買って気持ちよくなりたい系?不幸な私可哀そうアピールか?メンヘラかよ、そりゃまともな男は寄り付かねえよ!!
「な、なのに…なのに!!わ、私はそういう対象として見れないって。しっかりした妹みたいに思ってるって…私もその時は、仕方ないって諦めたわ。こんな見た目だもの。でもね…暫くして、レイが私のお母さんと妹に会った時の…レイのあのだらし無い表情が…!何よ!なんだかんだ言って結局は私がチンチクリンだから魅力を感じなかったってだけじゃないの!!胸?結局は胸なの!?男はみんな大きい方が良いの!?」
そりゃそうだ。もふもふの尻尾とごわごわな尻尾ならどっち選ぶのかって話よ。
「あ、挙句の果てに…わ、私の妹をお嫁さんの一人にしやがって!!私の方が先に好きだったのに!!私も一緒に貰ってくれても良かったじゃない!!」
BSSされてんのか…いや、告白してるならBSSじゃないか。むしろこれはNTRになるのか?いや、告白は断られてるわけだしNTRではないか。しかしこのレベルのロリエルフに告白されてきっぱり断れるとか、恐ろしい男だな。異世界転生上級者かな?流石に勇者と呼ばれるだけの事はある!!
「少しでも大人に見えるように口調も変えて、エタニアルの上王にもなったわ。地位も名誉も威厳も手に入れたのに!そのせいで余計に敬遠される始末!!何もかも上手くいかない!私は幸せになりたいだけなのに!!」
敢えて突っ込まなかったが、やはり天然のじゃロリじゃなかったか。そもそものじゃ喋りは大人っぽく見えないどころか、むしろ子供っぽさが強調される上に威厳なんて欠片もないと思うんだが。ロリにのじゃ口調とか、そんな発想は間違いなく勇者レイの仕業だろうな。酷い事しやがる、気持ちは分かるが。やっぱロリ婆はのじゃ口調でいて欲しいもんな!というか女王って言ったか?もしかして女郎じゃなかったのか…え、なら似非の女王ってなんなの?権力がない形だけの女王って事?そんなのになる意味ある?
「…ねえ、あなたから見て、私をどう思う?」
こいつ…5歳児相手に何言ってんだ?
「ねぇ、答えてよ。私の事どう思ってる?」
哀れすぎる…5歳児相手に承認欲求を満たそうとしてやがる…なんて悲しくてヤバい奴なんだ…誰がここまでこいつを追い込んだんだよ…はい僕ですね。くそ、似非の女郎なんて聞き間違いしなきゃこんな事にはならなかったのに!!でもこんな美少女ロリエルフがイメクラ嬢だと思ったら、俺の前世が興奮せずにはいられませんよね!?まあいい、ここは大人の余裕で責任を取ってやろう。子どものままごとには寛容な気持ちで付き合ってあげなきゃな。
「女王様なんですよね?女王様という事は王様もいるんですよね?ということは結婚してるって事ですよね。おかしくないですか?」
「女王様じゃないわ。上王様よ。王様より上の王様なの。私が生きてる限りずっとね。つまりこの国が滅ぶか私が死ぬまで、私が一番偉いのよ!!」
なるほど。つまり似非じゃなくて永世の上王って事か?なんて紛らわしい!!
「そうなんですね。ところで口調に上王様の威厳がありませんけど良いんですか?」
「!!…失礼。あまりに頭にキすぎて、ついつい我を忘れてしまったようじゃ。改めて自己紹介するとしよう。儂が千年王国エタニアルの永世上王、エリン・リエルじゃ。して、お主の名前は何と言うのじゃ?」
幼女がふんぞり返って偉そうにしてる姿、凄くほっこりするね!まあここまでの醜態を晒した以上、もはや威厳もへったくれもないが。もう俺にはポンコツのじゃロリエルフにしか見えん。千年生きてて精神年齢が子供並みって凄い事だね!それはともかく…
「千年王国エタニアルにて、古今東西比類なき他を冠絶するその器量、永遠の憧憬、永世上王エリン・リエル様に拝謁叶った事、恐悦至極に存じます。僕はアレス・イストネルと言います!よろしくお願いしまーす!!」
頼んだぞアレス!この場のやらかしの後始末、のじゃロリエルフのあらゆるヘイトはお前に任せるぜ!!
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