第31話 似非女郎

「よく来たカティス。ゆっくりしていくといい、と言いたい所だが、そこのローブの御仁はお前の知り合いか?」


 なんか普段よりキリッとしてる気がするな。あれか。仕事ができる父親アピールでもしているつもりなのだろうか。というかこのお客様エルフが俺の知り合いかって俺の知り合いなわけねえだろ。家からろくに出た事ないんだぞ?


「?父上のお知り合いですよね?」


「いや、違うが」


 ええ…じゃあ誰なのコイツ。


「え、書庫に我が物顔で一人でやって来てましたけど、違うんですか?」


 いやまじで誰だよお前。穿った目で不審者エルフを見るが、動じた様子が微塵もない。もしかして母親絡みか?いやでもこんな不審者を家に招くなら流石に父親に報告してるだろう。というか父親が知らない不審者が家の中を闊歩してるとか普通にやらかし案件では?どんだけザル警備なんだよ。こんなにザルなら警備の意味なんてねえだろ。


「少し会わんかっただけで儂の事を忘れるとは…存外薄情な奴じゃな」


 む、不審者エルフは父親の事知ってる感じだが。おや、声を聞いた父親が心なしか動揺してるように見えるぞ。


「ほれ、これでどうじゃ。儂の顔も忘れたか?」


 不審者エルフがフードを外す。晒された顔を見た父親が驚愕の表情を浮かべる。この反応、知ってるっぽいな。


「ど、どうしてこのような所に…」


「お前の息子の事を旅の途中で小耳に挟んでの。家に戻るついでに寄ってみる事にしたんじゃよ。迷惑だったかの?」


「…いえ、決してそういうわけでは…」


 父親がめっちゃ動揺してるんだが。王城での俺のやらかしの時でさえこんなに動揺してなかった気がするんだがな。この二人の関係性が気になる。のじゃロリエルフの方が上っぽい感じだが、弱みでも握られてんのか?なら俺もその弱みに付け込んで上手い事やるべきではなかろうか。


「父上、この不審者は父上の知り合いという事でいいんでしょうか?であるなら紹介して貰っても?」


 これで素直に俺に紹介するようなら真っ当な関係だろうが、渋る様なら…


「この方は…永世の上王、エリン・リエル様だ」


 なん…だと……似非の女郎!?つまりこいつは…こののじゃロリエルフは…まさかまさかのイメクラ嬢って事かァァアアアアッッッ!!??脳筋暴力しか取り柄がないのがナーロッパ系異世界だと見下してたが、とんでもない思い違いだったようだな!!


 こんな顔面偏差値200オーバーのめちゃかわのじゃロリエルフが風俗嬢であるだけでも奇跡なのに、まさかの出張女王様プレイだと!!?おいおい…一体幾ら払えばそんな冒涜的とも言える倒錯プレイをして貰えるんだよ…しかもノリノリで。バブみでオギャる赤ちゃんプレイよりも圧倒的犯罪臭がするんだが。


 そして恐ろしいのは何よりもこの父親だ。妻一筋のイケメン愛妻家みたいな面しといて、裏では家族を巻き込んで実家に嬢を連れ込んでHENTAIプレイに興じるとは…なんて恐ろしい精神構造してやがる!!お前の精神オリハルコンか!?しかも母親と真逆のタイプを贔屓してロリ女王様倒錯プレイさせるとは…爽やかイケメン爆発しろと思ってたが、とんでもないセックスモンスターだったようだな。人は見かけによらないと言うが、これは流石に見抜ける奴いねえよ。


 つうかのじゃロリエルフ嬢を家に連れ込んでるって事は、これ母親も知ってるって事だよな?まさかの妻公認!?しかもNTR属性!?あの母親…良妻賢母の鑑みたいな見た目してるくせに、昼は貞淑な人妻、夜はみだらな娼婦ってか!?どこのAVだよ!!


 情報量が多すぎて頭がパンクしそうだぜ……貴族ってやつを甘く見すぎてたな…ざまぁと俺Tueeeの踏み台くらいにしか認識してなかったが、奴らのHENTAI性は俺の想像をはるかに超えていた。なんせうちの両親ですらこれなんだ。他の貴族がどこまで狂ってるのか想像もつかん。これは今後の方針変更も視野に入れなければ…もう後先考えずにこの家から出て行くべきか?こんな変態どもの巣窟にマルシェラと朱璃ちゃんを置いておくわけにはいかない。何時何時このセックスモンスターがマルシェラに目をつけるのか気が気じゃねえよ。


 は!?もしかして俺の知らない所で既に毒牙に!?…いや、大丈夫だ。こいつは家で公然と女王様プレイを要求するような変態。そういった関係を持ったなら、まず間違いなく俺に匂わせをしてくるだろう。今の所はまだ大丈夫なはず。とはいえ油断は禁物。人の欲望に際限などないのだから。


 頼むぞ俺の5年間…せめてこのHENTAI侯爵からマルシェラと朱璃を守れるだけの力を与えてくれ!!NTRなんて俺はするのもされるのも御免だからな!!

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