第25話 新しい生活

 劇的ビフォーアフターによって、レイプ目ロリ獣っ娘がぷにぷにロリ獣っ娘になって以降、俺の日々の生活に変化が訪れる事になった。まず朝にちゃんと起きるようになった。今までは二度寝とかしてたんだが、朝起きたら朱璃ちゃんが俺が起きるまで顔をじっと覗き込んでるので、ベッドで過ごすという事が出来なくなったのである。


 初日は内心めっちゃビックリしたね。知らない獣っ娘が寝てる俺の顔を覗き込んでるんだからそりゃ驚くよね。そもそも1日で変わりすぎなんだよな。ボサボサゴワゴワで手入れもろくにしてなかっただろう髪の毛が腰まで届く艶々ヘアーになってた上に、尻尾も生気を注入されたかのようにモフモフになってたからな。色褪せてた毛並みも鮮やかな濃い赤色、紅色とでもいうべきものに変化してたし。何よりレイプ目じゃなくなってたからな…最早別人といっても過言ではないだろう。


 とはいえ、過度な恐怖を体験した結果、一夜でふさふさな髪の毛が抜け落ちたり白髪になったりする事もあるらしいからな。多幸感によってその逆の現象が起きる事もあるのかもしれない。


 ちなみにそんな朱璃ちゃんの後ろにはマルシェラも一緒である。なんでもずっと一緒にいてくれると言ったんだから、ずっと一緒にいてくれないとダメとかなんとか。なんということでしょう、メンヘラロリ獣っ娘が誕生してしまったのだ。とはいえ今まで周りの獣人や人からぞんざいな扱いをされてただろう事を考えると可愛いものだろう。朱璃ちゃんはまだ5歳。5歳なんてまだまだ親に甘えたがりの甘えん坊だろうし、俺やマルシェラの後ろを何処でもついてくる姿はカルガモの赤ちゃんを彷彿させて非常に可愛らしい。


 朱璃ちゃんにとっては現状、俺とマルシェラくらいしか頼れる人がいないからこその行動だろうし、時が経てば徐々に改善されるはずだ。であるならば今すぐどうこうするような問題でもない。ようやく甘えられる相手が見つかったのなら、これまで酷い扱いをされてきた分、思う存分甘やかされるべきだろう。ぶっちゃけ可愛い獣っ娘にならどれだけ依存されようと俺は喜んで受け入れる覚悟がある!!ただトイレは流石に勘弁して欲しい所だが。扉を開けたまま用を足すのは流石にハードル高すぎだろう。



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 大きく変わった事はもう一つある。確かジェリドだったか?まあ男の名前なんてどうでもいい。そいつがアレスの従者として家に住むようになった事だ。王都から帰ったらアレスに従者として付けると父親が言ってたし、俺にとっては関係ない事だからと放置するつもりだったが、このガキ、あろうことかマルシェラと朱璃ちゃんの尻尾を触ろうとしやがったのである。俺ですらまだ触った事がないというのに、とんでもないガキである。いくら5歳のガキとはいえ、やって良い事と悪い事がある。


 こういうのは最初が肝心なので、俺はこのガキを殴り倒してマウントを取って殴り続けた。アレスの従者、それ即ち未来の勇者、次期侯爵の腹心である。そんな奴が好き放題やらかすような性格では皆が迷惑するだろう。矯正するなら早い方が良い。人のものに手を出したらどうなるか、手を出してはならないものに手を出したらどうなるか、少し早めの体験教育だ。一応手加減はしたので大した怪我はさせていない。魔弾も使ってないしな。お陰で俺の家中での評価がグンと下がった気がするが、それこそどうでも良い事だな。



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 アレスと俺に従者が付いたという事で、本格的な教育の開始である。とはいえ俺は今まで早々に絵本が読める&足し算引き算が出来ますアピールをする事で勉強を放棄していた。そんな事をするくらいなら庭の片隅で魔弾の練習をしていた方が余程マシだからな。とはいえ今後はそういう訳にもいかなくなった。


 そう、カルガモ朱璃ちゃんである。似非幼児と違って朱璃ちゃんは本物の5歳児である。読み書き算数その他もろもろ、この子には生きていく上で知識が必要だ。俺はどうとでもなるから今更勉強なんてする気はサラサラないが、朱璃ちゃんは違う。勉強しない俺に付き合わせた結果、俺とマルシェラに追従するだけのパッパラパーにするわけにはいかないのだ。朱璃ちゃんだけアレスと一緒に勉強すればいい話ではあるのだが、カルガモ朱璃ちゃんは今の所ずっと一緒にいないとメンヘラ化するので単独行動はできない。つまり俺も勉強の場にいる必要があるのだ。


 魔法の勉強ならまだやる気もでるんだが、教えてくれる人が決まらないらしい。まあそりゃそうだろうな。いうなればそいつがアレスの師匠になるって事だからな。半端な奴に教えさせて才能が潰れたら取り返しがつかないし、優秀でもどこぞの勢力の紐付きなんて雇った日には、思想誘導された勇者様の誕生だからな。慎重にもなるだろう。


 とはいえ、それはアレスに関しての話であって、俺や朱璃ちゃんには関係ない。特に朱璃ちゃんは正に可能性の獣だろう。俺もそれなりに朱璃ちゃんについて考察したのだ。なぜ朱璃ちゃんが追放されたのか?獣人にとっての裏切者と見た目が似てるからというだけではないだろう。それなら生まれて毛並みと目の色が分かった時点でどうこうしてる筈である。愛情云々は置いておくとして、5歳になるまで一応衣食住の面倒は見ていた以上、その時点で朱璃ちゃんをどうこうする意思はなかったように思える。


 そう、5歳だ。5歳と聞いて思いつくのは糞神と狂会連中どもの腐れイベント、祝福の儀である。おそらくというか間違いなく、祝福の儀の結果が朱璃ちゃんが捨てられた事と関係してるのは間違いない。朱璃ちゃん曰く神霊石に触ったら赤く光ったらしいが。そんでもって父親がナイフで切りかかってきて、痛くて泣いて気付いたら建物が燃えてたらしい。そして速攻追放と。


 祝福の儀からの獣人どもの行動が基地外すぎて全く笑えないんだが、これはつまり、朱璃ちゃんの祝福が獣人の裏切者と同じだったからと考えれば納得は出来る。

5歳まで一応面倒をみてたのは、見た目が似てるだけで祝福が違う可能性があったから。祝福が違えば見た目が似てるだけで裏切者とは違うと言い張ることが出来る。周りの奴らも一応納得はするだろう。今まで散々な扱いをしていてどの面下げて関係修復するつもりだったのかは知らないが、一応両親なりに朱璃ちゃんに対する愛情はあったのかもしれない。同調圧力やら外聞やらで、朱璃ちゃんに愛情を持って接する事が出来なかったのかもしれない。


 だが祝福の儀の結果が裏切者と同じだったらどうなるか?アレスが昔いた勇者と同じ祝福というだけで、勇者の再来だのなんだの騒がれたのだ。見た目が同じで祝福すら一緒ならどう捉えられるのか想像するに難くないだろう。俺からしたら馬鹿じゃねえので済ますような事だが、土人にとってはそうじゃない。裏切者が蘇っただの復活しただの、今までの恨みで殺されるだの復讐されるだの考えても不思議じゃないかもしれない。


 ムンディア大陸の獣人連中の行動は今は置いておくとして、重要なのは朱璃ちゃんの祝福が獣人の裏切者と忌み嫌われてる奴とおそらく同じという事だ。なんと素晴らしい!何百年経った今でもそこまで忌み嫌われてるんだぞ?さぞかし凄い祝福に違いない!是非とも朱璃ちゃんにはその祝福を使いこなして貰いたい。将来復讐するかどうかはともかく、強くなっておくに越した事はない。力=選択肢だからな。力がなければ何も出来ないが、力さえあれば何でも出来るのが異世界ナーロッパの良い所だ。


 おそらく朱璃ちゃんの祝福によって使える魔法は、アレスのようにその辺の奴らが気軽に教えたり使えるような物じゃないはず。そんな気軽に使える魔法がここまで忌み嫌われるわけがない。教えられる奴がいないなら、独力でその魔法を磨く必要があるわけだが、幸いな事に使える魔法のヒント自体は山ほどある。人魔大戦関連の書物を漁れば問題ないからな。まずは先達の模倣、そしていずれはオリジナルを生み出して先達を超えるのだ。


 とはいえ本人にやる気がなければ意味がない。朱璃ちゃんにとっては忌むべき祝福と言ってもいいわけだし、無理強いする気もない。別に戦えなくてももふもふハーレム要員としては全く問題ないわけだし。マルシェラだって全く戦えないしな。とりあえずどうするか本人に確認しよう。



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「じゅうしゃは、ごしゅさまとずっといっしょにいて守るひとのことだって、マルねえさまがいってました。わたしはごしゅさまとずっといっしょにいます。ずっと守ります」


 その意気やよし!俺が言ったからとりあえずやってみるか的な感じもするが、嫌なら使わなきゃいいだけだしな。使わないと使えないは天地の差があるからな。さっそく情報収集だ!!書庫で人魔大戦関連の本を片っ端から読み漁るぞ!!

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