第19話 終わりよければ全てよし!

 ああああああああ!!楽しいよおおおおおおおおお!!一方的に罵詈雑言を投げつけるのってこんなに楽しいのか!!自分で体験して初めて実感出来たぜ!!これが大人なら即座に処罰されただろうが、5歳の子どもという一種の治外法権的立場のお陰でやりたい放題だぜ!これは人生プラン変更も視野に入れる必要があるか?さっさと出奔するつもりだったが、周りの貴族相手に喧嘩売り放題なこの環境を自ら捨てるなんてとんでもない!!


 祝福の儀なんていう才能カースト性能が罷り通ってるんだ、どうせ才能ある奴だけが集まる魔法学園とかそういうのあるんだろ?ならそこに入って全方位に喧嘩売って楽しまなきゃ損だぜ!!その為にはこの無能無才というレッテルを有効利用せねばなるまい。雑魚だ何だと俺に絡んでくる連中をボコボコにして地獄を見せ、盛大に周囲を煽って焚きつける。ゴミが粗大ゴミを呼び、粗大ゴミが産業廃棄物を呼び寄せるのだ。ゴミの永久機関。煽れてボコれるとか貴族階級最高か?殺さなきゃキャッチ&リリースも可能となれば、何時までだって楽しめる。


 そんなエンジョイ学園ライフを楽しむ為には、今のこの状況をどうにか収束させる必要がある訳か。煽るついでに試してみたが魔法は問題なく使えるようだし、転生名物チュートリアル決闘でもしようかと思ってたんだが、口と態度だけ大きい糞雑魚かませキャラとして学園デビューする為にはここで決闘するわけにはいかないだろう。


 本来なら無才無能な糞雑魚キャラとしてアレスの障害になるだけの存在だったカティスくんだが、この俺がカティスとして転生した以上、そんなルートはもはや存在しない!アレスまんせーな王道ヒロイックファンタジーをカティスくん俺Tueee成り上がりものに改竄してくれるわ!!


 しかしここから軌道修正する方法が全然思いつかねー。散々煽り散らかしちゃったからな。無礼講なので場を和ませる小粋なジョークを言ってみましたと言っても許してくれない気がする。さてどうするか…とりあえず悪いのは全部この場にいる奴らのせいにするのは確定なんだが、どうやったら穏便に済ませられるのか…もう貴様らなんぞに付き合ってられんとでも言って会場から出て有耶無耶にしちまうか?この場さえ凌げば後はどうにでもなるっしょ。


 実行に移そうとした時、何故か父親と母親が俺に頭を下げて謝って来た。別に謝られるような事はされてないんだが?むしろ悪魔に取り憑かれたとか言って俺を手ずからぶっ殺しに掛かって来てもおかしくないんだが。俺の言動にドン引きしてたし、この状況で罰するのではなく謝罪とか、流石に俺に対して過保護と言っても限度があるのでは?


 …そうか。これがもしかして、原作付き異世界あるあるの世界の修正力ってやつか!?無能悪役かませ貴族のカティスくんがその役割を全うするのは、おそらくどこぞの魔法学園に入ってからに違いない!つまりそこで噛ませ犬として人生を全うするまで、カティスくんを生かそうとする力が働いているのではないだろうか。でなければこんな大勢の貴族や国王をボロクソに貶しまくった俺に謝るなんてするわけがない!


 それを証明するかのように、国王すら俺に謝罪して来た。間違いない!今のカティスくんは無敵モードだ!何をやっても許される気がする!とはいえ世界の修正力がどこまで俺のやらかしをカバーしてくれるかは不明だから過剰な期待はしない方が良いだろう。そもそもその修正力を越えなければ俺が噛ませ犬として人生を全うする事になってしまうのだ。俺はそんな人生は認めない。打破する事が確定している現象に過度な期待は禁物だろう。


 今はまだ好き放題動く時期ではない。それよりも両親はおろか国王まで何故か謝罪して来た今がチャンス、乗るしかない、このビッグウェーブに!!謝罪を受け入れてこのままソフトランディングだ!!俺は謝罪しないけどな!だって悪いのこいつらだし。とはいえ、穏便に済ます為にこいつらに配慮してやる必要があるな。俺からも歩み寄りが必要か。とりあえず貴族としての謝罪じゃなくて一個人としての謝罪扱いにしとけば最低限の面子が保たれる気がするし、今回はそれで手打ちにしてやろう。


 ついカッとなってやってしまったが、よくよく考えればブチ切れた貴族連中共と殺し合いをする未来があったかもしれない。そう考えるとちょっと調子に乗りすぎたかもしれないな。魔法も、牛さんが弾け飛んだ魔弾しか実戦で使った事なかったわけだし。人に効くかどうか未知数だったわけだからな。もう少し穏便に事を運べば良かった気がしないでもない。反省しないとな。次はもっと上手くやるぜ!


 他の貴族たちもこのビッグウェーブに乗る事にしたのか、俺に謝罪をしてくる。国王が頭を下げた以上、自分は悪くないと思ってもそうせざるをえないんだろう。貴族といった所で所詮は中間管理職、自分より立場が上の奴には頭が上がらない。そうこうしている内に残った貴族は陰険糞野郎だけになってしまった。まさかこんな展開になるとは思わなかったんだろうな。俺も思わなかったよ。一人だけ敵対的な発言しちゃったからな。頭下げようにも下げれないよな。まさか国王含めた全貴族が梯子外してくるとは思わないよな。普通ならお前の取った行動が正しいんだろうが、世界の修正力を甘く見たな!世界は俺の味方だぜ!!


 ま、これが悪役噛ませ貴族として主人公の踏み台になる予定の男の実力って訳よ。貴様みたいな原作に出て来るかどうかも分からない名無しの悪役とは目糞鼻糞とはいえ格が違うってわけだな。ふふん。貴様は誰だと聞かれたら答えてやるのが世の情けか。良いだろう、教えてやるぜ!ひれ伏せ愚民ども!俺が、俺こそが転生者だ!!


 ……あれ?反応ないな。なんだと!?まさか!?道理で!!みたいな反応期待してたんだが。もしかして、過去に転生者がいたわけではない?ふーむ、これはちょっとやっちゃいましたね。これじゃただの痛い子じゃないですか。もの凄く気まずいな…

とりあえず逃げるか。お前らはこのまま楽しく誕生パーティー続けてろよ。俺は空気が読めるからな。邪魔者は退散するぜ。一人で帰るなんて言ったら親も一緒に来そうだし、控室でパーティーが終わるのを大人しく待ってる事にするぜ!


 オラどけ!衛兵ども!糞貴族どもの顔色窺うしか能がない無能連中が俺の道を塞いでるんじゃねえ!衝撃の魔弾、翠の流星雨!!


 ふはははは!扉もろとも吹っ飛ばしてやったぜ!いける、いけるぞ!!これなら戦闘になっても何とかなってたな!!淀んだ空気を入れ替える為に換気してやったんだから感謝しろよ!よし、弁償しろなんて言われたら困るしさっさとトンズラしよう!!

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