第16話 鬱憤を晴らそう!

 ありえねぇ…まじでありえねぇ。なんなんだこの糞誕生会は。一体俺が何のために王都くんだりまで来たと思ってんだ!?全てはロイヤル獣っ娘に会うため、その一心で今日まで生きてきたというのに。その結果がこれか?老害共の不躾な視線に晒されながら、ガキどもの王子王女へのくだらんご機嫌伺いに混ざれとでも?


 ありえねぇ…本来ならあまりの理不尽さにキレ散らかして魔弾をハッピートリガーしている所だが、ギリギリ踏み止まったのはレイプ目ロリ獣っ娘をゲット出来ていたからだ。あれがなければ、今頃この誕生会は貴族共の汚い花火会場と化していただろう。クソが…人の純情弄びやがって…とてもじゃないが許せない。せめてこの誕生会を滅茶苦茶にしてやらないと気が済まない。


 そもそもこの国の屑王が王命なんぞを使って俺を呼び出したのが発端だ。わざわざ出向いてやった俺に対して、屑王は最大限に配慮する義務がある。なのになんだこれは?ロイヤル獣っ娘で俺を歓迎するのならともかく、おっさんとおばさんの不躾で好奇な視線でお出迎えだと?これがこの国流の歓待と言うのなら…それに見合った返礼をしてやろうじゃねえか。


 俺が出席するに当たって、何があろうと責任は全て国王が取るという言質は父親が取ってる筈だからな。取ってなくてもそれは父親の怠慢であって俺の責任ではない。俺が出席している以上、最早何が起ころうとそれは国王の責任なのだ。さて、この恨み、どうやって晴らしてくれようか…そうだな、丁度良い奴がいたじゃねえか。父親と同じ侯爵で、ガキと一緒に俺を見下した目で見てくれやがった糞野郎が。


 あの陰険糞野郎は何処にいやがる?…お、父親と一緒に何か話してるな。丁度いい、最初の犠牲者はあの陰険糞野郎だ。



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 ガキどものお遊戯会に混ざらずに父親の元へと向かう俺に話し声が聞こえてくる。難癖付けるタイミングを計るべく、近くの料理を食べながら様子を伺う。こういう時子どもは背が低いから目立たなくて便利だな。料理も味付けがちょっと濃いが美味しいし。ガキどもの方に用意されてた料理は甘ったるいお菓子がメインで、正直食べる気あんましないんだよな。


 ふむ…陰険野郎が父親にウザ絡みしてるっぽいな。王子と王女に風竜の竜玉を加工したアクセサリーを自分はプレゼントしたとか自慢してるな。ほう、竜ってやっぱいるんだな。将来出会う時が楽しみだぜ。


 それを聞いた周りの貴族共はおお…とか感心の声を上げている。こいつらちゃっかり聞き耳だけは立ててやがんのな。それに対して父親は、それは凄いと素直に感心。それを見た陰険野郎はチッと顔を歪めるも、一緒に居る母親が素敵な誕生日プレゼントねと感心すれば、良ければシアにもプレゼントしますよと気障ったらしく声を掛けている。


 うわキッショ…人妻に、夫が傍にいるのに愛称呼びとか、あいつ何様のつもりだ?もしかしなくてもあれか?あの陰険野郎、BSSってやつか?母親に懸想して相手にされず、モノにした父親に嫉妬と劣等感抱いてるとか?あり得るな…そうであればさぞや俺の存在は酒のつまみになった事だろう。なにせ無能無才だからな。とはいえそれは俺だけが生まれていた場合だ。アレスがいるんだから俺がどれだけ無能だろうと意味ないと思うんだが。


 なんか陰険野郎が哀れに思えてきたな…意中の人には相手にされず、中の良さを見せつけられる。息子の事を持ち出した所でアレスを持ち出されたら何も言い返せないだろう。あの手の輩はマウント取れるならトコトン取ってくるだろうからな。アレスより息子の才能があれば嬉々として吹聴するに違いない。


 可哀想に…奴にあるのは侯爵家という権力だけなのだ。加えてうちの母親にちょっかい掛けてるという事は夫婦仲も冷え切ってるに違いない。この場に連れてきてないっぽいしな。


 権力だけが取り柄の哀れなゴミの末路があれか…俺も反面教師として見習わなければいけないな。マルシェラに愛想を尽かされないように誠心誠意愛情込めてもふもふしていこう。これからは毎日感謝のもふもふ1万回だ!!その為にもこの陰険糞侯爵を使って鬱憤晴らしてスッキリした気持ちで家に帰らないとな!!

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