第14話 従者を選ぼう!

 いやぁ、酷い事件でしたね。牛が形を残さず弾けて血の雨が降ったお陰で厳戒体制ですわ。父親や護衛の人たちが真剣に周囲を警戒したりしてたけど、どんなに探しても原因が見つかるわけないよね。だって元凶は馬車の中にいるからね。それにしてもまさか牛が弾けるとは…とてもじゃないが人には使えないぞこれは。試した魔弾は威力重視なわけじゃないんだが…これは他の魔弾もおいそれと使えないのでは?


 せっかくノリノリで開発したのに!こんなのあんまりだよ!!いや、待てよ?発想の逆転だ。直撃させなければ大丈夫なのでは?そうだよ。牛が弾け飛んだのは直撃したからだよ。カスるくらいなら問題ないでしょ。それに所詮はD級魔物。魔法使える人なら余裕で防げるっしょ!!なんせ俺と違って神に祝福されてんだからな!!


 牛には感謝しなくちゃな…もし最初に使ったのが人相手なら、凄惨なスプラッタが展開されてSAN値直葬トラウマものだったぜ。とはいえ成果は上々だ。これなら俺に難癖付けて来た奴らに対するカウンターとして十分機能するだろう。



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 牛さんの犠牲以降、目立ったイベントもなく無事王都に到着した。ちなみに王都に長居をする気は全くない為、誕生会は明後日であり、明日は従者探しの弾丸旅行である。ロイヤル獣っ娘との運命の出会いまで後二日。その前に従者選びをしなければいけないわけだが、従者とかいらねえんだよなぁ。そんなもんいてどうすんだって話なんだわ。同年齢で一緒に育てる事で信頼の置ける右腕的な存在にって事なんだろうが王都で選ぶ従者は狂会の奴隷で間諜だぞ?そんな奴を側に置くとかいつ寝首を掻かれるか分かんねえよ。やっぱ難癖付けて従者問題は先送りにするしかないな。



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 翌日、父親と一緒に奴隷店に向かう。揉み手をしながら胡散臭そうなおっさんがわざわざ出迎えて豪華な部屋に通された。流石は侯爵、格が違うぜ。だが父親と一緒に居る俺を見て一瞬眉をひそめたのを俺は見逃さなかったからな!この屑奴隷商め、アレスが来ると思ってやがったな?狂会としてもアレスは是非とも手駒にしたいだろうからな。従者に可愛い女の子とか紹介して、ハニトラ仕掛けて骨抜きにでもする算段だったんだろうが、そうは問屋が卸さねえぜ!貴様らの魂胆なんざ、転生者たる俺に掛かれば丸っとお見通しよ!!紹介される奴ら全員難癖付けて追い返してやらぁ!!


 顔が悪い、目つきが悪い、性格が悪そう、性根が腐ってそう、品がない、屑奴隷商が紹介する従者候補を難癖付けて切って捨てていく。ガキ相手に難癖付けるのは心が痛まないでもないが、紹介されるガキどもも、熱意とかやる気とかそういったものが感じられない。仮にも貴族の従者になる奴がそんな態度じゃ駄目だろう。そんなやる気のない態度で採用されるのはコンビニバイトくらいだぜ。


 屑奴隷商が部屋に呼んだ奴ら全員に不採用通知を突き付けたが…俺は知ってんだよね。こういう屑はとっておきを隠してる事を。俺には相応しくないと紹介してない事を。おら、隠してんだろ?アレスに紹介するつもりでいた取って置きの上玉をよ!!隠してないでさっさと出しやがれ!隣にいるのが誰か分かってんだろうな?イストネル侯爵だぞ!てめぇの首なんざ気分次第で胴体と泣き別れって理解してんだろうな!


 こんな子どもに内心見透かされていた事に驚愕した屑奴隷商の顔は真っ青だ。ざまぁねえぜ。ほら、さっさと連れて来いや!貴様の隠し玉を俺が尊厳破壊レベルでボロクソに貶して再起不能にしてやるからよ!!


 観念した屑奴隷商が連れて来たのは、獣人の女の子だった。なんて事だ…耳も尻尾も手入れしてないのかボロボロだ。飯も満足に食わせてもらってないのか痩せこけている。ロリ獣っ娘にこんな仕打ちをするとは断じて許せん。が…そんな事はどうでもいいほどに、俺は連れて来られたロリ獣っ娘から視線を外すことが出来なかった。


 そう。ロリ獣っ娘の目である。その目が俺を惹きつけて視線を逸らす事を許さない。何故なら…レイプ目だぁぁああああ!!おいまじか!!まさかこんな所でお目に掛かれるとは思わなかったぜ!!ジト目ロリっ娘と双璧をなすレイプ目ロリっ娘!!まさに激レア!人類の宝!!この屑奴隷商、とんでもない隠し玉ぶっこんできやがった!!ジト目獣っ娘はともかく、レイプ目獣っ娘は諦めてたんだよな。獣っ娘相手に酷い事出来るわけないし、探して見つかるようなもんじゃないし。


 何より悲劇によってレイプ目になる獣っ娘はいないに越した事はないからな。だがそれはそれ、これはこれである。現実として目の前に存在している以上、絶対に確保したい。だが屑奴隷商に確認しなくてはいけないことがある。そう、なぜこのロリ獣っ娘がレイプ目になってしまっているかをだ。性的虐待などしていようものなら、今すぐこいつとこの建物の奴らは、みんなまとめてあの世に御招待である。可哀想なのは抜けないのは世界の常識であるからして。おら!なんでこのロリ獣っ娘がレイプ目してるか白状しろや!


 なになに?このロリ獣っ娘はこの目のせいで親から捨てられただと?まじかよ…つまりこのロリ娘っ娘は最初からレイプ目だったということか!?なんてこった…逸材だ!奇跡のロリ獣っ娘だ!つまりこのロリ獣っ娘は幸せになってもずっとレイプ目という事じゃないか!!決めた!このロリ獣っ娘こそが俺の従者だ!!異論は認めねえ!!


 驚愕に目を見開く屑奴隷商と父親。このロリ獣っ娘以上に俺に相応しい従者は存在しない。このロリ獣っ娘が駄目なら俺は従者などいらん。このロリ獣っ娘は俺のものだ!!さあ幾らだ。さっさとこのロリ獣っ娘の値段を言え!は?無料でいいだと?ふざけんな!!てめぇ一体何を考えてやがる?タダより高いものはないって俺は知ってるんだぜ?こいつは間違いなく良からぬことを考えてるな。


 この場で一番高い奴はいくらするんだ?魔銀貨1枚?ふーん、円じゃないからいくらか分かんねえな…まあいいや、10倍はやりすぎかな?3倍払おうじゃないか!俺じゃなくて父親がな!!後で難癖付けられたらたまったもんじゃねえからな。あ、父上、幾らか分からないですけど、代金は出世払いでお願いしますね。大丈夫、俺はいずれ世界取るんでね。投資と思ってお願いしまーす!!このロリ獣っ娘は俺のものなんで。何があろうと手放す気はないんでね。


 は?従者契約?なんだそれ、奴隷に首輪付ける奴隷契約みたいなもんか?そんなもんいらねえよ。このロリ獣っ娘に必要なのはそんなものじゃなくて毛並みの手入れだよ。


 もう連れて帰っても良いな?こっちに居ても毛並みの手入れはどうしようもねえからな。一足早く家に送ってもらってマルシェラに毛並みの手入れをして貰うか。そうすればこのボロボロの毛並みも少しはマシになるだろう。


 ロイヤル獣っ娘に出会う前に思わぬ掘り出し物に会えたな。天は間違いなく俺に味方している!これは幸先いいんじゃないか?期待してるぜ誕生会!!

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