第13話 魔物を倒そう!

 王都までの道のりはすこぶる順調だった。仮にも侯爵家一行なのだから順調でないと困るのだが。王都までは竜車で片道一週間程度らしい。ちなみに竜車とは竜とは名ばかりの駄竜とかむごい名前で呼ばれてるトカゲが引いてる馬車みたいなものである。この駄竜君はなかなか高性能らしく、雑魚魔物は駄竜にビビッて近寄ってこないらしい。代わりに盗賊は駄竜持ってる金持ちだヒャッハーって事で近寄って来るらしい。あちらを立てればこちらが立たず、世知辛い世の中だぜ。


 ちなみに異世界馬車とか揺れが酷くてお尻がやばいことになるやつだろと思ったがそんな事はなかった。つまり、この馬車にはベアリングとかサスペンションとかそういった物が組み込まれている可能性があるのだ。


 それが示す一つの事実。そう…この世界には、俺より先に来た転生者が居るのではという事。なんとなくそうじゃないかなとは思ってたんだよな。だってこの世界のご飯美味しいもん。前世となんら遜色ないもん。庶民舌だからそう思うだけかもしれないけど。


 つまり俺より前に来た奴が、この世界で知識チートを使って大金を稼いでるって事になる。知識チートは早い者勝ち、二匹目のドジョウなど存在しない。なんということだ…ありがとう!!誰だか知らないがよくやってくれた!君のお陰で俺の異世界ライフは衣食住に関しては文句ないぜ!ついでに神様ぶっ殺してくれてたら最高だったんだけどな!!


 転生者の存在よりも、ゲームの世界だからその辺の設定が適当という可能性の方が高いとは思うが。オムライスとかおでんとか、お手軽簡単クッキングなRPGとかもあるしな。移動でお尻が痛くならずにご飯が美味しい。それで良いじゃないか。 



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 それにしても文化レベルが低い。馬車が通るような街道なのに石畳とかじゃないんだな。もっとこう、ひっきりなしに馬車とか行商人とか旅人とか行きかってる風景を思い浮かべてたんだが。一応街道として整備はされてるが、王都と侯爵領を繋ぐ街道

としてはお粗末すぎじゃね?あれ?もしかしてイストネルって辺境なの?片道一週間らしいからそうなのかもしれないな。遠くにはチラホラ動物っぽいのが見えるし、あれが魔物なのか?遠いから良く分からん。街道近辺に魔物がいるとすれば、この世界って割と殺伐としてるのかもしれん。


 サファリパークよろしく、遠目に魔物っぽい奴らを眺めながら竜車で移動する。何も起こらなくて非常に暇である。血迷った魔物なり盗賊なり襲ってこないだろうか。街道から逸れれば入れ食いな気がするんだが。そんな不謹慎な事を考えていると、護衛の人が外から声を掛けて来る。どうやら魔物の群れがこっちにやってきているらしい。


 素晴らしい!そういうイベントを待ってんだよ俺は!!止まった竜車から魔物に対処すべく外に出る父親。それに続いてぶっ殺してやんぜと勢いよく竜車から出ようとしたら母親に襟を掴まれ止められた。くそ、流れで行けそうな気がしたんだが。しかしこの絶好の機会を逃すわけにはいかない。ようやく現れた実験対象なんだ。是非とも俺の魔弾が通用するかを試したい。


 馬車から出ない事を条件に、竜車の窓を開けて魔物との戦闘を見る事を承諾させ、アレスと一緒に戦闘を眺める。襲ってきてるっぽいのは…なんだあれ、ウシか?ふむ…ウサギとか犬みたいな魔物が襲ってきたと思ってたんだが。いきなりウシとは難易度が高いな。どう見ても雑魚じゃないだろ。母親曰く、あの魔物はD級魔物のレッドブル。普段は比較的温厚だが、ビックリすると群れ単位で暴走するらしい。ちなみに肉は食用として出回っていて俺も食べた事があるとの事。成程。ようは野生の牛みたいなもんか。だからこんな街道近くにいるのに放置されてんのか?俺にとっては好都合だが。


 よく見ると父親たちは殺すというよりは気絶させようとしてるのか?もしかしたら本当に放牧とかしてるのかもしれない。なんて傍迷惑な。まあ俺には関係ないが。

人生初の魔物狩りじゃああああ!!!とりあえず一匹!一匹だけだから!!なるべく父親や護衛の人から遠い牛に狙いを定め、指先を向ける。果たして俺の魔弾はこの世界の生物に通用するのだろうか?今後を占う大事な一発。せめてよろめく程度はして欲しい所だが…とりあえず父親の方を指さして母親とアレスの視線をそちらに誘導させる。その隙に…いくぜ!不可視の魔弾、白の流星!!


 パァンッッ!!!と盛大に牛が弾けた。原型など一切留めていない。ははっ、ミンチよりひでぇや…なんてこった、こいつは強力すぎる…

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