第12話 王都に行こう!

 ロイヤル獣っ娘との運命の出会いが待っている王都出発まで、やる事が早々になくなってしまった。魔弾の準備は完了だ。何時でもどこでもぶっ放してぶっ殺してやるぜ!生物相手にまだ試してないが、塀が貫通するなら人間くらい貫通するだろう。完全不意打ちなら十分効果はある筈だ。


 問題があるとすれば指で銃の形を作らなきゃ駄目な所だが、これは問題というよりは拘りだ。やはり魔弾である以上、銃から撃ちたい。ポケインして中空から放つ魔弾など、それは最早普通の魔法である。しかし銃など持っていない。つまり指で銃の形を作るしかないのだ。



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 父親が、王都から帰ってからになるが、俺に従者を付けるとか言い出した。名前はジェリドとかいう、祝福の儀で結構な祝福を授かったガキらしい。ふざけんじゃねえぞ!なんだその負け犬ストーカー野郎にピッタリの不吉な名前は!!しかもよりにもよって男だと!?ふざけんじゃねえ!俺に男を侍らす趣味なんかねえぞ!!そんなに従者にしたきゃアレスの従者にしろ!!


 ごねた結果、王都で俺の従者を探す事になった。従者なんていらないと言ったが駄目らしい。マルシェラいるじゃんと思ったが、マルシェラは従者じゃないらしい。ならなんでずっと俺の側にいるんだろうか。いつの間にか俺専属のメイドさんになっていたのか?もふもふ要員として得難い存在なので手放したりはしないが。


 父親が言うには、イストネル領には従者に出来そうな子どもが居ないらしい。ガキなんざ腐る程いるだろうにと思ったが、従者として十分な祝福を授かったのがジェリドとかいうガキだけとの事。


 この世界、親のいない子どもは基本的に狂会の孤児院で育てられる。つまり孤児で才能ある奴は片っ端から教会所属になるってことだ。これもまた狂会利権ってやつだな。祝福の儀を狂会が牛耳ってるからやりたい放題。5歳になった直後に屑石で鑑定して、有望なら自分たちのものにしてしまうわけだ。そして王都には狂会運営の将来有望な子どもを紹介する斡旋所みたいなものがあるらしい。つまりは合法的な奴隷売買を狂会の屑共はしているわけだな。


 自力で従者を見つけられなかった貴族は、教会の息のかかった才能あるガキを従者として抱え込まざるをえないということだ。そうやって貴族に貸しを作りつつ、従者になったガキを使って弱みとか握って、より深く権力の中枢に食い込んでいくんだろう。性質の悪い良くできたシステムだぜ。難癖付けて従者は選ばない方向で行くべきだな。


 しかしそうか、教会潰したら教会で育てられてる孤児共をどうするかの問題が発生するのか…まあいいか、改革には痛みを伴うってどっかの屑も言ってた気がするし。それに末端からじゃなくて総本山潰すつもりだし。直ちに影響は出ないだろうし、住む場所はあるわけだから末端の奴らが責任取ってどうにかするだろ。


 まあ最悪アレスに丸投げしてイストネルで確保だな。子どもは未来の得難い労働力としてイストネルの繁栄に寄与してくれるだろう。育つまでの養育費は…総本山潰す時に金目の物を片っ端から強奪するか。どうせろくでもない事して手に入れた金だろうからな。俺が性職者のお前らに代わって浄財として運用してやるからあの世で感謝してくれよな!



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 一日千秋の想いで待ち続け、ついに王都出発の日だ。行くのは父母俺アレス、そして護衛の連中との事。マルシェラは留守番だ。どうやら王都はイストネルほど獣人にとっての治安は良くないらしい。マジで意味わかんねー。人間なんざ獣耳と尻尾がない劣化獣人じゃねえか。あるものをなくす事は出来るが、ないものをつけたところでそれは本物ではなく偽物。人間相手に満たせるのは性欲だけだが、獣っ娘ならばもふもふ欲も性欲も満たせる。つまり獣っ娘こそが最強って事だ。それが分からないとはな…


 この世界の人間どもはほんと救えねえな。まあ5歳のガキに無能無才だの宣告するような世界だからな。民度が低すぎてどうしようもねえ。だがこの世界の人間どもが獣っ娘に興味がないのならそれは俺にとっての朗報だろう。その分俺が思う存分もふもふ出来るって事だからな!


 王都に行くと決まってから、マルシェラのもふもふアピールは苛烈になったが、ここまで我慢して来た以上、異世界の初もふもふは最高の初体験であるべきだと俺は思う。そう、つまりはロイヤル獣っ娘で初もふもふだ!!ロイヤルな環境で育ってきたんだからそれはもうロイヤルなもふもふに違いない。マルシェラのもふもふも相当なレベルだとは思うが、如何せんサンプルが少ない。だがロイヤルならあの毛並みよりも上の筈。とはいえマルシェラをもふもふしたいのも事実。苦渋の決断の末、マルシェラには帰って来てからもふもふすると約束し、俺は王都へと旅立ったのだった。

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