第11話 決めちゃいました!

 神殺しの魔法に関しては制限があれど、他の魔法に関してはこれといった不都合は発生していない。つまりはやりたい放題である。とはいえ現状問題がある。そう、実験場所がないのである。外出できない以上、大規模破壊魔法や対人殺傷魔法が使えるかの確認は出来ていない。流石に住んでる家や使用人を消すわけにはいかないしな。つまり小規模な魔法しか実験できないわけだ。


 マルシェラは私に魔法を使ってください!とふんすと意気込んでいたが、そんな事出来るわけがないだろう。万が一その銀の毛並みが乱れようものなら、俺は自分が許せなくなる。必然的に屋敷にある何かに向けて使う事になるのだが、物が壊れれば犯人探しが始まるだろう。アレスが次期当主に確定するまでは、俺が魔法を使える事は秘密にしておきたい。使える事がバレたら、アレスなら兄である俺が当主になるべきとか言い出しかねん。お前が当主になるんだよ!


 そんなわけで現状俺の使うべき攻撃魔法は、目立たず威力がありながら破壊規模が小さい事という制約が課せられる。そして俺はそんな攻撃手段を都合よく良く知っている。そう、銃である。


 魔法がある世界で銃なんてゴミだと思っているのは今も変わらないが、銃で魔法を撃つならまた別である。そして銃で魔法を撃つくらいなら魔法で直接撃てばいいわけで、つまりは魔弾こそが最適解となるのだ。基本属性は全て押さえたい所だが、付加価値も欲しい所だな。不可視、貫通、追尾等々…夢が広がるな!!魔弾という響きには独特の浪漫がある。例えるならそれは空を駆ける一筋の流れ星。


 目安としては良く分からんが塀を貫通すればとりあえず上出来だろう。なるべく貫通した穴も小さくなるようイメージして、散らして使えば大丈夫でしょ、バレないバレない。気晴らしに雲を消し飛ばしたりしつつ、今日も一日頑張るぞい!



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 我はこの空を支配せし王者、風竜の一角に名を連ねる者なり。今日も今日とて自身の縄張りを遥か高みより見下ろしている。我ら風竜より高く、速く飛べるものなど存在せず、故に風竜こそがこの世界において至高の存在。我を捉えられる者など同胞たる風竜以外に存在せず。大地がなければ生きていけぬ脆弱な者どもよ、精々我らの糧となるがよい―――な!?何が起こった!?か、体の制御が効かぬ!!なぜ、なぜ風竜たる我が落ちている?空において飛び方を忘れるなど、墜落するなど風竜たる身に起きるはずもない!!


 こ、これは…我の…我の翼がぁぁあああ!!!一体なぜ!?何が起こったというのだ!?我の翼が、風竜たらん為の翼が無くなっているではないか!!!一体何が起こったのだ?我を害そうとする意志など、気配など微塵も感じなかったというのに!


 このままでは…このままでは不味い!風竜でありながら墜落死するなど、そのような最期、とてもではないが許容出来ぬ!!我は風竜、空を支配せし王者!!その我が空から落ち、大地で潰れて最期を迎えるなどと…そんな事ありえるわkpぎゃ



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「お、おい見ろよハンス!こいつぁすげえ!風竜の死骸だ!!」


「マジかよヨハン!!これも日頃の行いってやつか!?体は潰れてグシャグシャだが…!!おい、見ろ!竜玉がある!しかも無傷だぞ!!」


「本当か!?やっとだ…やっと俺達にも運が回ってきやがった!これさえありゃ、まともな武器も防具も手に入る。いや、それどころか拠点だって!!」


「ああ…それに皆に美味い食い物をたらふく食わせてやれる!どこの誰だか知らねえが…感謝するぜ!」


「それにしても…風竜の素材に手を付けずにそのまま捨てる奴なんて一体どんな奴なんだろうな。これ俺達が貰っても大丈夫だよな?」


「大丈夫だろ。こいつの死骸にマーカーは付いてない。見つけたもん勝ち、つまりこいつは俺達のもんだぜ。縄張り争いか何かに負けたんだろうよ。良く見りゃこいつにゃ翼がねえ」


「風竜が墜落して死ぬなんて笑い話にもなりゃしねえ。だがそのお陰で俺達の未来は薔薇色だ!さっさとマーカー打ってギルドに報告だ。竜玉だけは回収忘れるなよ?」


「おうよ!ここからが俺たちの冒険の始まりだぜ!!」

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