第3話 ありきたりなメイドさん

 藪医者による魔力暴走虚偽事件から、俺の面倒を見てくれる人が変わった。正確には俺の面倒を見てくれていた人は弟を見る事になって、俺の面倒を見てくれる人が一人増えた。そしてそう、その増えた人と言うのが!!


「はいカティスさま、お口開けて下さいね。体温測りますよ~」


 銀毛狐耳の獣っ娘メイドさんである!!銀毛狐耳の獣っ娘メイドさんである!!大事な事なので2回言いました。そう、この世界には!獣人がいるのだ!!やっぱり転生は最高だぜ!!この世界に転生させてくれた存在に感謝してプラス3000点だ!!マイナス10万点付いてるから絶対殺すけどな。


 いや~、しかし最高だな獣っ娘メイドさん。あの藪医者には感謝しないとな。魔力暴走なんて誤診してくれたお陰でこの娘に出会えたわけだし。しかしあんな藪医者のいう事を信じてる親は大丈夫か?古い文献でとか、出所不明なソース持ち出すなんて詐欺師の常套手段だろ。医者なんて昔は詐欺師扱いされてたみたいだしな。貴族だから金だけはあるだろうから、詐欺には注意した方が良いと思うぞ。


 俺の頭越しにされていた会話を聞いた限りでは、この獣っ娘メイドさんは銀狐という大変珍しい狐っ娘らしい。非常に魔力の扱いに長けているらしく、魔力暴走から生還した奇跡の赤子などという、ふざけた肩書を持つに至った俺の面倒を見させるためにわざわざ雇ったらしい。まあどちらかというと監視だろうな。一度は奇跡が起きましたが二度目はどうなるか分からないみたいな事を藪医者が言ってたし。再度魔力暴走しない様にこの獣っ娘に見張らせるつもりなんだろう。


 茶目っけ出して全力で魔力循環してやろうかなんて思ったけど、そしたらこの獣っ娘がいなくなってしまうので自重した。この獣っ娘がいなくなるばかりか、熟練した銀狐の婆とか来られたら洒落になってないからな。問題があるとすればこの子、まじで敏感なんだよな。俺がちょっと魔力循環しようとしただけでピクッと狐耳が動いて駄目ですよって邪魔してくるんだよ。狐っ子も大事だけど魔法の方が現状優先順位は髙いからな。どうにかしてこの子を出し抜いて魔力循環を鍛えないと駄目なんだがいやはや非常に難しい。魔法なんて使った日にはまず間違いなくバレそうな気がするし、一人で行動できるまで魔力枯渇はお預けだな…


 魔力が枯渇したらどうせ頭が痛くなったり気絶したりするんだろうから、赤ちゃんの内にやっておきたかったんだけどなぁ。俺は断食修行するような頭おか修行僧じゃないんだ。逃げ道がないから苦痛に耐えらえるだけであって、逃げ道があれば苦痛なんて投げ出して逃げるに決まってるだろ。これはもう少ない魔力を質で補う省エネ戦法の達人になるしかない!火玉の魔力で火の鳥使ってやんよ!!魔力循環をより滑らかに、静かに、されど速く激しく満遍なく常に循環させる。深夜に積もる雪の様に。


 狐っ娘を出し抜くのに1年掛かりました。まじでこの子やばやばなんだが?他の人たちは全員何も感じてないのになんで分かるの?まあ可愛いから全然許すけどね!!


 俺はこの狐っ娘メイドなマルシェラの、ぴょこぴょこ動く狐耳やふりふり動く狐尻尾に夢中なのだ。でも触らせてくれないんだよなぁ。獣人だからやっぱ掟的なものがあるのかな?というか強引に触ったりしたら嫌われちゃうし、それこそ悪役貴族ルートに入っちゃったりしそうだよなぁ。希少な銀狐っ娘メイドを隷属させて悦に入ってる悪役貴族を正義の主人公様が断罪して救い出す的な?


 赤ちゃんの暴走として強引に触るのもありだが、それだと一度で終わるからな…マルシェラがいなくなって銀狐婆なんかが俺の担当になったら憤死しかねない。俺は獣っ娘ちゃん達をいつでもどこでも何度でもモフモフしまくりたいのだ。その為には両者の積極的合意が必要不可欠。とはいえ焦る必要なない。この世界は獣っ娘パラダイス!そうと分かっている以上、俺は将来100点の獣っ娘100人と仲良くモフモフしてみせるぜ!!

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