第17話 恐獣の脅威
セインはツヴァイの操者としての訓練も兼ねて、別のトレントの騎士に乗って仕事をすることにした。
この後のツヴァイ再生に年単位の時間が掛かりそうだったからだ。
そんな長い期間を客人として遇されることが、セインは居心地が悪かったのだ。
「これがセインのトレントの騎士になるわ」
アンネリーゼがセインに専用のトレントの騎士を用意してくれた。
それはトレントの騎士を栽培しているエルフの里ならではの贅沢な待遇だった。
尤も、主要な取引先でもあったカシーヴァ伯爵とマッド伯爵との取引が停止しているために、トレントの騎士は余っていたのだ。
「そういえば、どうしてカシーヴァ伯爵との取引が停止して、船便が無くなったんだい?」
それはデリケートな話かもしれなかったが、エルフの里に滞在する以上、知っておかないと面倒なことになりそうなため、セインはあえて訊ねていた。
「強欲、横柄、下衆、取引に値しないと判断したからだわね」
何やったんだ、カシーヴァ伯爵。
「それで大丈夫なの?」
「うーん、対岸の街に遊びに行くのが面倒になったぐらいかな?」
「へー(それでリーゼが迷子になったわけだ)」
セインは、その真実を口にすることはしなかった。
「それでカシーヴァ伯爵は、主戦力をゴーレムに切り替えたわけ。
だけど、魔物相手では、トレントの騎士の方が圧倒的に有利ね」
「そういえば、恐獣というのが出て、カシーヴァを襲撃してたんだけど、あれは何処の差し金?」
「え? 恐獣が出たの?」
それはエルフの里も知らない事実だったらしい。
「僕がツヴァイで倒したけど、あのまま放置してたら街が破壊され尽くしていたかも」
それを思い出して、セインはなんだか腹が立って来た。
街を救ったのに追い出すなんてと。
「それは父上とも話を共有しないと」
アンネリーゼの顔色が変わっていた。
恐獣出現は、それだけ大事件だったようだ。
「良く知らせてくれた」
「いいえ、遅くなってしまって申し訳ありません」
「なに、まだ被害は出ていない。
警戒出来るだけ有難いのだ」
領主様に伝えると礼を言われてしまった。
セインは、もっと早く伝えられたことに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
それを領主様は咎めることなく、セインを慰めてくれたのだ。
エルフの里が慌ただしくなる。
それはまるで戦争準備だった。
◇◇◇◇◆
SIDE:???
「天におわす主たる星よ、我に探知の力を与えよ。
其は、天より齎せし、十二の使徒の一つ。
その力は
黄色い線の入った鎧を纏うトレントの騎士に乗る操者が呪文のようなものを唱えた。
すると……。
「この村に反応が出ている」
その操者の目の前にはレーダー画面のようなAR映像が出ていた。
その中に赤い光点が現れている。
それが、目の前の村を示していた。
「行くぞ。 村長を問い質すのだ」
その横に居た赤い線の入った鎧のトレントの騎士から声がする。
その人物は、他のトレントの騎士よりも上位の者のようだった。
トレントの騎士が三騎、丘を下って行く。
「あれを見ろ!」
青色線のトレントの騎士が村の中心を指差す。
そこには……。
「恐獣!」
黄色線のトレントの騎士の操者から驚きの声が上がる。
それは恐獣という存在が、こんな僻地にも出るのかという驚きだった。
「現時点で捜索活動は中断。
これより恐獣殲滅戦に移行する」
「「了解」」
赤い線のトレントの騎士から命令が下される。
どうやら、何らかの捜索活動よりも恐獣殲滅が優先されるらしい。
三騎が村を三方から囲む。
それは正三角形の位置取りだった。
「ズィーベン、主星に接続。
殲滅魔法、
赤い線のトレントの騎士の操者の目の前に、ターゲットを示すレティクルが表示される。
それを恐獣に目で合わせる。
「殲滅魔法、
その発射命令で、天から光が降り注いだ。
それが恐獣に突き刺さる。
そして大爆発が起きた。
「相変わらず、凄い威力だな」
「だが、過剰だ」
「ああ、村が半分吹き飛んだな」
三人の会話はその犠牲に悪びれもしていなかった。
恐獣を倒すためには仕方がなかった。
そういうスタンスなのだろう。
「さて、村長は無事だろうな?」
三騎のトレントの騎士が、村の中心へと向かう。
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