第48話 親友同士の対決。 VS 水上 涼香 part1

「まさか大勢がいる中で、涼香とマッチングするとはな……」

「そうだね。 私も吃驚しちゃったよ。 でもね、戦うのは本気で行くよ」

「それはこっちのセリフだ。 いつもの稽古ではなく、公式戦だ、こっちも本気ガチで行くよ」

「私だって負けないよ」


会場の隅にあるベンチで隣同士に座りながら、オレと涼香は試合の準備をしつつ今の感情を吐き出す。

オレは右手を握り右にいる涼香の顔の近くまで上げると、涼香も左拳で拳同士で合わせる。

そして、お互いに真剣で力強い眼差しで見つめ合う。


「良い表情だ。 普段が見れないレアな表情だ」

「ふふっ、ゆりちゃんだってクールでカッコカワイイよ」

「ははっ、試合前なのに笑うなよ。 集中力が途切れるよ」

「そっちだって」


二人はベンチから立ち上がり、一緒に試合場へ向かう。

開始戦までお互いに手を繋ぐ。









審判による掛け声で試合が始まる。


「ふぅ……。 やるか」


帯に挿している警棒を二本、それぞれ左右で握る。


まずは涼香の先制攻撃から始まる。

武器である疑似異能入りの2丁水鉄砲から水を弾丸の様に飛ばす。

自身の異能と疑似異能が合わさる【出力強化】は強力だ。

しかし、弾は水だ。

空気抵抗により、大幅に飛翔速度が減るので肉眼でもギリギリに認識が出来る。


オレは粘液生成で糸を作り出し、疑似異能【出力強化】入りの手袋のおかげで自分自身の意思で涼香の前に飛ばす。

その後、手にくっ付いている糸を思いっきり引き、瞬時に間合いに入る。

警棒を前に突き出して、触手を槍の様に真っすぐに伸ばす。


涼香も目で追っていたのか、オレが見上げると銃口が向けられていた。

そこから水が発射する。


お互いに避けられない攻撃にノーガード攻撃。


「ぐふっ」


涼香の腹に突き刺さる鋭い二本の触手。


「ぐはっ」


避けることが無理な二撃。

両胸に衝撃が走る。


高火力の攻撃をもろに受ける。

そのダメージ量は、一気に6割減少する。

こんな攻撃を再度食らったら、負けが確定する。


怪我をしないが、両胸が貫かれた痛覚だけは感じる。

手を床に突きながら、立ち上がる。


良かった、腕に痛覚が走ってたら、攻撃が難しくなる。

まさか対応されるとは思わなかった。

良く知っている相手だからこそ、攻撃を読まれたのかな?


涼香も先程の攻撃により、後ろの突き飛ばされていた。


「いってぇ……。 これが涼香の武器ありの攻撃……。 出力強化ってやばい効果だ」


オレは左の触手を三角錐状の渦巻きに変形させて、そこに粘液生成で撥水性の粘液をコーティングをする。

所謂、対涼香様の即席盾だ。

三角錐なので、接触時の面積を小さくさせて粘液の性質により水を弾くことが出来る。

そのため、遠距離攻撃は無効化されるため接近するしかなくなるはずだ。

接近時に粘液で動きを封じさせれば、一気に勝利へ近づける。


その時、丁度涼香もフラフラとしながらも立ち上がる。

瞳には闘気が宿っているのを感じる。


「ゆりちゃん、今の攻撃凄く痛かったよ。 これがゆりちゃんの本気の攻撃……っ!」

「涼香の攻撃も効いたよ。 まだ胸が痛いよ」

「もっと私を感じて、ゆりちゃん!」

「痛覚以外なら、歓迎だよ!」


涼香は水鉄砲を構えて、水を発射する。

それを盾で弾く。


「っ!?」

「”アシッドショット”」


毒性の粘液を生成して、【出力強化】で飛ばす技。

涼香が驚いている隙に狙う。


「ウソっ!? 粘液っ!?」


今は試合中。

動きが固まっていたら負ける。

涼香はすぐに避けるため、床の左方向に目掛けて水を発射させて反動で距離を離す。

【出力強化】があるからこそ出来る荒業。


だが、避けるであろう推測してたオレはすでに右触手を伸ばしていた。

どの方向に逃げようとしても、伸縮自在かつ上下左右に操作できる触手にとっては容易に攻撃が出来る。


「ぐふはっ……!?」


避ける方向に向けて、右触手による薙ぎ払いで涼香は再び腹に直撃をする。

女の子が出してはいけないほど声が漏れる。

飛ばされて床に転がる。

残りのゲージHPは1割程まで削られた。


涼香……。

あまり好きな子を傷つけたくないけど、これは真剣勝負。

お互いに苦しむ覚悟は出来ている。

試合に勝ったら、オレの体力が回復するまで膝枕で癒してあげる。

だから、もう少し痛みを我慢してね!


オレは右触手で転がった涼香に向けて追撃をする。

しかし、その攻撃は届かなかった。

涼香を囲む大出力の水が天井に向けて放出して、まるで壁の様に防ぎ触手を弾いたからだ。


「……”水の壁ウォーターウォール”。 緊急防御の技だよ、ゆりちゃん……」


弱弱しい涼香の声が聞こえる。

大量に出た水が雨のように降り、浴びる涼香は意識を覚醒させる。


「この技は疲れるから、あまり使いたくなかったけど。 今の攻撃を食らったらゆりちゃんとの試合が終わってしまうからね」

「涼香……。」

「こんなに二人だけの空間を感じられること、終わらせるのは勿体ないでしょ?」

「……あぁ、そうだね」


てっきり、涼香も戦闘狂だと思ってしまったのは失礼だろう。


「勝ちを狙う真剣なゆりちゃん、必死に耐えるゆりちゃん、私にだけ向けてくれるゆりちゃんの眼差し。 あぁ……、次々と見せてくれる表情が堪らないよ! もっと戦いたいっ!!」

「楽しそうで何よりだよ」


お互いに見つめ合う姿は、まるで刹那の見切り。


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あとがき


徐々に投稿時間が不定期に……。


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