第40話 ライバルの手紙

「あっ、そうそう、ゆりちゃんにこれ渡しとくね」


涼香のハグが解放されると、カバンから封が閉ざされた手紙を取り出す。


「これは?」

「私がここに来る途中で、黒髪の女の子に呼び止れて渡されたのよ」

「黒髪?」

「うん、すごく可愛い子だったよ。 それで、馴れ馴れしく名前で呼んでたよ。 どういう関係かな?」

「……知らないよ」


手紙を渡してくる程の親密な関係者が思い浮かばないけど、手紙を開いて中身を確認する。


『やぁ、優里香くん

君との試合は久々に心から燃えたよ。

お互いの技による攻防はこれまで感じたことがない試合だった。

最後の全力で君は気絶してしまったことは予想外だったが、すぐに医務室に運ぶために許可なく体に触れたことを謝罪する。


僕はもう少しでシニアに上がる。

次はシニアで会おう。


        青陰 陽』


彼女がオレここまで運んだのか。

それなのに謝罪のことはよくわからない。

今度会う際は感謝を伝えないと。


だけど、最後の二文は余計だ。

次はシニアで会おうって?

させるか絶対に、勝ち逃げで次のクラスで上がらせてたまるか!


「ゆりちゃん……」


涼香が心配そうに見ていた。

手を見ると、力強く手紙を握っている自分の手が映っていた。


「あぁ、心配かけてごめんね。 つい、負けたのが悔しくて」

「……そうかぁ。 手紙の相手は対戦相手だったのね。 私がゆりちゃんの仇を取ってあげるね!」

「仇って、まだ死んでないのだけど……。 涼香、気持ちは嬉しけど、これはオレと彼女の戦いだよ。 次は絶対に負けない」

「ゆりちゃんの真剣な眼差まなじゃし……。 うん、その時は試合を入れないで応援するね!」


ベッドから降りようと立ち上がろうとするが、少しよろけてしまう。


「ゆりちゃん!?」


すぐに涼香に支えられる。


「ありがとう、涼香」

「どういたしまして」


どうやら、筋肉の疲労で立ち上がる力も残っていなかったようだ。

この状態なら異能を発動しても、細かな操作が出来ないかも知れない。


「ははっ、今日はもう試合出れそうにないな……」

「ゆりちゃん……」

「涼香はオレの分まで頑張って」

「それは出来ないよ……」

「えっ?」

「だって、ゆりちゃんと一緒にシニア昇格したいもん」

「涼香……」

「だから、今日はゆりちゃんを付きっきりで介護するねっ!」

「まさか、それが狙い?」

「別にそんなことは考えてないよー? ほら、縁ちゃんが試合に出てるし応援しに行こうよ」

「誤魔化したな、全く。 一緒に縁の応援するか」


オレは涼香に肩を貸してもらいながら、縁の試合が見えるとこの観戦席でゆっくり過ごすのであった。


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あとがき


そろそろ、文字数が10万超えそうですね。

まだまだ中学生編が続きますが、これからもよろしくお願いします!


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