第41話 油断

祝! 10万文字!

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観客席に着く頃には、すでに試合が始まっていた。

すでに縁のゲージHPは3割程減って残り7割弱。

片や相手の少女は残り6割と接戦を行っている。


対戦相手の少女は近距離から中距離までの攻撃範囲を持つ特異な物質操作系の異能力者であり、縁は異能力の持ち味である身体能力で相手の攻撃を回避しながら接近攻撃を繰り出す。

しかも、少女は棒術を基本に突いたり、薙ぎ払いをして攻撃しているため、稽古でよく縁と組み手の相手になることもあって、冷静に対処をしている。


「おぉ! 縁めっちゃいい試合してるね」

「リードを保って戦ってるわね」

「縁の異能なら耐久戦も強いからなぁ~」

「ふふっ、ゆりちゃんも組手で痛い目あってるものね」

「くっ……。 縁はさ、俺の攻撃を紙一重で回避や防御をして中々ダメージが通らないからね」

「そうね。 ゆりちゃんって攻撃範囲は広いのに当たり判定が小さいからね」


何も言い返せなかった。

今自分が痛感している課題の一つだからだ。

残りは火力もとい、操作している触手のパワー。


「それにしても、縁ちゃんの対戦相手の異能ってゆりちゃん似てるね」

「たしかに、棒を伸ばして戦うのは似てる」

「ただ伸ばすだけならば、この試合は縁ちゃんが勝ちそうね」

「ここでフラグを立てるのはやめてあげなよ……」


そう言って、オレは涼香の頬を軽く突くと涼香はスキンシップしてくれた、と思い微笑む。


「何でそんなに嬉しそうに笑うの」

「だって、今にも疲れて眠そうなのに私を優先して構ってくれるから~」

「何じゃそれ」

「少し眠る? 今膝空いてるよ? この試合は私が応援して見てるからね」

「うっ、いや……、いい。 涼香と一緒に見るよ」

「私のため?」

「縁のため」

「むー! そこは、涼香のためって言って欲しかったなぁ~」

「はいはい」


観客席のひじ掛けに腕を乗せていると、涼香の手が乗せてきて指を絡ませてくる。


「ちょっと……?」

「いいじゃない、これくらい」

「……試合を見させてよ」

「このままにしてくれたらね♪」


さっきの言動で思わず揺らいでしまったが、今は縁のことを見ないといけない。

手はそのままに縁の試合を観戦することに集中する。


この試合が終わったら覚えてろよ。

命一杯甘えてやる。










――side 猫宮 縁


異能を発動して、猫耳を生やすと視覚、聴覚、反射神経が強化している。

アタシの異能は猫ちゃんの能力を自分に宿すことで身体強化をする。

ただし、筋力と腕力といった攻撃に関することが伸びないため、必然的に耐久戦になってしまう。


「この戦い方、ゆりっちに似てるなぁ」

「くっ、ちょこまか動きやがって……いい加減当たりなっ!」


少女は武器として扱っている鉄製の棒を攻撃する度に異能で伸縮を繰り返している。

だが、先程から攻撃の当たらなさにイラつきが見えて、徐々に攻撃が雑になっていく。


「そこっ!」

「クソがっ!」


アタシが回避しつつ前に出て、徐々に近づいて装備された籠手ガントレットで一撃を堅実に入れてく。

これがアタシの戦闘スタイル。


この一撃を入れても、相手のゲージはまだ5割を切らない。

相手が少し怯んでいる隙にさらに拳で殴っていく。


「ウザいんだよっ!」


連続で殴られて荒立てた彼女は、右手に棒を持ちながら左拳で反撃を繰り出す。

その攻撃を察知して、後ろ下がって避けた。

だがしかし、反撃による拳が避けた先に当たり、アタシのゲージHPが減ってしまう。


「ウソっ!?」


訳が分からずに一瞬パニックに陥る。

それは彼女から視界から外さないように前を向いていたら、にのように伸びて殴って来た拳がすでに腹まで届いていたからだ。

どうやら彼女の異能は、棒を伸ばすだけの異能ではなかったのだ。


「何驚いてるのさ、もしかして棒を伸ばすだけの異能だと油断したか?」

「っ……!?」

「図星か。 そんな異能だったらここに立ってないってのっ!」


本質の異能を考えずに攻撃を避ければいいと安直な発想をしていたために油断をしてしまった。


ゆりっちの異能に似て伸ばす攻撃をしてくるが、彼女は特定の物ではなくて何でも伸ばしてくる。

そのことを頭に入れて戦わないとこの試合は勝てない……っ!


また距離が開いたため、彼女は棒を横に振って薙ぎ払っていく。

アタシは無意識に聴覚でその攻撃を察知して、目には振っている棒がゆっくりと知覚出来たため、軽々とジャンプして避ける。

そして、膝を曲げた状態で着地後に伸ばして加速する。


大振りな薙ぎ払いをしたため隙が生れ、彼女は間合いの侵入を許してしまい再び殴られる。


「これが初心者の動きかっ!?」

「異闘にデビューしたのは今日初めてだけど、試合は何度もやったわ」

「……っ!? 私だって! ここで負けるか!」


彼女は再び体を対象に伸ばして攻撃を繰り出すが、猫になってる感覚では避けるのは容易かった。


「猫風情がっ!」

「不意ではないなら、もう脅威じゃない! もう目が慣れたから!」

「っ!? 舐めやがってっ!」


避けては攻撃に転換を繰り返して、長かった格闘戦が幕を閉じる。

ついに試合が決着する。

勝者は縁だった。


「……相手の戦闘スタイルが似ててよかった」


勝ったことで集中力が切れて視界が広くなる。

周りを見渡して観客席を見ていると友人達が応援して、試合を見てくれたことに気づいて歓喜した。


アタシも二人のように勝ち続けて、異能を進化させたい。

そして、一緒にクラスに上がりたい……。


アタシはまだ戦えると確信しているため、少し休憩後に次のマッチングを受けようと決意する。



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あとがき


先週は投稿できずに申し訳ございません!

書く時間がなかったため、投稿できませんでした。


縁の試合をちゃんと描写すると長くなりそうと、基本はヒットアンドアウェイのため、単調になってしまう(まだ未覚醒のため、攻撃手段が拳だけ……)ため

カットしました。

要望がありましたら、次は縁ちゃんの試合を描写し続けようと思います。


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