第38話 転生者同士の試合 part2

炎の壁が徐々に狭まって襲ってくる。

肌が焼けるような熱さを感じる。


「くっ、どうする……?」


このまま何もしなければ、焼かれて試合に負けてしまうだろう。

やはり粘液で消化は……出来ると思う。

だが、出力が多すぎて戦闘維持が出来ない。

燃費の悪い異能というのは本当に扱いづらいな。


「炎龍からは逃れられない。 さて、どうするのかな? このまま負ければ、期待外れだけど」

「上から目線で品定めとは、余裕じゃない!」


一瞬だけ閃いたこの攻撃に賭けるしかない。


自分の右足に滑りやすい粘液を生成する。

それを軸に両手を左右に広げて触手をぶん回す。

それにより、コマのように回転が加速して、触手によって風が発生する。


「へぇ、攻略出来るんだ。 さすがだ! ―ぐふっ!?」


すると炎は強い風により勢いが消えて、炎を貫通した触手が彼女に直撃をする。

遠心力が合わさった触手による打撃により、床に転がっていく。

予想のしない攻撃だったため、防御をしていないため大ダメージを受けてしまう。


「今がチャンス! これで終いだ!」


オレは伸びていた触手を長さはそのままに螺旋状に収縮する。

転がっている彼女に向けて、触手を解放して弾性エネルギーを利用して槍の様に突く。

これは従来の突く攻撃とは違う高火力の攻撃、これをまともに食らったら一撃で仕留めるであろう。


その攻撃は当たった。

しかし、ゲージをミリ単位で残っていた。


「はぁはぁ……、まさか油断したらこのザマよ」


彼女は床に片膝を着けて立ち上がろうとする。


「何だ……あれ……」


オレは唖然とした。

立ち上がろうとする彼女を支えるかのように、もう一つの影があった。

その影は、約3mの人型の巨体だ。

体は黒に近く、所々光沢が見える。


「いくぞ! 土熊」

「まだ、あんな力があるのか」


土熊と呼ばれる物体は彼女を抱えながら、こちらに向かって走り出す。

走るたびに床から振動が伝わってくる。


オレはすぐに伸びた触手を再び収縮させる。


「一撃必殺の拳を食え」


土熊がオレとの間合いを入った途端に、拳を振り下ろす。

それに対して粘液で滑らせて防御を行い、攻撃を逸らす。


「その液体によって防御するくらい、知ってるさ! 後ろを見な」


後ろを振り向くと、火球が迫っていた。


「っ!? 熱っ!」


避けることが出来ずにそのまま食らってしまう。

それだけで攻撃は終わらない。

土熊が体勢を整えてから、両手を使った連撃を繰り出す。


「ぐはっ!?」


一撃が重々しく、床に倒れながらも拳の雨が降ってくる。


「ここで尽きてたまるか!」


オレは痛みを我慢しつつ、全身に被るように弾力性の粘液を生成して物理攻撃を防ぐ。


「いいねぇ。 でも、逃げ道はないんじゃない?」

「くっ!?」


連撃をしている土熊の後ろには、炎で造られた龍が見える。

このままでは、炎に焼かれてしまう。


「ここで負けてたまるかぁ!」


触手を操作して、粘液を突き破り土熊の拳に絡みつく。


「っ!?」

「いっけぇーっ!」


それを触手の力のみで投げ飛ばす。

背に乗っていた彼女は、そのまま床に投げ飛ばされたが受け身を取ってゲージが減ることを阻止した。

お互いに疲弊した姿を見せる。

もしかしたら、次が最後の攻撃かも知れない。


「強いよ。 接近と遠距離攻撃があって隙がない」

「君もタフで状況を一変するほどの力がある」

「「次で決着をつける!」」


オレは再び触手を螺旋状に収縮して、一気に解き放つ。


「スプリングショット!」


先程よりも速く、鋭い突きが彼女に襲う。


炎龍えんりゅう! 焼き尽くせ!」


先程まで後ろに控えてた炎が徐々に酸素を取り込み、巨大化してから襲う。

これでは粘液で防御しようとも量が足らない。


相打ち覚悟の決死の攻撃は、すぐに決着がつく。


伸びた触手は彼女を守るように盾となって身代わり、巨大な腕で触手を止めていた。

腕に罅が割れて崩れるが避ける時間は稼いでいたため、無傷に済む。

オレの向かって飛来する龍は口を大きく上げて、炎に飲み込まれる。

それにより、ゲージをすぐに尽き試合が終わった。


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あとがき


あと一歩のところで負けてしまいました。

やはり、異能が三つとなると不利ですよね。


今回登場した土熊は、陽の異能で生成した岩石を土流操作でゴーレムしたものです。

本来、土流操作は室内で戦闘するには不向きな異能ですが、第三の異能を経由することで強力な武器になりました。


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