第37話 転生者同士の試合 part1

――side 青陰あおかげ ひなた


僕は青陰 陽。

今世はそう呼ばれている。

生まれ変わってからは平和に過ごしていた。

いや、平和すぎて退屈だった。


前世の僕は、日常を脅かすだった。

ある妖は人を襲い。

ある妖は人里に住み侵略を行う。

ある妖は人と共生して平和に過ごすなど、多種多様に存在した。


先祖代々、害ある妖の封印及び討伐を生業をしていた家系だったため、成長してから自然と家業を行っていた。

妖との戦の日々が日常だった僕はしくじった。


当時の関白の命により、強大な妖であるがしゃどくろの討伐または封印をするために同僚の5人と共に向かった。

人の魂を喰って力を増したがしゃどくろは強く、式神3体と6人がかりでやっと強固な骨にダメージを与えられるレベルだった。


封印まで順調に進んでいたところに、がしゃどくろは妖気と呼ばれるエネルギーを周囲に解き放つと、暴走し始めて周囲に無策に攻撃をしてくるようになった。

それにより僕の前に振り下ろされた拳は式神が庇ったおかげ助かったのだが、連携は崩れ、一人また一人と戦闘不能者が増えていく。


これでは封印は不可能だと判断して撤退を試みようとしたが、僕はがしゃどくろの腕により道は塞がる。

退路を断たれた僕は、最後の最後まで足掻き全ての式神を失ってから敗れた。


瞼を閉じているところから暖かい光を感じて、目を開けるとそこはもう未知の壁や天井に囲まれた部屋にいたことを認識したことで、別の世界に転生したのだと理解した。

何故転生をしたと理解したのは、前世の記憶の保持と敗れる前に瀕死の状態で手に掘っていた輪廻転生が出来る呪印を発動したからだ。





転生してから4年後、異能という特殊能力を知り、またそれを使った全世界でメジャーな格闘技があることを知った。

前世は修行と戦いの日々で、戦闘しか知らなかった男の血が疼く。

彼女もまた異能に魅了された一人になった。



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――side 蛇谷へびたに 優里香ゆりか


彼女は再び鉄扇を扇ぐと、粉らしき物質がこちらに飛来して宙に舞う。

そこに向かって彼女は走り、鉄扇を閉じて舞っている粉に薙ぎ払う。

すると、バチバチと火花が出て爆発をする。


「――正気かっ!?」


オレはつい驚いてしまう。

どう見ても自殺行為に見えたからだ。


だが彼女は無傷だった。

彼女の周りには、先程の爆発により発生したと思われる小さな爆炎が一周二周と回転をしていた。

まるで、炎を纏っているように。


この動作は明らかに現象系の異能ではない。

恐らく、物質操作による異能に違いない。


「いくよ!」


閉じた鉄扇を左右に振ると、それに連動して炎も揺らぐ。

そして、鉄扇をオレの方に指すと、炎がこちらに向かってくる。


「その攻撃はさっきもしてたよ」


オレは炎の防御手段として、右手に不燃性の粘液を生成する。

熱は感じさせない程の厚さによる粘液で炎と衝突させて鎮火させる。


次の攻撃に備えようと武器を構えると、目の前には彼女がいなかった。


「まさかっ!?」


左右に目を向けても姿が見えなかった。

最後に後ろに振り向くと、すでに鉄扇で振り下ろす彼女がいた。


「くっ、っぁああ!」


咄嗟に顔面を守るように腕を上げたが、鉄扇の威力を殺すことが出来ずに床に尻もちを着いてしまう。


「痛ぇ、まさか炎を囮に使うとは……」

「最初に防がれた攻撃を使うわけないでしょ……。……はぁ。 さぁ、立て!」

「言われ、なくとも!」


まだ手がヒリヒリと痛みが続くが、これに意識を取られたら再びダメージを食らうので我慢する。


「いい目だ。 闘志が伝わるよ」

「上から目線だなっ!」


オレは警棒を触手に変化させて彼女に向けて突く。

だが、攻撃はギリギリ届かなかった。

突如、彼女の左手に盾のような平たい岩が出現して攻撃を防ぐ。

その石に所々埋まっている石が、会場の天井で照らしている光源の光によって反射していた。


「ただの岩じゃ、ない?」

「そうだね。 答えは言わないけど!」


左手に付けている岩に右手の鉄扇を擦る。

すると、いつの間に鉄扇に巻き付いていた黒い針金から発光する。


あれは見たことがある。

学校の理科で体験したことがある。

あれは、マグネシウム。

いつの間に装着したんだ?


その眩しさに目を塞いでしまい、彼女から視界が離れる。

オレが怯んだところに鉄扇を突くように連撃を繰り出す。


「くっ……」

「これで2割か、やはりこれでは火力が足りないか」

「……好き勝手にさせるかっ!」

「うぅっ!?」


連撃を受けている間に反撃として、触手による薙ぎ払いを行う。

それが腹に直撃する。

それにより後ろに下がり片足を床に着く。


「やるじゃん。 だけど、周りを見な」

「っ!? これは……。 ……熱い」


触手による攻撃が成功したと思っていたが、四方八方に炎の壁で囲まれていた。


炎龍ドラゴンアセンドで焼かれな」


炎の壁が徐々に内側に縮まっていく。


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あとがき


主人公とは別世界の転生者が登場しました!

主人公とは違い自発的に転生です。(おまじない程度に掘った印ですが)

もしかしたら、ほかにも転生者がいるかもですね!


キャラ紹介に青陰あおかげ ひなたを追加しました!

本編に出していない異能も含まれているので、ネタバレ注意です。

いづれ本編で紹介する予定です。


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