第35話 似た者同士

昼食を取った後、次の試合に出るためにデバイスを操作する。

対戦ボタンを選択して、ランダムマッチを行う。


「さて、次の相手は誰かなっと。……ん?」


画面には、対戦相手と戦績が表示された。


「なになに? うわっ、ゆりっちって案外、運悪いよね~」

「あらら、また強敵なのね」


二人はオレのデバイスを覗き込み、デバイスに映し出された対戦相手を見て反応をする。

そこには6戦6勝の文字が映し出された。


「これランダムと言いながら、運営に仕組まれてるとかない?」

「それを言うなら私も同じ気持ちだよ」

「二人共、一戦一戦満身創痍で勝ってるもんね。 アーカイブで見てたよ!」


停戦相手は青陰あおかげ ひなた

以前、武藤さんを爆炎で一瞬の内に倒した相手だ。

異能はおそらく炎系の遠距離型。


「それにしても青陰さんって、ゆりちゃんみたいな感じするのよね。 もしかして双子や親戚だったりしない?」

「ないよ。 オレも以前の大会で見たのが初めてだったし」

「そうよね。 私も把握してないってことは関係なさそうだよね」

「そうよねってなにっ!? 何ですずかっちって平然とゆりっちの情報を握ってるのよ!」

「まぁ、涼香だし、それにプライベートは守ってくれるし、忘れ物とかも忠告してくれるか助かってるよ」

「ど、毒されてる……」


その後、二人もランダムマッチで相手が決まり、再び試合場に向かう。・










これから試合が行われる試合場の周りには人だかりが出来ていた。


「この後の試合は無敗同士の戦いだってよ」

「しかも、お互いに15歳の中学生同士」

「まじかよ。 ビギナーと言っても初試合から今まで無敗って難しいはずだ」

「今年の代は強者揃いかもな。 ただでさえ柳川やながわ 未彩みさという、すでにシニアで活躍している天才中学生スターがいるのに」

「あっそれ、知ってるぞ。 この前ニュースで特集されたな。 異能を授かってすぐにレベル1でシニアまで言った天才って」

「あぁ、これから戦う子もそうなるかもな」

「この試合どちらが勝つのだろうか」

「それをここで言うか?」

「いいじゃねぇか、公言して正々堂々と応援すれば、それが推しになるからな。 ガハハッ」


野次の観客達が会話しているのを耳にした。

前試合で使った疑似異能の点検のため、まだ少し時間に余裕がありつつ当人なので、少しイラっとしたが気になる話題なので、試合開始まで耳を傾ける。


「俺は陽ちゃんかな。 これまでの戦いはほぼ瞬殺らしいし、今回もそうだろ」

「いやいや。 陽ちゃんの今までの対戦相手はほとんど接近戦が得意の子だったろ、有利に決まってるから。 俺は優里香ちゃんを応援するね」

「でもさ、無敗と言っても基本ギリギリの勝利だから、劣るだろ」

「俺も青陰選手派だな。 いつもクールなのに攻撃が熱いのがいいね」

「これだから素人は」

「「「何だとっ!?」」」

「いいか、蛇谷選手は一度シニアクラスの妖艶の暴君に勝ってるからな」

「まじかよ!?」

「あぁ、たまたまこの前開催してた地元のハロウィンイベントを一人で過ごしてたら、異闘イベントを見かけたのさ。 そこで戦ってたのが、あの暴君と蛇谷選手だ」

「どんな試合だったんだ? 試合見てないが、格上相手に勝つなんて、それこそ柳川ぐらいだろ」

「アーカイブに残ってたら、見てみたいな、その試合。 それでどんな試合内容か聞かせろよ」

「あぁ、暴君がセーブした状態から始まり、蛇谷選手は劣勢だったが健闘をした結果、暴君が本気を出したが反応できない速度の攻撃を食らって棄権したな」

「反応出来ないくらい攻撃って……」

「あの暴君に勝つほどなら、この試合優里香ちゃんが勝つかもな」


会話聞いてたけど、当人が近くにいるのに「劣る」と言われた腹が立つな、おっさん共。

それにしても、サキサキさんって暴君って呼ばれてたのかよ。

ファン以外からハンドルネームではなくて、通り名で呼ばれるが共通認識なのか?

戦いの説明何てすごくざっくりとしたところが、ムカつく。

ファンならオレの活躍したところを詳細に語ってほしいものだ。


「おいおい、確かに蛇谷選手は凄いさ。 暴君は接近戦なら無類の強さで、それと渡り合るほど近接戦闘したのは評価するが、でもそれは接近出来たらの話だろ?」

「これまで陽ちゃんは遠距離から高火力の爆炎を放ち、勝利を収めた。たしかに、分が悪い」

「それなら蛇谷選手だって、遠距離からも攻撃出来て搦め手も使えるオールラウンダーさ、手数の強さこそ勝ち筋を見い出せる」

「それにして、同じ黒髪で長髪は似ているな」

「どこがだ、陽ちゃんは名前に反していつもクールなところが違うだろ」

「髪型だけで似てるなんて失礼だな。 優里香ちゃんは活発さがあって、試合は泥臭く闘志に満ちている。 あれは絶対、根が曲がってなくて、話しかければ俺に対してでも挨拶してくれそうないい子だ」

「ふん、そんな子より年下に冷たい目で見られる方がいいに決まってる」

「は? 誰に対しても笑顔で対応してくれる子がいいだろ」


しばらく、試合予想から脱線して話が続く。

それを聞いては後悔すると思い、すぐにその場から離れて待機をする。


点検が終わり、試合が行える状況になった。

なので、オレは少し身だしなみを揃えてから試合場に立つ。


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あとがき


次回は同い年で勝ち続けた同士の戦いです!

それにしても、よくあるスポーツ漫画でモブ同士の会話って書いてて楽しいですね。


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