第32話 同系統バトル! 触手 vs 球 part1

主人公視点に戻します。


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side 蛇谷 優里香


二人が試合している中、オレも試合場に上がって対戦相手と向き合っていた。

彼女は、黒とピンクのツートンカラーの髪色のツインテールで前髪の半分が後ろに纏めて、おでこが見える。

釣り目の黄色の瞳に口ピアスというヤンチャしている印象。

服装が動きやすいような運動服ではなく、黒の革ジャンにへそ出しシャツ、黒のショートパンツの下は太腿まで伸びる黒と桃色の縞模様のオーバーニーソックスでオシャレをしている。


対戦相手はデバイスによると8勝7敗の16歳の女性で、名前は黒淵くろぶち 珠美たまみ

今年の春までは負けが多かったが、それ以降は負けなしという戦績。

おそらく、第二能力を覚醒した途端に勝率が上がった感じだと思う。


高校二年生でレベル2って早いのか、遅いのか基準が分からないけど、ビギナーには高校生や大人の女性を見かけるからきっと標準レベルなのだろう。


「今回の相手って中学生? よゆーじゃん、にしし」

「中学生ですけど、未だに無敗なので」

「ふーん、威勢はいいじゃん。 アタシはアンタみたいな才能があるヤツをぶっ潰すことが、今の楽しみじゃん」

「オレ的には才能がないつもりなんだけどなぁ……」

「中学生でレベル2は恵まれているって言ってんじゃん!」


ここで試合が始まる。

意外にも見た目によらずに彼女は試合前の挨拶は凄く丁寧だ。

ヤンチャな見た目でスポーツマンシップがあるなんて、ちょっとギャップがあって好感度上がってしまった。


彼女の手には黒の穴空きグローブを身に着けていて、右手には球体を持っていた。


「ボール? にしては、黒い……」


オレはいつでも異能が発動できるように、二本の警棒を構える。


「見てな、一撃で沈めてあげるじゃん」


右手を引いたと思ったら、正拳突きをするかのように目の前に突く。

すると、拳がこちらに向かって飛んできた。


「っ!? はやっ、いきなり遠距離攻撃かよ!」


足元に滑りやすい粘液を生成して、飛んでくる物質を避ける。

それは拳だと思っていたら、球だった。


「ちっ、外したか」


彼女は手のひらを前に出すと、先程まで飛んでいた球が独りでに動き出し彼女の元へ戻ってくる。


「勝手に球が動くって、まさか物質操作系の中にある念動系の一種か!?」

「へぇ~、アンタよく勉強してるね」


どうやら当たりの様だ。

物質操作系は、オレみたいに対象の物質を触接触れることで操作するタイプと触れなくても遠くから作用して操作する念動タイプがある。

それぞれの違いは、操作をする対象の精密性である。

オレの場合は、媒体の物質を触手に変換して自由自在に操れる。

彼女の異能は、球を武器にしている当たり球体を操作が可能で、異能を発動すれば飛ばしたり引き寄せることが出来るのであろう。


「次は、……当てるっ!」


手元に戻した球を再びこちらに向けて飛ばす。

しかし、粘液を生成しているため滑るように避けているので当たらない。


そして、今は無防備な彼女がいる。

攻撃のチャンスだ。


「甘いぜ、くらえ!」


警棒を触手に変換して、彼女に向けて突くように伸ばす。

だが、彼女はニヤリと笑っていた。


「甘チャンは、……どちらかな?」


すると、後ろから重い一撃による鈍痛が体中に伝わる。


「ぐはっ!?」


胸につけてあるゲージHPを見ると4割ほど削られた。

完全なクリーンヒット。


「まだまだじゃん。 なんで、無防備なアタシがアンタの直線上にいると思っているのよ」

「くっ……」

「それに、もう片方に鉄球があることも忘れずに」

「っ!?」


攻撃チャンスという魅惑の隙にまんまと引っ掛かった。

そうか、さっきも右手で投げて一度も左手を前に出していない。


これは非常にヤバイ。

引き戻る念動であの威力に加えて、二つの前後による球の襲撃。

そして、彼女はオレが避けようとしても、直線上に立つように立ち回るはずだ。


今までは身体強化によるパワーと硬さをどう攻略するか戦ってきたが、今回はどう厄介な異能を対処して攻撃を当てるかの戦いだ。

物質操作系の対戦の経験の無さ、ここで襲う。


オレの粘液生成で球に付着しても、念動で動かしているため無意味。

触手でカバーしようとも同じ鉄製でも、密度と体積が違う。

警棒では歯が立たない。


「これでアタシの、勝ちっ!」


思考していると、彼女は念動で戻した球を右手に収めて、左手を引く。

そして、左手を突くように前に出して球を飛ばす。


「くっ、もうこれしかないじゃんか!」


絶体絶命のピンチでも、戦意喪失だけはしたくない。

触手の周りに粘着性の粘液を生成して、纏わせる。


それを球に向けて、突くように伸ばして対衝突を狙う。

衝突の反動が手に伝わり、痛みを生じたが狙い通りに触手の先端に鉄球が引っ付いた。

さらに念動によって引き剝がせないように軽く絡みつける。


「やるじゃん。 でも、まだ球あるよ?」


彼女は触手に粘着した鉄球を念動で戻そうと試みたが、こちらの触手操作による力が強いため引き剥がすことは出来なかった。

仕方がないためか、もう一つの球を飛ばす。

だが、無意味。

同じように触手で球を無力化する。


「これでオレに勝ちだ!」


この球を合わして、遠心力を加えた攻撃をすれば一撃でノックアウトできるはず。

オレは彼女に向けて触手を叩きつけようとした時、何故か心の底で胸騒ぎがする。

彼女を見ると戦意喪失しているわけではなく、笑っていた。


「あぁー、最高にいい試合だねっ!」


彼女は笑顔で言ってきた。

オレは彼女は戦闘狂なのかと思って、そのまま触手を操作して叩きつけようとした時、粘着していた球が急に動き出した。


「っ!?」


それは徐々に回転していき、高速回転した時にはもう遅かった。

粘着から解放された二つの鉄球が弾丸のように、こちらに向けて襲ってきた。


「ぐはっ!?」


二つ同時に食らったら、完全に負けていた。

何とかダメージを抑えようと、足元の粘液で滑って回避しようとしたが、一つだけ被弾してゲージHPが5割を減り虫の息だ。


「アタシの第二の異能、回転操作。 これで終わりだよ」

「……まだ諦めてたまるか!」

「威勢だけはいいじゃん。 でも、これ絶望っしょ」


まだ勝ち筋はあるはず。

二個の球を飛ばしている状態なら……。


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あとがき


主人公が初めて同系統同士の戦い!

周りに物質操作が少ないため、組手の経験が少ないです。


バトル続きで日常回もいれたい……。


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