第31話 力とパワー 水 vs 甲虫 part2
―side 水上 涼香
私は小さい頃から家の方針で武術を習っていた。
特に練習量が多かったのは柔術。
少しの動きで攻撃を往なして動きを無効化させるのは異闘で有効だ。
そのため、水上という異闘に関わっている輩が多い名家は分家問わずに習うように本家から通達してくる。
所詮分家の生まれで本家から期待されてない、けれど分家は本家のスペアだ。
嫌だと言っても、勘当されなければ、やるしかなかった。
自由に生きたかった。
なので、家事に関わりたくなかった私は武術を習っているからといって、異闘に関わるつもりはなかった。
あの子に出会うまでは。
水上家の遺伝なのか、水に関わる異能を授かったため、今では水上流武術を少しずつ習い始めている。
これは、水関係の異能を主体にして色んな技を水上がアレンジして生み出した武術。
私は水を使い摩擦を極限まで減らした水上流柔術が得意だ。
現在、試合では相手の一撃一撃が重いパンチを水で滑らして、攻撃を滑らせている。
「くっ、さっきからそれ厄介ね 」
「あなたみたいなパワーだけの相手は楽でいいわね。 簡単に捌けるわ」
「でも、防ぐだけでは勝てないわよ! ほら、私の方がゲージが多いもの」
お互いに拳を使った接近戦が続く。
どちらも攻撃を緩めない攻防戦が徐々に周りの観客たちに魅了していく。
「我慢比べも飽きたし、フィナーレでも飾ろうか!」
彼女は拳を振り下ろした後、続けて攻撃をするのではなく後方にステップをして距離を取ってきた。
そして、蟹股の状態で少し腰を下げて体中に力みが増す。
「一体、何をするつもりなの……?」
私は、距離を離れたことで人指し指を彼女の方向に向けて、いつでも水を発射出来るように構える。
すると、彼女の背中から大きな橙色が薄く半透明な羽を広げた。
高速で上下に振ると、徐々に彼女は浮き始める。
「飛行能力だと……!?」
「これも二つ目で覚醒した時に出来るようになった技よ。 食らいなさい、一撃粉砕!」
そう言うと、彼女は飛行したまま加速してこちらに向かってくる。
拳を後ろに下げながら、飛行しているので絶対に拳を突いてくるはず。
「これは……往なすことは出来なさそうね……」
さすがの柔術でも、飛行による加速した突きを防ぐことは難しい。
なら、どうするか。
私も奥の手を使うしかない。
「私も全力でその攻撃を負かしてあげるわ!」
両手を斜め下に構えて、手の平が床に向かうように合わせる。
膝を曲げて、足に力を入れてから一気に手足から水を放射する。
そう、以前ゆりちゃんと戦った時に見せた技で流水を使った加速技。
燃費が悪く、すぐにバテテしまうけど瞬間加速して攻撃を繰り出せば、一気にダメージを与えられる。
これはお互いの試合を掛けた一撃の勝負だ。
「はぁあああああああああーっ!」
「私の一撃で沈めぇっ!」
私は少し飛行の角度が安定したため、足だけに水を放射をして、拳を引いてから肘から再び水を放射して、流水の力を合わさった突きで彼女と迎え合う。
加速という点では私の方が優れていたが、彼女は加速、硬い外皮による拳の突きが威力を増し、ゲージは痛み分けでお互いに5割以上を失う。
「くはっ」
「ぐぅっ……」
今の攻撃により、お互いにゲージが1割未満の満身創痍のギリギリの状態だ。
「……ここで、決める!」
空中で互いに落下している中、私は濡れた指先から垂れている水滴を出力強化を使って、彼女に飛ばす。
それは5つの水の弾丸だった。
さすがに彼女は落下中で避けることが出来ずに、水滴が命中して残りのゲージを刈り取る。
よって、この試合は涼香が収めた。
「ははっ、まさかやっと覚醒して、再び連勝したにな。 今世代の中学生は強いわね……。 はぁ、悔しいーっ!」
「私もギリギリでした。 さすがにあんなパワーのパンチは何度も防ぐのが大変ですよ……」
「次は私が勝つわ、水上。 今度はシニアで」
「ええ」
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あとがき
身体変化系の異能って強すぎ……。
異能の系統で一番で争える程に(変身するのが当たりだった場合)
物質操作も……強いと思いますよ(本人スペックは常人並み)
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