第26話 vs サキサキ part1

「まずはこの程度で、―"魔物変化メタモルフォーゼ"!」


彼女が異能を発動をしたのか、体全身が光に包まれる。

光を解き放った後、彼女の姿は変化していた。

頭部に山羊のような丸まった漆黒の角が生えて、上半身は背に蝙蝠の羽が生えていた。

残念ながら、着替えていた服はそのままだった。


「……眩しいっ、姿が変わったってことは身体変化系か」

「当たりだよ~。 まずは先制攻撃するね!」


彼女は軽く膝を曲げてから床を強く蹴ると、姿を消したと思う程の高速移動が実現する。

オレとの距離が目と鼻の先になると、手を突き出してくる。

その攻撃に対して異能を発動が間に合わずに、そのまま警棒で爪を弾く。


「何その爪はっ!?」

「綺麗でしょ? これが私が武器を持たない理由よ」

「……身体変化の異能によって爪が変化をしたってことか」

「そうだよ~。この爪は~、チタン並み強度があるから、並みの武器よりつよつよなんだぁ~」


彼女はそのまま離れることなく、爪による追撃を始める。

突いたり、切り裂くなど多様な攻撃手段を混ぜてくる。

そして、攻撃速度は常人よりも何倍も高かく、それに反応するのに一苦労をする。


「へぇ~、ビギナーなのに私の連撃を防ぐって案外強いのね。 完全に見縊ってたわ~」

「はぁ、はぁ、それはどうも」

「じゃあ、もう少しスピードを上げるね」

「くっ!? まだこれ以上に出せるのかよ!」


先程から繰り出している連撃による攻撃速度が一段階程早くなる。

さすがに、身体変化系の異能による基礎スペック向上に追い付かずに攻撃が通ってしまう。


「このままだと、ヤバイ」


オレは打開策として、彼女の足元に滑りやすい粘液を生成させる。

それにより、彼女が攻撃のために踏ん張っていた足に力が入らずに、後ろに滑って転ぶ。

これを好機に警棒を触手に変形して、それで床を弾くことにより後ろへ大きく下がることが出来た。


「いてて~、まさかあんな攻撃をしてくるなんて予想外だよ」

「これで何とか距離は稼げた。 こっからオレの反撃が開始だな!」


彼女が立ち上がろうとした時に、触手を突くように真っすぐに伸ばす。

爪で触手による攻撃を防ぐように足に力をいれるが、先程の滑りやすい粘液の影響で力が入らない。

それにより、触手の突きを受け流すことが出来ず、もろに攻撃が当たり後ろに吹っ飛ばされる。


「くっ! 今のは効いたよぉ。 でもぉ、無様を晒すような攻撃をされたから、少し本気を出すねぇ」


彼女は羽を大きく広げて羽ばたく。

1m程浮遊して、そのまま突進をする。

その速度は先ほどより遅いが、十分に言えるほどの速度である。


「これであなたの変な液体を通用しないよ」

「そうだね。 でも、足を封じたことは大きいさ」


粘液生成で滑りやすい粘液を生成して、そのまま触手に垂らす。

突進してくる彼女に対して、一本の触手を伸ばして叩き落そうと床に向けて下す。

だが、速い速度で飛行しながら旋回して回避をする。


「ぷぷぷー、それじゃあ当たらないよ~」

「うっ……」


手を前に出して爪で突く攻撃を防ぐことが出来ずに、ゲージ《HP》が減少する。

まだ、攻撃は終わらない。

着地後、すぐに後ろに振り向いてそのまま切り裂いていく。


ダメージを食らってしまったが、戻した触手を再度床に目掛けて伸ばして距離を稼ぐ。

衝撃により後方に下がることに成功したが、力が入らずにそのまま転んでしまう。


「……足の力が抜けた」

「私の爪はね、直に接触すると体力を奪うことが出来るんだよ~」

「何だそれ……」

「ビギナーの君にいいことを教えてあげるよ。 身体変化系で生物に変身する際にね、その元になった生物の力が使用できるの。 これを種族特性って言うの。 勉強になったね、えらいえらい♪」

「飛行できるのも種族特性か」

「ピンポーン♪ 当たりだよ」


特殊能力と身体強化のハイブリッドを持つなんて、身体変化系の異能ってチートすぎないか……。

縁のあの回避能力は、種族特性の影響なのだろうか。


「じゃあ、続きいっくよぉ~」


彼女は再び飛行をして素早く接近してくる。

飛行状態だと、こちらの攻撃を簡単に回避されてしまう。

ならば、攻撃をさせないカウンターをするしかない。


二本の触手を顕現をそのままに操作を解除して、力みを無くす。

それを自分の周りを無作為に高速で打つことで、ドーム状に囲むことで鞭の防御となった。


「そんな攻撃に何の意味があるのかなぁ~」

「だったらこの鞭の防御壁を突破してみればいいさ」

「~っ! 煽るねぇ~。 一方的にダメージを食らってるビギナーくせにぃ~」


触手に媒体にしているのは鉄だ。

その鉄製の鞭で撓らせていることで発生する遠心力の威力はその爪を砕くことが出来るだろう。


「ふんっ!」


鋭い爪を前に出して突進して、触手の防御壁を突破しようと試みるが砕くことはなかったものの多段による打ちの衝撃で弾かれる。


「なかなかやるじゃない。 たしかに突破できなかったけど、その防御はいつまで続くのかなぁ~」

「たしかにずっと手首を回すのは疲れる。 だったらこれならどう?」


防御壁が崩れないように触手で打ちながら、一歩また一歩と少しづつ彼女に向けて近づく。

結界による高さと幅の制限によって、飛んで逃げることが難しく徐々に追い詰めていく。


「これは……ちょっとやばいかもぉ……」


彼女はもう逃げ場なくなり、さすがに焦る。


「前言撤回。 ビギナーいえ、蛇谷さんって強いのね。 負けるのは癪だから全異能を解放するね」

「はい! シニアクラスのトップレベルの本気が見れるなんて感激しますっ! 」

「勘違いしないでね、本気じゃなくてこれが通常だからぁ~。 まぁ、異能レベルの差があっても対等として扱うんだから十分蛇谷さんは強いわぁ~」


彼女は再び体中が光に包まれる。

光が解き放った後の姿は変わり、頭部に生えていた角と背に生えていたは翼が一回り大きく、下半身は先端がハート型の黒い尻尾が生えていた。

先程まで着ていた服がなくなり、黒のビキニに似た格好に変わっていた。


「エッッッ、すぎるっ!」

「あんまりジロジロと見ないでくれるぅ~? すっごく恥ずかしんだからぁ」


変身後から彼女の胸部をじっと見ていたため、彼女は腕で胸部を隠してしまった。

そして、さっきから場外の歓声とシャッター音がうるさい。


「カメラの前でこの格好は恥ずかしいから、早めに終わらせるねぇ~」


そう宣言した後、一瞬で姿が消えたと思ったら防御壁で打っていた触手が細切れになって床に落ちた。

さっきまで追い詰めていた技がたったの一瞬で簡単に敗れたにより、認識が出来ずに放心して身体が固まってしまった。


彼女は先程までと違い、大幅に肉体能力と爪の強度が格段に向上していた。


----------------------------------------------------


作者のモチベの向上のため、「♡」、「★」と応援コメントを気軽にお願いしますm(_ _)m

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る