第23話 涼香と組手! 粘液 vs 水
ここ最近は充実の日々が続いている。
学校の授業による文化祭準備で披露する芸を建前に異能の修練をして、放課後は三人で天恵道場で武術と異能を修練している。
出し物は触手の精密の操作が必要で、棒のように長く真っすぐに保つことが難しく、集中力を鍛えられる。
糸を使った芸のため、糸を代用に新たな異能である"粘液生成"を使って、サイズは細長くて伸縮が出来て、表面は粘着性がない物質を生成しようと、練習が続く。
道場では、新たな異能を駆使して触手に粘液を纏わせることで、攻撃を滑らせて避けることに成功した。
そのおかげで、打撃攻撃を無効化により組手で、一度も勝てなかった武藤さんを完封することが出来た。
試合後は、お互い体中が粘液でベトベトだったが、疑似異能の結界から出れば異能の効果が打ち消して元の姿になった。
「ゆりっち、レベルが上がってから絶好調よね。 ウチも負けちゃったし」
「粘液が意外と戦闘に役に立つとは思わなかったよ、いつもベタベタになって不快になるけど……」
「あはは、それは仕方ないッショ、今度からはいい匂いの粘液を生成したら不快感が軽減すると思うからやってね」
「それいいね! ボディーソープみたいな感じか! 最近、勝率上がってから、試合が楽しくて早く戦いたいよ」
「だったら次、私と組手しない? 強くなったゆりちゃんと手合わせしたいな」
「いいね。 まだ涼香と試合してないし」
「ふふっ、私だからって手加減しないでよ?」
「するもんか、涼香は強いから逆にオレが手加減される側だろ。 まぁ、お互いに手加減しないためにここは賭けをしようぜ」
「賭け? いいけど、勝者は何を得るの?」
「やはりここは、定番の"負けた者は一つ何でもする"でいいんじゃない?」
「何……でも……?」
「あぁ、ただし涼香が考えているようなことはダメだぞ。 ちゃんと全年齢版で出せる範囲ね」
「それって、R-17な行為までならOKってことっ!? でへへ」
「すずかっちの解釈っ!?」
ということで、涼香と組手をすることになった。
試合前にメーターを道着の胸部に取り付けて、結界内に入る。
組手なので、武器を使わずに己の肉体と技能、異能を使って試合をする。
「お互いに本気じゃないけど、全力でいこ」
「うん。 私が勝ってゆりちゃんに何でも……、させる!」
組手が開始されると、涼香は両手の人指し指を立ててこちらに向けて指す。
「今までは生成だけしか出来なかったけど、異能が進化して生成する時に運動エネルギーいじれるようになったことで、こんな風に放出することが出来るなったんだから!」
指先から放たれる水滴を飛ばす。
「指銃って言ったところか? カッコイイね。 でも、オレも負けられないよ」
粘液生成でオレの手からドバドバとスライムを分泌させる。
腕を振ることで粘液が手から飛び、接触した水滴は威力が減少して、すぐに地面に落下する。
「そんなに粘液を出して大丈夫? すぐに疲れたりしない?」
「安心しなよ、この程度の量は何十発放っても疲れないさ。 そのために毎日ランニングしてんだから!」
「さすがゆりちゃん! だったら、もっと行くよ!」
涼香の指先から水滴をマシンガンの如く連射する。
それに対抗するために、一度手を平同士を合わせてゆっくり離すと、幅が手の平サイズの分厚い粘着性に特化した粘液を生成していく。
それを上下に動かすことで遠心力を生み、連射した水滴を捕まえていく。
「まさか、私の
「ぶっつけ本番でやってみたけど、思った通りに成功したぜ。 もし、涼香が水鉄砲で撃ってたら貫通したと思うけど……」
「ゆりちゃん、本当にすごい、すごすぎる! あぁ、かっこいいよぉ……」
「試合中に愉悦に入るの、やめてよ!? そういうのは後にして!」
「うふふ、そうだね。 試合中のゆりちゃんを楽しむね!」
次に涼香が繰り出したのは、足元に水を生成して滑らせることで移動速度を上げていく。
「次は肉弾戦か、だけどオレには通用しないよ」
「武術では私の方が勝ってるから、近寄っただけで投げれるよ。 特に粘液でベタベタなゆりちゃんは滑るからより効果的だよね?」
「くっ……、だったら、これでどうかな?」
手で握れるサイズの粘着性がある粘液をボール型に生成して、涼香の手前で落ちてくるように投げつける。
「それを投げても当たらないよ!」
「それはどうかな?」
数ある一つがスイスイと足を滑らせて近づいてきている涼香の足元に落ちる。
「うにゃっ!?」
それにより、足が掬われて転ぶ。
「上半身に当てると思っただろ」
「そうね、水を発射するのに手を使ってイメージをしているからね、そこを封じられると思ってたよ」
「えっ、そうなの?」
「えっ……?」
お互いに首を斜めに傾げた。
さすがにそこまで考えていなかった。
上半身に狙っているフェイントで、重い粘液が足に来るようにしていただけだ。
「それはさておき、これで動けないだろ?」
涼香は足を上げてようとしても、粘液が伸びて離れることができない。
そのため、この場から動けない。
「ゆりちゃん……何する気?」
「へへっ、粘液塗れにしてやるさ」
「そんな……! こんな皆が見ている前だなんて……!?」
「騒いでも無駄だぜぇ、抵抗、出来ないもんなぁ!」
「きゃー♪ ゆりちゃんにお・そ・わ・れ・るー!」
目の前にいる子は、組手の最中に表情は嬉しそうにノリノリで演じている。
自分も悪ノリしているから文句が言えないけど。
「冗談はさておき、ここで賭けに負けたらいけないので、本気でいくよ」
「急に正気に戻るなよ……。 それで、この状況で何が出来るのさ」
「まぁ、見てて」
涼香は立ち上がって手の後ろに伸ばして、床に当たるように角度を付けてから手から水を放出する。
それにより、水流の水圧を利用して高速移動をする。
さらに付着していた粘液が水流によって洗い流される。
すぐに拳が当たる間合いまで移動して、そのまま蹴りを入れる。
「はやっ!? 滑らせろ、粘液」
「この速度では間に合わないよ!」
「ぐふっ!?」
さすがに粘液生成が追い付かずに、高速移動によって何倍も強化された蹴りを真面にくらってしまう。
これにより、7割ほど光<HP>が失った。
「はぁ……、はぁ……、ごめんね、ゆりちゃん。 でも、痛覚はメーターが防いでくれるから大丈夫よね?」
「あぁ、大丈夫だよ。 しっかし、今の攻撃はさすがに効いたよ、生身だったら死ぬレベル」
「頑張った甲斐があったよ。 あんなに一気に放出したから体力がかなり消耗したよ」
「あんなに水を生成したら、疲れるだろうよ。 だからって、手加減はしないけどなっ!」
オレは道着の袖を掴み、触手へと変化させる。
そこに流体に近い粘液を生成して、触手に垂らす。
所謂、水を吸ったタオル状態だ。
さらに表面が粘液なので、滑らせることが可能だ。
「くらえ、涼香!」
触手を鞭の様に波立たせて打つ。
その威力は鉄パイプで殴ると変わらないであろう。
「くっ、痛いっ」
さらに連続で触手を打ち、光<HP>を減らしていく。
涼香はその連撃を手で防ぎながら、ダメージを減らすことしか出来ない。
攻撃が当たる度に、手に粘液が付着することで触手が当たると滑らせて、ほかの箇所にまでダメージが通る。
「涼香が粘液塗れになったね、ちょっと如何わしい気分になるよ」
「まさかゆりちゃんが鞭で叩く女王様に気分になって興奮してる?」
「するわけないだろ!? オレは大切な子を甚振る趣味はないぞ」
「大切な……子? それって告白?」
「ぐっ……。 ちがっ、ただの親友って意味だよっ!」
「ざーんねん。 告白だと期待したのになぁ……」
「今、攻撃受けてるのに余裕あるように見えるんだが」
「ふふっ、こっからとっておきを出すから見ててね」
涼香は手をオレの方に向けたと思ったら、手を触手の動きに合わせて動かす。
そこから、勢いよく水を放出して、触手が簡単に弾き返される。
「くっ!? 水圧!?」
「ゆりちゃんの技をパクるね!」
「えっ?」
オレと同じように水を放出しながら鞭を打つように波立たせて攻撃を行う。
その威力は、先ほどの触手攻撃の何倍の威力だ。
「簡単にやられると思うなよ」
オレは左右に腕を広げて、触手で右は反時計周り、左は時計周りに高速回転させて水の鞭から防ぎつつ、回転の遠心力を利用して触手に垂れている粘液を飛ばす。
この回転によって飛ばされる粘液は水より重いので威力は、涼香の技の水弾丸<アクアバレット>以上だろう。
「ふふっ、お互いの技を意識し合うなんて、まるで相思相愛だね!」
「かもな!」
「……えっ? ここで、キュン攻撃は反則だよぉ!」
涼香はガス欠なのか一気に放出している水が弱まり無防備に状態となる。
そのため、飛ばしていた粘液が大量に着弾したことで勝負がついた。
「負けちゃったぁ……、うぅ、悔しぃー……」
「よし、涼香にも勝ったぜ。 これで涼香はオレに"何でも"されることが決定したな」
「はぁー……、賭けだもんね、仕方ないね? 何するの? エッチ?」
「直球だな、、おい。 というかR18行為はしないって」
「じゃあ、何?」
「……まだ考え中だよ」
「気になる……。 はぁ、ゆりちゃんの液で体中ベタベタだね、責任取って?」
「ちょい、言い方っ!? 結界から出たら元通りだから、そこまで我慢して」
「力が入らなくて歩けなーい。 おんぶしてー」
「仕方ないな」
オレは涼香を背負い結界から出る。
体中は元通りだが、消費した体力は戻ってこないので、二人で床に座りゆっくりと休憩した。
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あとがき
結局、涼香とイチャイチャ。
もっとイチャイチャしろ!
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