第18話 新たな可能性
オレはデバイスで武藤の試合のアーカイブ映像を視聴して、手が震えていた。
これは武者震いかあるいは戦慄なのか分からない。
ただ、一言思うのは。
「すげー、つえぇー」
今のオレでは到底敵わないと分かるくらいに実力差が分かってしまう。
「この青陰選手?の異能は何だろう。 初手の粉は袋から出して、火はマッチで起こす。 たぶん、現象系ではない分かるから最後の攻撃の火の動きから、火を自在に操る能力かぁ」
現象系だったら隙が無くて勝てないと思っていたが、物質操作なら触媒が必要だから初手に速効をすれば勝てるかもしれない。
もし戦うなら、もう少し自分の異能の練度を上げるしかない。
それか、レベル上げか。
「……ゆり……ちゃん?」
「おっ? 涼香起きた?」
膝枕して寝ていた涼香が起きたようだ。
「っ!? 今の状況って……、ゆりちゃんのひじゃまくらぁーっ!?」
「あのー涼香? さすがに足が痺れたから退いてくれないかな?」
「やだー!」
意識が戻り状況を把握すると、涼香は起きることなくオレの太腿に顔を埋める。
「ちょっとっ!? 息が擽ってるから! そのまま膝枕していいから、それやめて」
「やった! 分かったぁ、はふー」
涼香は身体を回転して仰向けに戻った。
「ゆりちゃん、さっきからデバイスで何見てたの?」
「これ? さっきビギナークラスで行った試合映像だよ。 めっちゃ強い選手だから涼香も注目した方がいいよ。 たぶんこの子、この会場で一番強いかも」
「へぇー、ゆりちゃん、その子と戦ってみたいんだね」
「いつかは戦ってみたいかな? 今の状態なら勝つ見込みは1割程度かもね」
ここで涼香が見えやすい位置にデバイスを持っていき、動画を再生する。
「この子強いね。 爆炎に炎の攻撃、一発の威力が高いわ」
見終わると、冷静に感想を述べていた。
その体勢で冷静で言われると、シュールな光景だ。
「涼香は午後どうする? オレは少し休憩したらマッチングするけど」
「ゆりちゃんもやるなら、午後も試合に出るよ。 2試合目で今回と同じくらい披露したら無理だけどね」
「それはオレも同じだよ」
それから、意思消沈してぐったりとしている武藤さんと合流して、3人で昼食を取る。
その後はそれぞれ各自に試合を出た。
本日の成果は、オレと涼香は計3戦して3勝した。
武藤さんは計4戦して2勝した。
初めての大会で、好成績を収めたことになる。
◇
翌日経ち、オレは一日中ベッドの上で過ごしていた。
さすがに疲労の限界で身体に力が入らない。
一試合ごとに得られた経験は、確実に成長することが出来た。
常に触手の攻撃を最適化することが出来た結果、今までとは異能の力強さが一段階上がった気がする。
「今朝から何か違和感あるんだよなぁ……。 不快感はないけど、何だろうこれ……」
この感覚が不安で、チャットメッセージで涼香に相談する。
『それってもしかしたら、レベルが上がったんじゃない?』
『まじでっ!?』
『たぶんだけどね、お姉ちゃんも同じようなことが起きてたから。 今日、一緒に鑑定屋に行ってみる?』
『うん、行く!』
『やった、デートだね! これから準備するよ』
『オッケー! じゃあこれから1時間後ね』
デートが決まったことで、着替えを行う。
立って着替えるのが面倒なので、異能の触手を手足の様に操作して服を着替える。
一階へ降りるのも触手を使って体を支える。
自由に扱えるとすごい便利な異能だと再認知する。
だけど、外見が真面なら好尚な異能だと思う。
触手で玄関の扉を開き、家を出る。
今度はゆっくりと歩いて、前回のデートと同じ待ち合わせ場所に向かう。
----------------------------------------------------
作者のモチベの向上のため、「♡」、「★」と応援コメントを気軽にお願いしますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます