第15話 初陣! vs 兜森

初戦の相手は、高校一年生の少女――兜森かぶともり 聡子さとこ

彼女はビギナークラスで異能レベルは1で4戦3勝している。


「まさか、対戦相手が初心者だなんてね。 いきなり黒星を付けられるなんて運がない子」


目の前にいる彼女は自信満々な表情で、腰まで伸びたクセのない黒髪を靡かせる。


「でも道着を着てるから、それなりには戦えるのかしら。 結構いるらしいよ、指導もなく戦闘経験がない状態で試合に参加する子って。 まぁ、私はこれまでそれなりの戦績の子と戦ってるから、甘くないけどね」

「そうー……、ですか」

「興味無さそうな反応ね」

「だって、今から戦う相手に虚栄を張って自分強いアピールされたらねぇー」

「私が……、虚栄張っているのか、これから分かることよっ!」


対戦相手の彼女に一方的に煽られた。

デバイスで表記された通り彼女は今のところ勝率7割と順調な成績を持っている。

ここでマウントを取られると対戦中に心理的優位を与えてしまう。


そろそろ試合が始まるので、帯に閉まっている警棒を片方ずつ持って構える。


「ほう、武器持ちか。 そんな殺傷力が無さそうな武器で私に勝てると思うなよ?」

「そっちこそ、フィジカルだけでこのオレに挑むなんて無謀だね」


そこで準備を終えた審判が前に出て、合図として礼を行い試合が開始される。


「いくぞ、初心者!」


彼女は異能を発動したのか、長い黒髪が天井に向けて立っていく。

その髪は螺旋状に絡まり、一本角へと変化する。


角をこちらに向ける様、顔を下向きにして突進する。


「何だその角っ!? めっちゃ殺意高けぇ!」


だが、速度は女性の平均速度より少し速い。

おそらく、形状変化だけで身体能力は上昇していないように見える。


「だが、この程度なら何とかなるだろ! 」


オレも攻撃に対抗して、警棒を触媒に異能を発動する。

二本の警棒の先端からにゅるにゅると触手が伸ばしていく。


前を見ずに真っすぐに突進を横側に一歩後ろに避ける。

オレに背を向けたところを、触手で鞭のように打つ。

しかし、その攻撃は角の重さを利用した素早い旋回により触手を弾く。


「鉄の鞭が弾かれたっ!?」

「その程度の強度で私の角が敗れると思う?」

「思ってましたが?」

「くっ、小癪な!」


再度、オレに目掛けて突進をする。

彼女がこちらに来る前に体に目掛けて触手で打つが、触手に当たるように方向を合わせて弾く。


「なっ、前を見ずに攻撃を弾くだと!?」

「貧弱な鞭ね」

「オレの異能はこの程度だと思うなよ」


鞭として打った二本の触手を素早く縮まして元の形をした警棒に戻してから、再度触手に変化させる。

それを槍のように伸ばして突く。

彼女が髪を装甲に変化させて、強固な鎧が鉄製の触手が衝突する。

装甲は鋭い先端を弾くことが出来ずに食い込みながら突進を押し返していく。


「ぐあっ!? くっ、お前の異能は鞭に変化する能力じゃないのか。 まるで槍のように形状を変化しやがって」

「あんたの異能も髪の毛の硬度が異常だな……」


彼女は触手の攻撃によって強く床に当たり尻もちを搗く。

そのダメージによりメーターは2割程減っている。

どうやら、突きは有効のようだ。


突進しかしてこない相手だ、今回の相手は案外勝てるかも知れない。


彼女はゆっくりと立ち上がり、尖がっていた髪型を解き元の状態へ戻ったところ、こちらに走っていく。

それにより、先ほどよりやや素早い速度だ。


「いくら異能を解除して身軽になったとしても無駄だ!」


オレは二本の触手で挟むように払う。

だが、彼女は頭を縦に振りながら異能を発動して、角で床を叩きつけ反動を利用して高く跳び、その攻撃を避ける。

そして、着地したのは角の間合いだった。

彼女は踵を軸に円を描くように払う。


まだ触手を戻すことが出来ずに隙が生れたところを防御が出来ずに攻撃を受ける。

その威力は空洞がない金属バットにフルスイングを受けたような衝撃だ。

足で踏ん張って耐えることが無価値のように、容易に体が吹っ飛び床に転がっていく。

メーターによる結界によって、損傷はないが衝撃を受けた痛覚により怯む。


「ぐっ……。 くそっ、一気に4割持っていかれた!」


追撃として、角を発現した状態で再び突進する。

角で貫く姿勢ではなく、角を下向きだ。


防御を構えようと、ゆっくりと立ち上がろうとしたところに彼女の角に下から打ん投げられる。

そして、打ち上げられたところを同じ高さまで跳び、床に目掛けて角で叩きつけられる。


「どうだ、私の自慢の角は」

「つ、つぇ……」


今のコンボ攻撃でメーターが残り1割5分くらいだ。

もっとスマートに勝つつもりが、想定外にダメージを負ってしまった。


「もうそろそろ限界そうね」

「いや、まだ……だ」

「……そう。 なら、止めを刺すよ」


また躊躇なく突進してくる。

さすがに何回も突進を見れば対処は分かる。


触手を使いあの装甲を貫くように伸ばす。


「もうその攻撃は効かないよ」


彼女は角を左右に振りながら突進して、真っすぐ伸びた触手が簡単に弾かれていく。


「だったら……」


弾かれた触手を急旋回して角に巻き付いて、触手を操作して背負い投げをして床に叩きつける。


「くっ!?」


腹をこちらに向けた状態で倒れている彼女に向けて、追撃として触手を伸ばし確実にダメージを与えていく。

そして、まだ攻撃を続ける。

触手を伸ばしたり縮めたりと連続で繰り返して、怒涛の連撃を繰り出す。


「これでどうだぁっ!」

「くぁあああっ!?」


目にも留まらぬ連撃により、まったく抵抗できずにいた。

それによりメーターの結界が耐え切れずに光に尽きる。


これで試合の決着がついた。


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