第12話 涼香とデート part2
黒を中心として、真紅のラインがあって綺麗な衣装だ。
袖やスカート部分に大きめなフリルがある。
「観賞用としてはいいけど、普段用には向かないよなぁ……」
ゴスロリ衣装を着て試着室にある鏡で姿を見ると、自分の黒く長い髪と、胸の部分が小降りなため強調されないのでよく似合う。
前世からの人格で見ると、鏡に映る自信はまさに美少女だ。
「可愛いけど、重いし熱いから着たくねぇ」
少し着ただけで、服の厚みによって熱が逃げずに留まるため、この時期でも暑い。
「ゆりちゃん、その衣装どう?」
涼香の声が聞こえたと思ったら、試着室のカーテンが開かれる。
「何故勝手に開ける……」
「あら、まぁ! すっごく似合うね!」
「涼香は人の話を聞けよ……」
「我慢が出来なくて、つい開けちゃった、テヘッ♪」
「まぁ、可愛いから許すけど、あんまりやるなよ。 普通に人に見せるは覚悟しないといけないんだから」
「はぁーい。 善処しまーす」
「……おい」
「それより! ゆりちゃんの女の子っぽい衣装は、やっぱり可愛いね! いつもはボーイッシュやパンク系を着てるけど、こういった少女感が似合う~♪」
「はいはい、確かに可愛いけどオレ的にはスッキリしたほうが好みなんだよ」
「たまにでもいいから、一緒に出掛ける時はフリル多めの服を着て?」
「安心しろ、そんな服ないから着ないぞ」
「いいえ、私が買うから着られるよ!」
涼香が手に持っている買い物籠を見ると、先ほどまで試着していた服が入っていた。
一着がそこそこ高いのに数着入ってる。
「まさか、その持っているカゴって……」
「うん、ゆりちゃんにプレゼントするためだよ?」
「そんな高価なの、受け取れないって」
「金銭面は大丈夫だよ、ゆりちゃんの写真で副業してるから!」
「おい、なにさらっと犯罪を告白してんだよ!」
「本当は私だけで独占したいけど、ファンクラブがどうしても、って……、しくしく……」
「ファンクラブって何だよ……。 初耳だよ」
まさか、オレが知らないところでファンクラブが存在して、オレの姿を盗撮した写真を横流しされていたとは……。
普通に恐怖なんだけど?
「私を差し置いて、勝手に作られてたからそれを乗っ取って会長になっちゃった♪」
「ファンクラブについて何も聞いてないけど、情報ありがと。 それって潰すことできる?」
「させないよ?」
「……えぇ。 圧は放たないでくれる? 普通に怖いから」
「ごめんね、つい。 だけど、ゆりちゃんの可愛さを布教するためにあるから、大事なんだよ! もちろん、私だけのゆりちゃんだけど」
「独占はするけど、それはそれで有象無象には傍観者っというわけか。 怖いな」
「大丈夫だよ、ほかの会員は「推せる」や「尊い」しか言わないから☆」
「それって洗脳じゃないよな?」
「そんなことはないよ! みんなゆりちゃんに魅了されているだけだから!」
「それバッドステータスだろ……」
何だかんだで元の服に着替え終わり、先ほどまで着ていたゴスロリはしっかりと買い物籠に入れてある。
「もうオレの服はこの辺でいいだろ……? 元々買う予定なかったし……」
「えぇー。 私はゆりちゃんの可愛い姿をもっとみたいなぁ~」
「求められることは嬉しいけど、オレは涼香の衣装が見たいな」
「そう? なら、私の試着みたい?」
「見たい見たい」
「ゆりちゃんのために服を着替えるから選んできて!」
やっと涼香による着せ替え人形から解放された。
あのままだと、一日中着せられるような気がした。
とりあえず、涼香に似合いそうな服装を見つけるために店内を回る。
涼香はスタイルがいい美少女なので、何のジャンルの服を着ても似合いそうで迷う。
いっその事露出が多そうな衣装を持ってきて羞恥心を煽るのも良さそうだ。
そう思い、少し大人っぽい服が置いてある服を手に取る。
その服は、鎖骨、肩や腹ところが生地が薄く少し透けている感じだ。
それを涼香に元へ持っていくと、笑顔で受け取り試着室に籠る。
着替え終わりカーテンを開くと、そこには女神が現れた。
「どうかな? 似合うかな?」
涼香の白い肌に透ける生地がマッチして清楚なのに色っぽい。
薄い生地からたわわの谷間が薄く見える。
「とてもエッチでいいと思います」
「ふふっ、ゆりちゃんが満足そうで良かった。 ゆりちゃんが選んでくれたから、これも買おうかな」
涼香はオレを見てニヤニヤと笑みを浮かべて反応を楽しんでいた。
まさか、反撃の反撃を食らうとは思わなかった。
涼香は元のワンピースに着替え終わり、買い物籠をレジに持っていき会計をする。
その後は、軽く見て廻ることになった。
◇
ゲームセンターに立ち寄り、プリクラでツーショットを撮ってその画像をラクガキして楽しむ。
その後は、クレーンゲームで好きなアニメのフィギュア取ったり、二人で遊べるゲーム機体で強力プレイして遊んだ。
「いやー、めっちゃ遊んだね」
「そうね。 特にあのシューティングゲームね」
二人プレイで遊べるホラーシューティングゲームで、銃を使ってゾンビを撃退するモノだ。
「ゆりちゃん、ホラー演出に耐性あるのに、アクションで簡単に死んじゃうの笑っちゃった」
「あういうアクションゲームは苦手なんだよ……。 というか、涼香はなんで初見で次々とステージいけるんだよ……」
「鍛えているからね!」
「何をどうやって鍛えているんでしょうねぇ」
「さぁ? もしかしたら、武道で鍛えているかもよ」
「武道だった場合は、もしかしては言わないだろ」
「ふふっ、そうね」
夢中に遊んでいると、小腹が空いてきた。
どっか喫茶店でゆっくりしたい。
「なぁ、少し休憩していかない?」
「休憩っ!? まさか、ゆりちゃんから誘いに来るなんてーっ!」
何を思ったのか、涼香は嬉しそうに口元を手で隠して笑みを浮かべていた。
「別に隠語で言ったわけじゃないよ。 まったく、煩悩すぎるだろ……」
「し、知ってたけど……。 あえて、乗っただけだよ」
「嘘つけ、耳が真っ赤だぞ」
「くっ……」
「んじゃ、女の子らしく甘味を食べてゆっくりするか」
近くの珈琲喫茶に立ち寄る。
メニューは珈琲を中心に、それに似合うデザートが載っている。
メニュー表に載っているスイーツの写真がどれも美味しそうで迷ってしまう。
「へぇ、結構スイーツの種類があるんだな」
「だね。 コーヒーとのセット価格が結構安いね。 セットメニューのスイーツはどれ選んでもいいなんて……」
「迷うよなぁ」
「私はアップルパイにしよっと♪」
「それ美味そうだな。 じゃあ、オレはチョコ系でカヌレを選ぼうかな」
店員に注文して、しばらく待っているとテレビから異闘に関係するニュースが流れる。
『異闘関係のニュースコーナーです! 現在、話題沸騰中の彼女を紹介します』
ニュースキャスターが傍に置いてある液晶モニターを操作して、映像が流れる。
『デビューしてから3週間で、ビギナークラスを突破してシニアクラスに上がろうとしている彼女です。
『ほとんどの対戦相手は、彼女にダメージを与えずに倒していますからね』
『そうですね。 対戦相手の攻撃が空振るだけで、彼女の攻撃だけが一方的に通っていますね』
『一体、どんな異能力なのでしょうか、気になりますね』
ニュースを見ながら、店員から受け取った珈琲を口に持っていき、少し飲む。
苦みが薄く感じる。
それは先ほどのニュースを聞いていたことで、少しの興奮で味覚が薄れたのであろう。
「すごいね。 さっきの子」
「あぁ。 もう異闘でデビューして無敗のまま次のクラスに行くなんて」
「そうね。 次のクラスへ行くってことは、レベル2まで行っている子達も倒していることだもんね」
「何か羨ましいな。 格上相手に通じる異能を発現して」
「ゆりちゃんの異能は、対戦会場に依存するからね。 それに! まだ進化も残っているから大丈夫だよ!」
オレは稽古でいくつか組手を行ったが、どの相手にも中々勝てずにいた。
縁と涼香の勝率が上がっていく中、なかなか伸びないことで少し劣等感を感じている。
「励ましてくれてありがとう、涼香。 触手を生み出して突く以外にもっと別の使い方をしないとな」
「うん。 私はそういう諦めないことが好きだよ」
「オレもいつも味方してくれる涼香が好きだよ」
自分の異能を見つめていると、珈琲のセットメニューで注文したスイーツが届く。
オーブンで焼かれたカヌレとアップルパイの香ばしい匂いが食欲を掻き立てる。
「わぁ! 美味そう!」
「そうだね」
「今は異能なんて忘れて、楽しく食べよ♪」
「うん。 ――涼香。 ほら、あーん」
「っ!? あ、あーん」
今日は涼香とのデートだ。
暗い気持ちにさせて、空気を重くした贖罪で、カヌレをフォークで切って涼香の口に持っていく。
涼香は急に戸惑ったが、カヌレを口に含んだ瞬間、美味しさと幸せの同時接種により、満面の笑顔を浮かべていた。
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