第11話 涼香とデート part1

あれからオレ達は正式に道場に通うことになった。

これであの道場の門下生として名乗れる。

平日の火曜から金曜は、休日は土曜だけ道場に通っている。


日曜日、自室でベッドの上で寝転がりながら漫画を読んでいると、机の上に置いてあるスマホのメッセージ通知音が鳴る。

起き上がってスマホを取るのが面倒なので、ベッドの柵に触れて異能を発動する。

木製の触手を机に向けて伸ばし、スマホを掴み自分の方に持っていく。


スマホを開くと、メッセージの内容は涼香からデートのお誘いだ。

道場の見学を誘う際にデートをするという約束をしていたものの、日にちを指定していなかったので今日誘われた。

彼女のことだから、オレの予定を把握してそうだから、暇してた時にメッセージを送ったのであろう。


『今日の予定は空いているよ』

『よかった♪ これからお出かけしない?』

『いいよ、どこへ行く?』

『街に行って一緒に散策しよ♪』

『了解、今着替えるね』

『待ち合わせは、駅近くの広場?』

『家に向かうでは、ダメ?』

『ダメ♪』

『了解、じゃあ1時間後、駅近くの広場で』


涼香とメッセージアプリと通してやり取りをする。

これからデートすることが決まったので、クローゼットを開きテキトウに服を取って着替える。

服装は上はシャツにデニムの薄いジャケットに、下はデニムのショートパンツでアメリカンカジュアル系に合わせる。


というか、オレのファッションは基本的にボーイッシュしかない。

スカートやフリルなど、心情的に似合わない。


その後は化粧台でナチュラルメイクを施して、最後は鏡で全体的に見る。


「これでよしっと、少し早く終わったけど行くか」


トートバッグを手に取り、家から外に出る。









待ち合わせ時刻から20分ぐらい早く着いたので、テキトウにベンチに座りスマホを取り出しソシャゲをやる。


「ねぇ、お姉さん。 今一人? めっちゃ綺麗な黒髪だね」

「暇だったら一緒に遊ばね? というか、めっちゃ美人やん」


しばらく経つと、オレの前に二人組の男性に声を掛けられた。

まさか、テンプレのナンパに遭遇するとは思わなかった。


「今、友達を待っているので無理です」

「一人来るの、ちょーどいいじゃん」

「俺達も一緒に待つからさ、遊ぼうぜ」


実際に遭遇するとウザイな。

断っているのに、ナンパを続けようとするのか。


「ソシャゲの邪魔なので、声を掛けないで」

「俺達と遊べば、ソシャゲより夢中になるぜ」

「ぐへへっ、後悔はさせないぜ」

「……お前らウゼェな。 いい加減に――」

「汚らしい声と穢れた手で私のゆりちゃんに触れようとしないでくれる?」

「あぁん。 何だテメェ?」

「おぉ、めっちゃ美少女じゃん!」

「何ですか、その下品な目線は潰しますよ?」

「「ひぃっ!?」」


さすがにしつこいので、トートバッグに入っている警棒を取ろうとした時に、周りの温度が低くなるほどの低い声が聞こえた。

その声の主は、男性たちに目線で怯ませるほど殺気を放った涼香だった。

涼香の殺気によって男性たちは萎縮して、即座にこの場から離れていった。


「おまたせ、ごめんねゆりちゃん。 私が遅れたばかり汚されちゃったね……」

「いやいや、オレも最初から強く断っていたら、こんなことにならなかったさ。 穏便に済まそうとするのは無理だったな」

「やっぱり、私がゆりちゃんの家に向かうべきだったね。 ゆりちゃんは凄く可愛いから一人だとナンパされちゃう」

「おまかわ」


涼香は、白銀の綺麗な髪に似合うフリルが控えめなワンピースを着ている。

まさに清楚系お嬢様という感じだ。


「そのワンピース、涼香にぴったりだね。 清楚でめっちゃ好みだよ」

「ふぇっ……、う、うん、知ってるよ♪ だから、着てきたの」


涼香は「えへへっ」と照れながら笑みを浮かべる。

いつもは思考と言動が嫉妬深くてサイコ的な行動したり、よく威圧を振りまく子だが、ちゃんと好意が伝わるので特別に可愛く見える。


「今日のゆりちゃんもカッコ可愛いね♡ 特にショートパンツの締め付けで沈む鍛えられたけど柔らかい太腿がいいねっ♪」

「めっちゃ恥ずかしいこと言うじゃん。 こっちまで恥ずかしくなるのだが?」

「ゆりちゃんが私好みの服装だからだよ♪」

「ただの太腿フェチでしょ……。 まぁオレも人のこと言えないが、せめて口で出すのは控えて」

「銭湯の時は、公衆の面前で私や縁に攻めてたのに?」

「人のこと言えませんでした……」

「ふふっ、攻め攻めなゆりちゃんも大好きだよ♡」

「お、おう……」

「照れたゆりちゃんも可愛いなぁ~」

「っ!? ほら、さっさと行こ」


涼香の攻めで顔が熱くなったので、涼香の手を握り街へ行こうと引っ張る。









この街は娯楽施設やファッション店が多く並び、若者で溢れ返っている。


「涼香はどこへ行きたい?」

「う~ん、ゆりちゃんが傍に居ればどこでもいいけど、やっぱり定番のアパレルショップに行こ。 ゆりちゃんに服を選んであげる!」

「それはいいけど、俺にも涼香の服を選ばせて」

「うん!」


まずオレ達が向かったのは、少し高めなブランドがある洋服店だ。

中に入ると、ファッションによってカテゴリー別に服やズボンが分けられている。

案外便利だなと思いつつ、涼香に手を引っ張られて、ガーリッシュ系が並ぶ棚に移動する。


そこには少女が着るような可愛らしい服が並ぶ。


「この服とこのスカート、ゆりちゃんに似合うと思うの」

「ピンクに白のスカート……、もっとこう黒が中心とかない?」

「ゆりちゃんにはもっと可愛い服を着てほしいの! 似合うって、私が保証するから」

「そう?」


オレは渡された服を持って試着室へ向かい、着替えていく。

鏡を見ると、桃色より少し薄いピンクのシャツに、丈が少し短い白いプリーツスカートを着ている自分が映る。

鏡で側面など見えるようにポーズを取っていたら、試着室のカーテンが勝手に開く。


「あらぁ~、ゆりちゃん服に合ってて可愛い~」

「ちょっと、勝手に開けないでよ!?」

「だって、着替え終わってもまだカーテンが閉まってるんだもん」

「まだ着替えている途中かも知れないから、これからは気を付けてね」

「はぁ~い。 それで、自分でも似合うっと思ったでしょ?」

「まぁ、可愛いけど、全然慣れない……」

「いっつも黒中心でパンツしか着てないもんね」

「うっ。 仕方ないだろ、黒は汎用性高い色だから」

「もっと可愛いを追及して! これとかどう?」


涼香は他の所から持ってきた、フリルが多い衣装を持ってきた。


「ゴスロリじゃん、オレに合わないよ」

「一回だけ着て、お願い。 後で、私もゆりちゃんが選んだ服を何でも着るから」

「ん? 今、何で持って言った?」

「うん、ちょっとエッチなやつでも……いいよ?」


上目遣いでゴスロリ衣装を渡してくるので、仕方なく受け取り着替えていく。

それからも、涼香にプロデュースするファンションショーに付き合うことになった。


「くっ……。 後で覚えていろよ、涼香ぁ……!」


自分にとって精神的に辱めにあった。


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