第9話 猫と水

次の組手が始まる。

お互いに挨拶が終わり、縁は異能を発動する。


縁は頭に猫耳を生やして、ピコピコと動く。

西念は身体の周囲に湯気ように霧状なモノが発生する。


「こちらからいきますよ!」


白いオーラを纏った少女は縁の方に迷いなく接近する。

拳を突こうとするが、先ほど組手していた武藤とは違い、腰を使わずに単純な腕のみでパンチをする。

初心者が殴るような拳だが、見た目以上に力強さを感じる。

これが、彼女の異能の力なのだろうか。


しかし、縁にはその拳を避けるのは容易かった。

レベル1の能力で頭部のみ、猫の力を借りることが出来る。

それにより、彼女の攻撃が1コマ送りのようにスローモーションで見える。

ただし、肉体自体は人間の能力だけなので動きに遅延が起きる。


「これが身体変化の能力……」


縁は異能訓練以降、異能を発動することがなかったため今回で自分の異能に対して自覚する。


縁が避けることに集中しているため、攻撃を繰り出すことせずに彼女が次々と攻撃する。

殴りや蹴りなど攻撃を行っても、避けるのみである。


「そっちも攻撃しないと、練習になりません!」

「すみません。 まだ異能に慣れてなくて………。 それに暴力とかしたことがないので、どうやれば……」

「私も初心者なので、まず最初は形だけでもやってみましょう!」


彼女は攻撃しながら、縁に対して自分なりのアドバイスを言う。


「形だけでも……、こう、かなっ!」


縁が頭の中で思い浮かんだのは、先ほどの組手の光景だ。

武藤が殴ったように、縁も拳を引いてから一気に突く。

その攻撃は彼女の周りに貼った光の膜に命中する。

しかし、メーターにある光が1mmくらいしか減らなかった。


「その調子で蹴りや殴りをして、組手をしましょう」

「はい」


この試合は、ほとんど彼女の指導だけで時間が過ぎてしまい、試合終了となった。

結果としては、彼女の光は削れて縁自身は減らなかった。


「西念さんありがとうございます」

「こちらこそ、私も攻撃に対して磨かれた気がします。 まぁ、全部避けられたのですが……」

「す、すみません。 この状態だと動きが遅く見えるので避けやすくて」

「次こそは攻撃を当ててみます!」


二人は互いに握手をして、元の位置に戻る。


「縁の動きすごかったよ! ずっと避けられるなんて」

「うん、アタシも吃驚したよ、視界が見にくくなる代わりに動きがスローモーションで見えるんだもん」

「これで身体能力が上がったら、絶対に強いよね……」

「縁の耳ずっとピクピクと動いてたけど、あれも可愛かったわ。 まぁ、ゆりちゃんには劣るけど」

「関係なくオレを引き合いに出さないでくれる!?」

「あれは、ずっと相手の攻撃で発生する風?のようなの感じてたの。 アタシにもよくわからないけど」


「次は水上と武藤かな、二人共いけるか?」

「自分はいつでも大丈夫っす」

「私も大丈夫です」


三人で談笑していると、次の組手で涼香が呼ばれた。


「じゃあ行ってくるね!」

「涼香頑張って~」

「ゆりちゃんの仇を討ってくるね」

「いや、死んでませんけど!?」


オレが涼香に向かってニッコリと笑って送ると、涼香も笑顔で返し物騒なことを言ってきた。








組手を行う故に必要な礼を行い、試合が開始される。

武藤の異能は身体変化系でも筋力系なので、接近するしかなく涼香のほうにすり足で向かう。

だが、涼香はそれぞれ人指し指を正面に向けて立てて銃を模る。


「何かするっすね!」


それを見た彼女は、一気に距離を詰めようと走る。

向かってくる彼女に向けて涼香は指先がら水を生成して発射する。

顔に掛かった彼女は一瞬、視界が閉じる。


「ふんっ!」


その隙に涼香は、懐に入り脇腹に向けて、拳を上に向けて下突きを行う。

攻撃が命中して、彼女の光が減少する。


「やるっすね! 動きが経験者みたく俊敏」

「ふふっ、あなたと一緒で私も一応武道をやっていたものですから」


涼香はすぐに彼女との距離を空けて、再び両手を銃の構えにする。


「なるほど……。 なら、長期戦せずに一撃で沈めるっすよ!」

「私はここでゆりちゃんにカッコイイ勇姿を見せて、惚れさせるからね。 真面目にいくよ!」

「動機が真面目じゃないっす、よ!」


彼女が接近して右拳で胸元を狙うように突く。

しかし、彼女の前腕を左手で押すと、パンチが逸れる。

がら空きになった箇所に目掛けて、涼香の右拳で下突きする。


「――っ!?」

「結構メーターにダメージが入ったね」


彼女は完璧に攻撃が防がれて反撃を喰らったことに目を丸くする。

しかも、涼香は余裕そうに応えてくるので、驚きが隠せない。


「今の突きをよく防いだっすね……。 今のパンチは掠ってもダメージ入るレベルなんすがね……」

「ふふっ、水は色んなところで使えるから便利だよね。 ほら」


涼香は彼女の右手に向かって指を指すと、そこには道着が濡れていた。


「まさか水で滑らせて威力を弱めたっすか」

「そういうこと」

「手ごわいっす……。 視界を奪ったり、攻撃を逸らされたり。 ここまで異能を扱えるなんて……」


現象系は異能がほぼ未知の感覚器官が付け足されたような感じなので、慣れるには時間が掛かるはずだが、涼香は一か月で水生成を応用するレベルまで扱いするようになっていた。

そこからは、異能と武道の組み合わせにより武藤は手も足も出ずに時間制限により試合が終わる。


「はぁはぁ、強いっすね、水上さん」

「そちらこそ、強かったわ。 さすがに真剣にやらないとダメージが入るからね……。 あの威力だと、大きく削られるからね」


二人は互いに握手をして、元の位置に戻る。

それからは、門下生同士の組手を行い、本日の稽古が終わる。


稽古を見学しに来たはずなのに、涼香以外の二人はは組手により体力が消耗していた。

稽古疲れで汗も出ているので、さすがに着替えを持ってきていないのでこの後は三人で話し合い、近くの銭湯に行くことが決定した。


-----------------------------------

あとがき


今週も伸びてて吃驚しました。

閲覧とフォローしていただきありがとうございます!


話が変わりますが、敢えて相手の異能力名を書いていないのですが、こういった後書きでキャラファイリングを書いたほうがいいのでしょうか?

書くとしても、描写、判明した異能しか書きませんが……。


作者のモチベの向上のため、「♡」、「★」と応援コメントを気軽にお願いしますm(_ _)m

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る