第8話 初戦! オレっ娘 vs 武道少女

これからオレ達は、この道場の門下生と組手の体験を行う。

相手は白帯で最近入門したばかりの子達だ。

この道場の組手は基本的にランダムで行うため、この子達は常に格上と組手をしている。


「次は……蛇谷と武藤、二人はいけるか?」

「押忍。 師範、自分はいつでもいけるっス!」

「は、はい! 大丈夫です!」


呼ばれて応えた少女は、The空手少女という見た目で、茶髪のショートに小麦色に日焼け」している少女だ。


「初めての異能を使った戦いさ、まずは慣れていくいきなさい」

「はいっ!」

「ゆりちゃん、頑張って~」

「ゆりっち~ファイトっ!」


渡されたメーターを胸元に着けて、中央へ行く。

二人はお互いに向き合う。


「押忍っ! 試合お願いします!」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」


初めての対人戦で緊張して上手く声が出なかった。


「先ほどと条件は同じで試合時間は3分。 審判に礼、お互いに礼、では始め!」


審判のお婆さんと対戦相手である武藤に礼を行う。

試合が開始した後、彼女はすぐに腕を前に出して、防御の構えをする。


「行くよ! 武藤さん」


オレはすぐにしゃがみ、床に手を当てて異能を発動する。

畳を媒体に触手を二本生やして、そのまま彼女に向かって突くように伸ばす。


「ほう、彼女は物質操作系か。 レベル1に対してあの攻撃速度、中々の異能じゃな」


触手による攻撃が当たる寸前。

彼女は両手で触手を掴んで、そのまま床に叩きつける。


「んなっ! いくら草が素材だからって簡単に無効化するなんて……っ!?」

「どうやら、私のほうが異能として有利そうっすね」


彼女はすでに異能を発動しているようだ。


「だったらこれでどうだ」


オレは道場の壁のほうに走り、コンクリートに触れて触手を二本生やして、挟み撃ちするように薙ぎ払う。


「っふんす!」


しかし、触手は横に伸ばした両手によって攻撃が防がれた。

攻撃の衝撃により、一歩半ほど後ずさる。


「今のはなかなか効いたっすよ」


掴んでいる触手に力を入れると、触手に罅が入り砕け落ちる。


「ウソでしょ……」


自信満々に放った攻撃がコンクリートの強度を持った触手を防がれて、軽く絶望する。

壁から手が離れたことにより、触手は壁の方に縮み壁が完璧に元に戻る。


「次はこちらからいくっすよ」


彼女は迷いなくオレの方に走って向う。

オレはそれを阻害するように、次々を触手を生やして突くように伸ばす。

それを裏拳で弾きながら防ぎつつ、破壊する。


「本当に武藤さんって、入門したばかりなの……?」

「そうっすね。 この道場に最近入ったばかりっすよ」

「この、道場……?」

「自分、元々空手を習ってたっすから」

「わぁ~お、だから、動きにキレがあるんだね」


彼女はしゃべりながら、徐々に近づいてくる。

オレは悪あがきに手当たり次第に触手を生やして、攻撃するが一発一発の拳による攻撃で防がれる。


「蹴りで防いだりしないの?」

「拳の方が使い勝手がいいので」


なるほど。

腕、手に反映する身体変化系の異能みたいだと推測する。


「武藤さんの弱点を分かったよ!」

「弱点……ですか?」


オレは二本触手を生やして、一本は足に向かって薙ぎ払う。

その攻撃に対して、足で防ぐことせずに跳んで避ける。

その一瞬を狙い、もう一本の触手で腕に攻撃する。

彼女は触手に向かって拳を突き出すが、触手はうねりながら避けて突き出した腕に絡みつく。


「くっ!?」


足に向かって薙ぎ払った触手を操作して、空いた腕に絡みつく。

両手を絡みつかれた状態で、空中に吊るされた彼女は腕に力を入れているがビクともしない。


「ぐへへっ、これで封じたね」

「弱点ってこれっすか?」

「そう。 武藤さんの異能は恐らく筋力を上昇するような異能。 パンチは床に着いた状態じゃないと力が発揮しない。 なら、空中に留めるようにすればいいってことよ」

「なるほど、勉強になったっす」


空中で縛られながらも、彼女は余裕そうに返答したのが少し気に掛かる。

オレは、縛っている触手の絡みを強く絞ることで、メーターにダメージを与える。

このままジワジワを削れば、オレの勝ちである。


「確かに、パンチの威力が出ませんが、こっちも忘れては困る、っすよ!」


浸食しながら絞っている触手により、彼女の手は手首を動かせば触れる程度まで来る。

それを好機に掴みを力をいれると、触手が砕けて解放される。

そのまま彼女はオレに向かって走る。


「なにっ!?」


すでに目と鼻の先にいる彼女。

右拳を引き、すぐに突く。

オレは、顔を隠すように腕でガードを使用とするが、目の前に光の膜が表示されてパンチを防ぐ。

その代わりに、メーターの光が失って、空になる。


「ここまで!」

「一撃かよ……」

「押忍っ!」


審判であるお婆さんが止めに入る。

オレは心から言葉が漏れ、彼女は挨拶して少しほどけた道着を整える。


「初めてなのにいい勝負であった。 いいセンスを感じたよ」

「あ、ありがとう……ございます」


試合後で疲れたオレに対してお婆さんが褒めてくれた。


「武藤もいい試合だった。 課題も見つかったし、今度は吊るされた時の対処も考えるように」

「押忍!」


この試合はオレの完敗だった。

これが身体変化系の強さで戦い方、触手で突いたり払ったりすだけではなく、異能の系統によって戦い方を変えて有利な状況にするようにしないといけないと学ぶ。


オレは二人がいる方に戻る。

この試合により全身が火照って汗が出ているので、手で仰ぐ。


「お疲れ様、ゆりちゃんいい勝負だったね!」

「うんうん。 あれってあんな風に使って戦うんだね」

「ちょっ、涼香抱き着くな!」

「すんすん、ゆりちゃんの汗の匂い……。 いい……」

「今、稽古中だから! 怒られるよ!」


急に抱き着かれたオレは、近づいてくる涼香の顔を押し、縁は剝がそうとしている。


「次の試合は猫宮と西念、二人共いけるか?」

「はい!」

「大丈夫です!」


次の試合は縁だ。

その間、離れない涼香に寄りかかりながら観戦する。


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