第6話 稽古見学
それから道場に門下生たちがやってくる。
道着を着てから来る人や、道場で着替える人で様々だ。
道着には帯が巻いており、帯の色によって階級が変わる。
「すっご、カッコイイね」
「だね、皆強そう」
道場の隅で座らせてもらっていると、一人のお姉さんが近づいてきた。
「あなた達が見学者?」
「はい、そうです!」
「折角だし、一緒に稽古やる? 少し古いけど、余ってる道着もあるし」
「いいんですかっ!?」
「えぇ。 私たちも人が入ってくれるの嬉しいからね」
お姉さんに着いていき、更衣室へ案内してもらう。
「うん、あなたたち似合うじゃない。 道場に通う気になった?」
「まだ道着を来ただけなので……」
「あはは。真面目に応えちゃって可愛いね。 金髪ちゃん」
「縁って意外と真面目なんだよね。 ギャルのくせに」
「ギャルは関係ないでしょ!」
「いいねー、仲良さそうで。 さてと、そろそろ稽古だから行きましょうか」
三人は少し黄ばんだ道着を着て、部屋から出る。
帯の結び方はさっぱり分からなかったので、お姉さんにやってもらった。
涼香だけ一人で済ませていたけど、慣れているのかな?
天恵道場の稽古は、まずは準備運動から始まり、基本の動きと受け身や防御の動きをやってから、格闘術のみで組み手とクラス別で試合形式の稽古を行う。
ここで習う格闘術の意味は、異闘で異能の相性が悪い場合に対しての攻撃手段となる。
特に物質操作系は異能に発動条件があるものが多いため、発動するための隙を作るのに有効だ。
最も真価を発揮するのは身体変化系だ。
肉体に対して何等かの強化をするため、動物の一部分の力を借りれるような異能だと爆発的な攻撃力になるであろう。
「お祖母ちゃん、私が見学者を見るからいつも通り稽古をお願いね」
「はいよ」
先ほど案内してくれたお姉さんはオレ達の前に来る。
「これから、私が稽古で指導するね」
「は、はい!」
「先ほどの聞こえたのですが、お姉さんはこの道場の師範の親類ですか?」
「自己紹介しないとね。 私は
実は緑色の髪で長い髪を後ろで結び、ポニーテールにしている。
そして、茶色の瞳が特徴の道着と似合うスポーツ少女だ。
実が着ている道着に巻いている帯の色は緑色。
これは、異闘のクラスごとにこの道場では帯の色を変えている。
「エキスパートクラスって何?」
「縁って異闘のクラスのこと知らないんだね……」
「ニュースで放映されるくらいのクラスは知ってるけど、詳細は分からないのよ」
「折角だしお姉さんが説明しましょうか」
異闘には、六つのクラスで分けられている。
下から順に、ビギナークラス、シニアクラス、エリートクラス、エキスパートクラス、マスタリークラス、チャンピオンクラスとある。
クラスの昇格条件は勝率、勝利回数と異能レベルだ。
ただし、クラスごとに必要勝利数と勝率数が変わる。
また、負け続けるとシニアクラスから降格が存在する。
クラスごとにいる異能者の異能レベルは、運営からデータとして出ている。
ビギナークラスはレベル1,2。
シニアクラスはレベル3,4。
エリートクラスはレベル5,6。
エキスパートクラスはレベル7,8。
マスタリークラスはレベル9。
チャンピオンクラスだけはレベル10限定だ。
レベルは低くても、上のクラスには行けるがほとんどが降格するため、このレベル帯で安定している。
この道場では、異闘のクラスに従って帯の色が変わる。
下から順に白、黄、青、緑、茶、黒となっている。
「クラスごとの異能レベルについて、オレも初めて知ったなぁ」
「お姉さんって、かなりの強者だったんですね」
「そりゃあ、お祖母ちゃんの孫ですもの。 昔から道場で格闘技をやっていますからね」
「おぉ! オレもここに通えばエキスパートクラスまで行けますか?」
「うーん。 たぶん、行けると思うよ……? そこのクラスになっていくと異能の熟練度によって勝負が変わることが多いかな? 私はたまたま扱いやすい異能だから、練度を高めやすかったからね」
「質問なのですけど、エキスパートクラスでも勝ちやすい異能系統って分かりますか?」
「うーん、難しい質問だね。 相手次第だからどれが勝ちやすいとか分からないね。 私はどの系統でも当たりたくないっていう気持ちで戦ってるんだけどね。 そのクラス以上だと異能を極めた者しかいないからね、結局は異能力者次第だから系統は関係ないね」
「ということは、アタシもチャンスがあるみたいな!」
「そうだね、縁。 一緒に上を目指そう!」
「だね。 アタシも鍛えていくよ!」
「ふふ。 二人共すごいやる気。 ゆりちゃんに置いていかれないように私も頑張るね」
そこから三人は、基本の動き、受け身など実さんの見よう見まねでやっていく。
実から優しく指導してもらう。
まさしく、母性を感じるくらい魅力的な女性だ。
「さて、今日は異能ありの組手を多めに行いますか。 実と天音、今日は三人に異闘の戦いを見せてやりな」
防御の稽古が終わると、お婆さんが指示をして物置からプラネタリウムのような水晶玉に機械が付いている装置を持ってきた。
「これは疑似異能で結界を模倣した道具さ。 これは異闘でも使われている、発動すればこの部屋一体が戦場となり、壁、床に攻撃しても装置を切れば元通りになるのさ 」
疑似異能とは、異能力を科学力で再現した道具の名称だ。
疑似異能は結界だけではなく、様々なところで使われているが、最も使われているのは兵器であろう。
組手をするもの以外は、道場に収納してあるガラスの壁を取り出し、その内側に移動する。
そして、お婆さんが疑似異能『結界』を起動すると、部屋中に薄水色の膜が貼られる。
いわゆるシールドだ。
「これからエキスパートクラス同士の試合を始める! 試合時間は3分。 審判に礼、お互いに礼、では始め!」
二人は胸にメーターのバッチを付けて準備が完了する。
お婆さんと組手相手に礼を行ってから、試合を始めた。
試合を開始した途端、さきほどまで優しかった実の表情が一瞬で真剣な眼差しで相手を睨みつけていた。
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あとがき
投稿してから日が浅いのに、多くの評価、PVとフォローをもらい凄く嬉しいです。
特に感想コメントをいただき、通知が着た瞬間喜びすぎて部屋で踊ってましたw
コメントを下されば返信しますので、待ってます(*'▽')
女の子同士のイチャイチャ描写が少ないので、増やしていきたい……。
主人公であるオレっ娘が可愛く反応するシーンとか書いてみたいな、なんて。
作者のモチベの向上のため、「♡」、「★」と応援コメントを気軽にお願いしますm(_ _)m
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