第5話  天恵道場

あれから一か月。

異能力者として向上するため、鍛え始めた。

毎朝、5時半から軽くランニング。

お風呂に入る前は筋トレを行う。

そして、毎日異能を発動している。


それで分かったことがある。

触手が勝手に襲ったのは、オート操縦みたいらしく。

範囲内にいる女性を狙う設定で、それに気づくまで最初はよく触手に襲われていた。

もう一つは触手の強度が素材に依存する。

その場合、常に金属の棒を携帯していると便利だ。


毎日いじってたら触手の操作に慣れたため、金属を媒体に触手を伸ばして電柱や建物に絡み付けて縮小すれば移動も楽だ。

そんな感じで独学でやっても、このままだと進化に時間がかかりそうだ。

何かいい修行方法探さないと。


日課のランニングを終わり、家に着きポストを開けると一枚のチラシが入ってた。


「新入異能者歓迎、天恵道場? ……道場?」


オレはチラシ持ったまま、リビングに向かうと母が家事をしていた。


「あら、お帰り優里。 汗かいたのなら、さっさとシャワー浴びてきなさい」

「はーい。 あっ、その前にお母さんこれポストに入ってたよ」


オレはお母さんにチラシを渡した後、さっさとタオルを用意して洗面台へ向かう。

チラシを受け取ると、何かを察するようにオレの様子見ていた。


「優里、ちょっと待って」

「ん、何お母さん?」

「優里って、異能を覚えてからずっと練習してるんでしょ?」

「うん」

「だったら、このチラシの道場に行ってみたら? 本気で目指すなら月謝代を払うわよ」

「えっ、いいの……?」

「娘の目指したい夢を応援するのは、親の役目よ」

「――っ!? お母さん、ありがとう!」

「優里って、昔から異能を欲しがってたものね。 毎回、異闘の番組見てたの知ってるわよ。 ほら、さっさとシャワー浴びてきなさい」


もし、オレが想定しているような道場だったら通ってみたいと思ったが、お母さんから許しを得たので堂々と決断できる。


「今日の放課後に涼香を誘って、道場の見学に行こうかな」


シャワーを浴びながら、どういう道場なのか妄想する。










5限目の授業が終わり、放課後の時間が訪れる。

帰る支度するため鞄を取り出して筆記用具とノートを仕舞っていると、後ろから抱き着かれた。


「ゆーりーちゃん、一緒に帰ろー!」

「いいけど、寄り道するけどいい?」

「何、デートのお誘い?」

「うん、そうだよ」

「おぉ、ゆりちゃんがデレた!」

「前からデレてるよ。 まったく、抱き着いてるから帰り支度ができないよ」

「むー、しょうがないなぁ」


丁度いい高さに涼香の頭があったので、軽く撫でると涼香はイヤイヤと少し離れる。


「アタシも声掛けようと思ったけど、二人の仲が睦まじくてタイミングがないよ」

「縁も一緒にデートする?」

「したいけど、すずかっちに威嚇されてるから、また今度誘うね」


縁も大事な友達だ、一緒に道場へ誘ってみようかな。


「じゃ、じゃあ、涼香のことなら埋め合わせするから一緒にデートしよ?」

「今日のゆりっちは強引だね」

「時には強引になるのだよ」


そうして、三人で行くことになった。

涼香は小言を言ってので、今度の休みの日にデートすることになったけど。


「それでどこにデート向かうの?」

「う~ん。 着いてからのお楽しみ」


下校中、三人で並びながら歩き、片手でスマホを操作してチラシにあった道場を検索して道を調べる。

少し住宅街の外に向かうと、二階建ての大きな道場があった。


「着いたよ」

「何ここ?」

「道場だよ。 異能力を鍛えるための」

「まさかゆりっち、道場に通うの?」

「うん、私の目標は異闘で最強を目指すんだからね」

「なら、私もゆりちゃんと一緒に目指そうかな。 折角、現象系の異能の目覚めたしね」

「涼香がライバルになると手強そうだね」

「二人は夢があっていいな。 まだ夢を持ってないし、アタシも一緒に異闘にデビューしようかな。 これも何かの縁かもしれないし」

「縁……。 うん、三人で異闘にカチコミするか!」


オレ達は道場の前に向かうと、一人のお婆さんが道場の扉を開けようとしていた。


「あの、オレ達この道場に見学しに来たのですが、これから稽古なのでしょうか?」


おそらく関係者であろうお婆さんに声を掛けてみる。


「ん? そうじゃよ。 これから稽古が始まるから掃除のために来たのじゃ。 三人とも少し待ってな。 見学用紙とか用意するからの」


オレ達はお婆さんの案内で道場へ通してもらうことができた。


「ここで体術と異能力を向上する稽古をやるのさ」


道場は広く床は畳が敷かれており、奥にはサンドバッグがある。


「さて、天恵道場へようこそ。 私はここで師範している大林 おおばやしめぐみじゃ。 存分に見学するといいさ」


あのお婆さんが自己紹介した瞬間、ここの空気がガラリと変わった。


「なに?一瞬、悪寒がしたよ。 あれ、絶対に只者ではないな」


二人も同感だと首を縦に振っていたので、同じプレッシャーを感じたのであろう。

しかし、感じていながらも動揺することはなかった。


お婆さんは彼女達から離れ、道場の換気のため一人で窓を開けながら呟く。


「ほほっ、活きがいいお嬢ちゃん達だこと」


お婆さんは遊び気分で、圧を放ち三人の反応を見て楽しむ。

この行為は見学者が来て自分が対応する場合に行う。

それは道場に通うにいたっての素質を見る理由ではあるが、ほぼ現役を引退してからのからかいである。


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